33.新年度の大改革
1942年4月1日10:00 大日本帝国 東京都 総理官邸
なんとか3月中に翔への総理大臣業務の引継ぎを終わらせ、新年度を迎えることができた。新内閣発足と同時に、今年度から新たな制度や法令が施行された。
今回の大改正で1番大きく変わったのは大日本帝国憲法の改正を伴う議会制度の変更だ。衆議院議員は既に2年前に選挙権と被選挙権を23歳に引き下げる等の改正を行ってきたが、今回は選挙権を18歳に引き下げたのと、議員定数を変動制にして、衆議院解散の年の前年度の各都道府県の人口を基準に各都道府県から固定で1枠と、人口30万人毎に1枠加算されることになった。元の時代では選挙の度に一票の格差や議員定数の削減等が話題になっていたが、今回の制度になれば一票の格差という点についてはある程度是正される見込であるものの、人口が少ない地域の民意が反映しにくい等のデメリットもある。しかし、現在は農村人口の総数が都市部の人口を上回っているため、しばらくは問題は生じないはずだ。今のうちに何かしら農村部から都市部への人口の流出を防ぐための政策を打ち出さなければいけない。これについては、元の世界での知識も役に立たず総務省のハイスペック官僚達に丸投げすることにした。もっとも、ただ丸投げしても難しいだろうから、総務省の地方行政改革を後押しするために、市区町村県議会制度の廃止を強行した。次回の地方統一選挙は行わず、市区町村長と県知事は総務省の中央官僚を派遣することになっている。地元の中小企業の社長の息子が能力もないのに政治家気取りで真面目に働いている地方公務員に尊大な態度を取ることもなくなるだろう。
さらに、貴族院の廃止が今回行う強行改革の目玉の1つだ。これまでの帝国議会は公選の衆議院と、非公選の貴族院からなる二院制で構成していたが、今回は貴族院を廃止して一院制に変更したのである。貴族院は非公選の皇族議員・華族議員・勅任議員によって構成され、多くの議員は終身任期という、大日本帝国における特権階級と言えるような制度であった。今後は世論の非難の対象になることが予想されるので早いうちに手を打った形になった。
なお、元の世界では貴族院を参議院に変更して、二院制を採用していたが、参議院には衆議院が暴走しないように監視する役目等のメリットはあるものの、改革が遅くなる、参議院の維持コストがかかるなど、現時点ではデメリットの方が上回っているから二院制の採用は見送った。その代わりに立法府が暴走しないためのチェック機能として、1年に1度国民投票による国会議員の罷免決議を取ることにした。
また、同時に複数政党制も廃止し、法が認めるのは保守党と共和党の二大政党のみとし、帝国議会議員は二大政党の何れかの政党に所属するか、無所属とする旨大日本帝国憲法に明記した。ちなみに今回廃止となった貴族院議員は、裕福な議員しかいなかったため、今後の生活の保障等は一切行う予定はない。また、議会制度の変更に伴い、衆議院選挙法を撤廃し、新たに帝国議会選挙法を制定した。元の時代の公職選挙法とは違って、中選挙区制を採用した。さらに元の世界の制度と大きく違うところは選挙活動の規制を強化した点だ。まずは、選挙期間外の候補者や現職議員、政党のポスター掲示の禁止。これは元の時代であちこちに政治家のポスターが貼っており、街の景観を害していたため規制した。例えば京都等の歴史的建造物が建ち並ぶ街並みに『衆議院議員 園田誠司』と顔をデカデカと写した目立つポスターが貼ってあるのを見ると、わざわざ遠くから観光に来た観光客も残念な気持ちになるだろう。そして、選挙期間中の有無を問わず、選挙カーでの街宣を禁止した。これは、言うまでもなく騒音も酷いし、車で移動しながら名前を連呼しているだけで、この候補者はどんなことをしたいのか等の重要な情報はあまり聞き取れない。なので、選挙活動は選挙管理委員会が定めた枠でテレビとラジオによる政見放送と、新聞にプロフィールと公約の掲載、選挙管理委員会が指定した日時での選挙演説のみとし、それ以外の選挙活動をした場合には罰金1,000円から5,000円の罰則規定を設けた。今回の規制は元々知名度の高い現職議員に有利な制度だが、そもそも知名度で投票するような国民の民度であれば、誰に投票したところで大差はない。選挙に勝つのが上手なことと、政治家としての能力はイコールではない。演説や実績以外にも投票者の判断基準があると、国民もより候補者を吟味できると考え、候補者全員に政治・経済・法律に関する適正試験と健康診断受けてもらい、結果をプロフィールや公約等とともに、新聞に掲載することを義務付けた。これまでの選挙制度では人気取りや知名度、学歴や経歴がものをいう選挙になる傾向があった。そこで、これからは少しでも多くの判断材料を国民に与えることが我々民主主義国家の義務であるとメディアを通じて宣伝していくつもりだ。かなりの人に恨まれるし、賛否両論あるものわかるが、日本の政治家に世界と戦っていける競争力を養うため、今回の改正に踏み切った。
国民には選挙権があるのと同時に、自分達の代表である政治家を選ぶことは、国民の責任でもあるのだ。俺の個人的な考えとしては、投票を義務とし、しない場合は何らかのペナルティを与え、政治家が不祥事を起こした場合はその政治家だけではなく、その選挙区の住民税率を上げるなど、投票者にも何かしらのペナルティを与えるようにしたら、もっと真剣に誰に投票するか考えるようになると思う。とはいえ、流石にこれは国民の支持を得るのは難しく、現実的ではないので閣議でも提案していない。なお、新制度での最初の選挙は今年の夏を予定しているが、ご老人達は適性検査と健康診断の結果を公表したくないものばかりだろうから、多くのご老人は引退して、議会にも新しい風が吹くようになるであろう。
ただ、選挙制度を変えたところで、現状ではほとんどの重要事項については閣議で決定しているため、議会はあまり機能していない。だから、世界情勢が落ち着いて国内の改革も一巡し終わったら、徐々に権限を議会に移譲していく予定だ。
これは今までの改革に比べると些細な事だが、地方議会の撤廃合わせて、東京市を東京都と改め、23区外の東京都の多摩地区ついては、南北に分けて神奈川県と埼玉県に編入した。




