表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/55

34.ドイツ空軍出撃

1942年5月27日16:30(ベルリン時間) ドイツ第三帝国 旧ポルトガル シントラ航空基地


シントラ航空基地はポルトガル空軍の航空学校があった空軍基地だった。ポルトガルの降伏後にドイツ空軍により接収され、現在はドイツ空軍が滑走路を拡張して使用している。

滑走路には2機のドイツの最新鋭爆撃機Ho 233Xが駐機しており、整備士が夜間照明のもと慌ただしく出撃準備をしている。その滑走路の隅のハンガーの前には藤井を始めとするドイツ防空軍幹部が、これから爆撃機に搭乗するであろうパイロット達と向かい合って整列していた。

藤井が横並びの幹部の列から1歩前に出て、ナチス式の敬礼をすると、パイロットを始め空軍幹部も全員が敬礼を返した。

    

「諸君らは精強な我がドイツ第三帝国防空軍の中でも、純血のアーリア人による精鋭中の精鋭だ!先程ブリーフィングでも説明があったとおり、本作戦は我がドイツ第三帝国市民の生命、財産の安全を脅かし続けているアメリカに対して再起不能な打撃を与えるものである。此度の戦争で最も偉大な作戦である本作戦は、ドイツの、いや世界の歴史に今日の日と共に諸君らの栄光が刻まれることであろう!アーリア人としての誇りを持って任務を遂行し、世界にアーリア人の偉大さを知らしめるのだ!死して英雄になるのは認めん!必ず生きて帰還しろ!以上!ジークハイル!」


藤井が再びナチス式敬礼をすると、整列している一同も敬礼を返す。


「ジークハイル!」


駆け足で爆撃機に乗り込んでいくパイロット達の姿を見送る藤井は目に涙を浮かべていた。溢れ出しそうになる涙を我慢するのに必死でこらえなが敬礼を続ける。今回の作戦では往路はステルス性のある爆撃機なので、この頃のアメリカのレーダーでは容易に探知することはできないことと、夜間のため敵に目視で発見される可能性も低い。しかし、任務を終えた彼らの爆撃機をアメリカ空軍は迎撃機や偵察機を飛ばせるだけ飛ばして、血眼になって探し出すだろう。燃料も最短距離での往復分しか積載できないため、敵の哨戒網を迂回することもできない。彼らが任務を終えて生還する確率は限りなくゼロに近いのだ。本来であれば多数の戦闘機の護衛を付けて送り出したいのだが、ステルス性能を有した戦闘機は開発中ではあるが、ドイツ防空軍にはまだ配備されていない。彼らはきっとここには戻ってこられない。彼らもそのことを十分に理解してこの任務に挑んでいるが、死地に向う彼らの士気は高く、全搭乗員がやる気に満ちた表情をしている。藤井は飛び立つ爆撃機が見えなくなるまで敬礼を続けながら、勇敢で気高き、そして尊い彼らに報いるべく、必ずこの戦争に勝利することを固く心に誓ったのだった。

    

そして、彼らと時を同じくして揺動作戦を担うメッサーシュミットMe 264を中心とする爆撃機と、爆撃機を護衛するユンカース Ju88の大編隊はスペインの空軍基地から他の空軍幹部達に見送られて出撃した。なお、メッサーシュミットMe 264とユンカース Ju88は航続距離が不足しているため、大型の増加燃料タンクを装備し、なんとかギリギリで帰還できる計算になっている。ドイツ空軍の戦力で現在アメリカまで航続距離が届く全ての部隊を出撃させたため、空一面を航空機が覆っている。人類史上最多の航空機による大編隊はまさに圧巻というべき様相を呈している。味方が見たらあまりの壮観に感動の涙を流し、敵が見たら自らの死を悟り、恐怖に慄くであろう。ただ、今回の揺動作戦では戦果は全く期待していない。むしろ爆撃機は機銃も降ろして、爆弾の1つも搭載していないのだ。Ho233X爆撃機が原爆投下が完了したとの報告を受けた段階で、一戦もせずにすぐに反転し帰投する予定となっており、速度と航続距離を重視する為、乗員も最少人数しか乗せておらず、護衛戦闘機の対空戦用装備以外は全て外してある。ここまで大規模な編隊が囮だとは、接触するまでアメリカ空軍も気付かないだろう。また、囮といっても十分過ぎる数の護衛戦闘機が随伴しており、アメリカ空軍の迎撃機を駆逐するには十分な戦力である。





1942年5月27日19:30(ベルリン時間) ドイツ第三帝国 ランツベルク・アム・レヒ航空基地


最高幹部には公表されている2機のHo233X爆撃機の出撃から遅れること3時間。ランツベルク・アム・レヒ航空基地では数名の整備士と管制官等の最少人数の人員とHo233X爆撃機の乗員が既に出撃準備のできた爆撃機の前に整列して集まっていた。そして、彼らの前にはアイザックとクラーラ・ヒムラー親衛隊全国指導者が立っていた。

    

「ほかの作戦部隊は盛大な見送りがあるのに、君たちは僕らだけでごめんね。でも、僕は君たちの作戦が今回一番大事だと思ってるからここに来ているのは分かってね。この任務はここにいる君たちと僕、隣のクラーラしか知らないから、どうしても少人数になっちゃったんだ。本当に辛い任務になると思うんだけど、よろしく頼むよ。あと、戻ってきたらベルヒテスガーデンの党幹部専用のホテルで1か月休暇が待ってるから楽しみにしてていいよ。じゃあ、頑張ってね!」


アイザックの話が終わると、パイロットや整備士達が一斉に「ハイル・マイン・フューラー!」と叫びながらドイツ式敬礼をした。

アイザックが敬礼を返したあと、彼らはHo233X爆撃機に乗り込み飛び立っていった。


アイザックとクラーラは満面の笑みで、彼らの姿を見送った。


「クラーラ、本当に大丈夫なんだよね?僕やっぱり不安なんだけど」


「大丈夫よ。アイザックは私の言うとおりにしていれば全部うまく行くんだから、気にしないで良いの。さて、これから超忙しくなるわよ」


「え~っ、今より忙しくなるの?また二人きりになれないよぉ」


「大丈夫、今日からはいくらでも二人きりになれるから」


「え?どうして?」


「今は秘密よ。だから総統閣下、さっさとベルリンに戻るわよ」


そう笑顔で言って、クラーラはアイザックの手を引いて、待機していた総統専用機に乗り込むのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ