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21.ソビエト連邦共産党中央委員会書記長の重大発表

1942年1月16日18:00 大日本帝国 東京市 総理官邸


 誠司はお昼からずっと続いている関係省庁の閣僚や官僚らとの報告会議を小休止とし、小会議室で一人になった。そこで、ボイスチャットを使って皇居のにいる悠斗、台湾にいる翔、そしてソ連の小川先輩と打ち合わせをすることにした。


最初に悠斗が話始めた。


『小川先輩、お疲れ様です』


『おう、お疲れ。しかし面倒なことになったな。相変わらず藤井とアイザックとは連絡取れないんだろ?』


『はい。官民ともに以前と変わらずに国交は続いてますけど、ボイスチャットには応じてくれませんね。誠司が外務省を通じて首脳会談を申し込んだりもしましたけど、戦時中だから難しいとやんわり断られました』


『う~ん…、あいつら一体どういうつもりなんだろうな?』


『まったく見当もつきませんね。僕らと敵対している訳でもないし、敵対することに彼らにとって全くメリットがありません』


ここで翔が会話に参加する。


『せやけど、藤井先輩はともかくとしぃ、アイザックが俺らと連絡せぇへんのは絶対おかしいねん。元の世界にいたときだってほとんど毎日話しとったから』

    

確かに翔の言うとおりほとんど毎日一緒にゲームをしていたし、この時代に来てからも連絡が取れなくなる前は個人チャットでも「ドイツのソーセージ本当に美味かった!」とか、「日本の寿司が食べたい」とか、「元の時代で連載中だったマンガの続きが読みたい」とか、本当にどうでも良いことを頻繁に送ってきていた。


『どう考えても不可解だな。こっちの方が距離的に近いから、エヌカーゲーベー(NKGB)のフセヴァ君にアイザックと藤井の調査させるわ。できそうならもう身柄確保しちゃっていいか?』


NKGB(国家保安人民委員部)は後のKGB(ソ連国家保安委員会)の母体となったソ連の諜報機関であり、小川先輩が現在最も信頼を置いているフセヴァことフセヴォロド・メルクーロフ氏が担当している。なお、彼は元の世界では超エリートで共産党トップクラスの能力も持っていたが、所属していた派閥が政治闘争で破れたため国家反逆罪で銃殺刑となった男である。


『今はあいつらもドイツの最高権力者なんですから、身柄の確保は流石にダメですよ』


もちろん冗談だとは信じたいが、小川先輩なら本当にやりかねないので、念の為否定しておいた。


『冗談だよ。今回は様子を探らせるだけにするから。でもよ、最近はソ連に対してもスパイを送り込んできやがって、フセヴァ君達もかなりピリピリしてるんだよな。日本のクーデター未遂事件もドイツが関与してるんだろ?今回のは偶発的なものだとは思うけど、何かしら意思表示はしないと、世間からは舐められてると思われるんだよな。うちは特に政治闘争が激しいから尚更なんだけどよ。とりあえず、ソ連と日本で共同で非難声明出すってことでいいか?』

    

アイザック達と敵対できないことを考えると非難声明だけで我慢するのが無難なとこだろうな。しかし、小川先輩が言っていた身柄の確保の件は、今の口振りからすると半分は冗談ではないだろう。アイザック達がドイツからいなくなって、二人の安全さえ確保できればソ連からドイツに侵攻することが可能になるし、いくらドイツが技術力で他国を圧倒してるからと言ってもアメリカとソ連相手に戦って勝てる確率は万に一つもない。アメリカが参戦した現在となっては、ソ連のトップである小川先輩にとってアイザック達の存在が邪魔になっているのだろう。本物のスターリンはドイツにレーダーの技術提供をするなど、ドイツを支援してでもアメリカと戦わせて、互いに疲弊したところで、漁夫の利を狙おうとしていたらしい。同じ立場となった小川先輩も同じことを考えてもおかしくはないだろう。


『はい。僕らはそれで問題ありません。では、こちらの外務省からソ連の外務省に共同声明案について提案させますので、よろしくお願いします』


悠斗も小川先輩の提案が妥当だと思ったようで、すぐに賛同をした。


『うん。じゃあ、ドイツの話は取り敢えず終わったということで、今日の本題に移る!』


本題に移るって、今のが本題じゃなかったのか。現時点で把握している情報で、さっきの話より重要度の高い議題が思い当たらない。


『おまえらに大事な話があります!これは本当にまだ公表してない国家最重要機密なんだけど、お前たちには先に言っておく必要があると思ってな…』


『えっ、そんなの聞いて良いんですか?』


『あぁ、お前達だから特別だ。俺、結婚します!』


『・・・。』『・・・。』『はっ?』


悠斗と翔は黙ってしまったなか、思わず俺一人で声を出してしまった。


『だから、結婚します!!』


『どこが国家機密なんですか・・・』


『まぁ、そう言うなよ。そして、なんと!彼女は日本人です!』


『小川先輩だっても元々日本人やから何の驚きもないですわ。で、相手はどないな人でっか?』


ようやく翔が再起動した。悠斗はまだフリーズしているようだが・・・。

    

『それがさ、俺は休日に自分で車の運転しながらモスクワ市内をドライブしてたんだけど、国立博物館の前を通りかかったときに彼女が目に入って、雰囲気から日本人だなってわかったんだよな。で、よく見たらすごい俺好みで可愛い子だったのと、久し振りにお前ら以外の日本人とも話したかったこともあって、車を止めて日本語で話しかけたのよ。で、モスクワの案内を申し出たらさ、知らない人の車には乗れないって言うから、俺も車から降りて歩いて案内することになって、話してるうちに意気投合しちゃってさ。一日一緒に観光してたのになかなか言う機会がなかったから、隠してたけでじゃないんだけど、別れ際に連邦共産党書記長やってるって話したら、なんか凄く怒られてさ、ソ連の最高権力者が自分なんかのために時間を使わないでもっと国民のために働きなさい!って。それ言われた瞬間、もうこの人しかいないって思って、赤の広場で跪いて結婚を申し込んだら、今日会ったばっかりだからって戸惑ってたん

だけど、必死にお願いしたらOKしてくれた。っていうドラマチックなエピソードがあるんだよ』


元の世界では彼女なんて一度もできたことがなくて、女友達も一人もいなかった小川先輩が、1日デートして優しくされたから、とち狂って結婚を申し込んだという話でしかなかった。相手もソ連の独裁者が衆目の前でプロポーズしてきて、やむを得ず承諾したと…。


『おめでとうございます。そうですねぇ…、相手が日本人ってことなら、結婚式には僕が参加しますよ』


悠斗もようやく再起動して結婚式への参加を申し出た。


『おぉ、天皇が自ら来てくれるの?悪いねぇ。持つべきものは優しい後輩だわ』


悠斗が行くとなると警護が心配だが、小川先輩もその辺は万全な態勢で迎えてくれるだろうし、小川先輩の結婚式なら後輩としては仕方ないかな。


『ところで、婚約者の名前は?俺からも二人に何かプレゼント送りまっせ』


プレゼントか、翔にしては珍しく気が利くな。俺も何かしら送らないといけないけど、.ソビエト連邦共産党中央委員会書記長の結婚祝いに贈るものなんて想像ができない。


『おう、翔も悪いな。あんまり気使わなくていいぞ。彼女の名前は遥。近衛遥だよ』


近衛遥…。どっかで聞いたことが…。近衛…近衛…、あっ!!!


『近衛って苗字にすごく聞き覚えがあるんですけど、もしかして近衛元総理の三女ではないですかね?』


『そうそう。お父さんが前の総理だったって言ってたから俺もビックリしたよ。あんまりよく知らなかったから部下に調べさせたんだけど、お父さんの近衛元総理は後陽成天皇の家系で日本でも名門中の名門の出だって知ってさ、俺みたいな普通のサラリーマンの家に生まれた庶民が結婚して大丈夫なのかって焦ったよ』


やっぱり俺の予感は当たってしまった。近衛さんよく外国人との結婚を許したな。いや、たしか近衛さんは学生時代から共産主義の研究に熱心だったって聞いたことがあるから、共産主義が服を着て歩いているような小川先輩との結婚にはむしろ喜んでいるかもしれないな。


『やっぱり近衛さんとこの三女の遥さんでしたか。まぁ、俺らとしてはね、日本とソ連の友好の象徴となるような結婚なので大歓迎ですよ。じゃあ、結婚式の日程が決まったらこっちも色々準備をするからすぐ教えてください』


 アイザックと藤井先輩の話で沈んだ空気になっていたところに、小川先輩の結婚話をブチ込んできたおかげで少し気持ちが軽くなった気がする。こういうのは意図してやっているのか?いや、小川先輩に限ってはないな。天然だし。それが小川先輩の魅力でもあるんだが。

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