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37.ログアウト

1942年5月28日4:30 大日本帝国 東京都 陸軍大臣官邸 


内閣総理大臣を退任した3月31日の翌日には、楓と二人で皇居を出て、陸軍大臣官邸への引っ越しが完了していた。寝室には楓と一緒に住む前の日買ったセミダブルのベッドが2つ並んでいたが、楓は自分の方のベッドを一度も使わずに、毎日俺のベッドで一緒に寝ていた。

仕事で帰りが遅くなったときは先に寝ていて良いと言っているのだが、どんなに遅くなっても必ず起きて待っていてくれるので申し訳ない気持ちになる。だんだん帰る時間が早くなっているのは楓の作戦なのだろうか。

いつもは朝7時に起きて8時30分に家を出るので、朝4時半と言えばまだ眠っていたい時間なのたが、システムのアナウンスに起こされた。


『ogachan_dayoがログアウトしました』


『ogachan_dayoがチームを抜けました』


『ikill_seiji_ikillが新たにリーダーになりました』


システムアナウンス?朝からなんだ?え?ogachan_dayoって小川先輩のIDだよな。小川先輩ログアウトって?ログアウトってなに?そもそもログアウトできるの?寝起きでいきなりの意味不明なアナウンスに理解が追い付かない。隣では楓が気持ちよさそうに寝ているので、楓にはシステムのアナウンスが流れていないのだろう。これは嫌な予感しかしない。一人では不安だから、とりあえず楓を起こすか。


「楓、起きて」


楓の肩をそっと揺らすと、楓はゆっくりと目を開けた。


「ん~?今何時?寝坊しちゃった?」


「いや、寝坊してないよ。まだ4時半だから」


「え~、まだ眠たいよ~。キスしてくれないと起きれない~」


もう完全に起きているだろうよ。しかし、このままだと話が進まないので、そっと楓の唇にキスをすると、楓は満足そうな笑顔になり、俺の胸に顔を埋めてきた。俺から楓を引き離すと楓が不貞腐れて大変なことになるので、このままの体勢で話始める。


「さっきシステムから小川先輩がログアウトして、チームも抜けて、俺がチームのリーダになったってアナウンスが流れたんだけどさ…。これ、もしかして、小川先輩死んだかな?」


楓はそれを聞いた瞬間、ゆっくり上半身だけを起こして俺の顔を覗き込んだ。


「えっ!死んだかどうかはまだ分からないけど、それはただ事じゃないね。遥は?遥も同じチームなんでしょ?」


「遥ちゃんのことは特に何も言ってなかったよ」


「そう・・・。とりあえずは良かったかな。誠司起きよう。たぶん遥からボイスチャットくるはずだから、私もチームに追加してくれない?誠司がリーダーになったんでしょ?」


「うん、ちょっと待って」


『リーダーがi_am_a_Shotgunをグループに招待しました』


「え、今更なんだけど、楓のIDってアイ・アム・ア・ショットガンだったの?俺も同じショットガン使いなのに、いつもこのIDの人にショットガンでボコボコにされてたんだけど」


「そうだよ。楓はショットガンしか使わないからね。でも、その話は後でゆっくりしよ?今はすぐに制服に着替えて出かける準備をして」


「わかった」


ベッドから起き上がると歯磨きと洗面、寝癖を整えてから制服に着替えて、楓が用意してくれた梅のおにぎりと、昨日の夕飯で残った豚汁を食べているとボイスチャットが繋がった。


『遥です。みなさん、早朝にごめんなさい』


悠斗も起きていたのだろうか、寝起きではなく、はっきりした声で返事をする。


『大丈夫。そっちは今夜中の12時くらいなか?遥ちゃん、さっきログアウトしたってアナウンスがあったけど、小川先輩は?』


遥ちゃんは少しの沈黙のあとに話始めた。


『わかりません。今日は私だけ結婚式の件で教会と打ち合わせがあるから、サンクトペテルブルクに来ているんですけどぉ、俊輔はモスクワにいるんですぅ。そして、さっき陸軍の方が私のホテルに来て、モスクワにナチスの新型爆弾が落とされて、モスクワと連絡が取れなくなったと報告があったのですぅ』  


そう言って遥ちゃんは声を上げて泣き始めた。


『遥、今は泣いてる場合じゃないよ。もし小川さんが行方不明なら、今すぐ帰ってこないと遥が粛清されるかもしれないよ。まずは今すぐ準備してサンクトペテルブルクの日本領事館に行って。大槻さん、海軍の輸送機をサンクトペテルブルクに迎えに行かせることはできますか?』


『あ、楓ちゃんがチームに入ったんやね。出さへんことはないけど、海軍機だとソ連空軍の手続きが必要だけから、この状況ならしばらく飛行許可が出ぇへんと思うねん。せやけど、ソ連政府との協定で政府専用機は事前報告だけしておけば、飛行許可がいれへんことになっとるから、政府専用機ならすぐ飛ばせるで』


『遥、わかった?大槻さんが迎えの飛行機出してくれるから、急いで領事館に行って』


『楓…。ありがとう。でも、もし俊輔が殺されたなら、私は俊輔の仇が取りたい!だから日本には戻らない!』


『遥、冷静になってよ。日本人で女の遥がソ連に残ったって何もできないよ。まずはこっちに戻ってきて皆でどうするか考えよう?ね?』


少しの沈黙が続く。楓と遥ちゃんのやり取りを俺と悠斗と翔は黙って見守っていた。

    

『ごめん…。まだ試したことはないけど、たぶん私だってあの力使えるし、もう俊輔と入籍してソ連国民になってるから、ロシア人にあの力使えるようになってると思うんだよね。だから、これから私がソ連のトップになって俊輔の仇を取る!』


『いくらあの力使えたって、撃たれたら死ぬんだよ?モスクワと連絡が取れなくなって混乱してる中で、どうやってソ連のトップになるの?』


『でも、俊輔の仇を取りたいの!楓だって誠司さんが殺されたら絶対に許さないでしょ!?』


『その前に、遥は誠司のこと名前で呼ばないで。友達でもそれはダメだから』


『うん。ごめん』


『じゃあ、もう楓からは何も言わない。楓も誠司が殺されたら、殺したやつらを家族も含めて皆殺しにしてから自分も死ぬと思うし、遥がそうしたいと言うならもう止めない』


さらっと皆聞き流してるけど、楓も結構ヤバいこと言ってるんだよな。


『分かってくれて、ありがとう!私必ず俊輔さんの仇取るよ!』


『えっ、二人ともちょっと待ってよ』


悠斗が慌てて女の子同士の恐ろしい会話に割って入る。


『春香ちゃん、仇を取るって言ったって、モスクワがそんな状態でどうやるの?やっぱり1回帰ってきてこっちで対応考えない?』


『悠斗さん、ごめんなさい。1日だけもらえませんか?1日で無理なら日本に帰ります。だからお願いします!このまま帰ったら絶対後悔すると思うんです。お願いします!』


『誠司と翔はどう思う?』

    

『俺はまずモスクワの日本大使館や法人の安否についても確認しないといけないから、とりあえず1日なら良いと思うけど』


『俺もそれで良いよ。政府専用機の手配だけはしておくね』


『皆さんありがとうございます!明日、また連絡します!』


ボイスチャットでの会話が終わってから、すぐに閣僚を招集して緊急閣僚会議を開くことになった。ソ連は今の日本にとって最も人的、物的交流がある国なので、ソ連の首都であるモスクワには多くの日本企業や日本人が駐在している。もし、原子爆弾がモスクワに投下されていたとすれば、かなりの被害が発生していることだろう。そして、独ソ不可侵条約に反し、一方的にソ連にドイツが原子爆弾を投下したとすれば、ソ連と日ソ安全保障条約を締結している日本は、不本意ではあるが、ドイツに対して日ソ連合軍で軍事的な制裁をしなければいけない。何れにしても日本単独での制裁はできないので、ソ連と協議する必要があるのだが、モスクワが壊滅したとなれば、ほとんどのソビエト連邦共産党の幹部はモスクワにいたはずなので、制裁の内容を決める協議の開始まで時間を要しそうだ。それまでに日本としてはどのような立場を取るか決めておかなければいけないので、今日の閣僚の議題はどの程度の介入をして、ゴールをどこにするかを決めるのが優先議題となるだろう。

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