15.木村三佐の恋バナ
1942年1月2日10:00 大日本帝国 東京市 皇居内園田邸
正月も2日目になったといのに、相変わらず俺と木村三佐はコタツでダラダラしていた。
「なぁ、木村く~ん」
「なんですか、閣下」
「楓さんとお母さんはさ、お母さんの実家にいるのに木村くんはなんで帰らんの?」
「えっ、私は閣下の護衛ですから当たり前じゃないですか!」
「いや、ここ皇居だしさ、近衛師団がいるから護衛とか足りてるよ。たぶん日本で1番安全なとこだよ」
木村三佐は気まずそうに苦笑いをしながらも、ミカンを食べる手は止まらない。
「母の実家は本家なので正月は親戚が集まって、賑やかにやっているのですが、海軍が多い家系なので酒を飲んだら色々と絡んできて面倒なんですよ。陸軍の父と母が結婚するときも、渋々認めはしたものの、どうしてよりによって陸軍なんかと結婚するんだって、祖父からグチグチ言われて大変だったらしいです。なので、冠婚葬祭以外では、ほとんど父も私も母の実家には行かないですね」
俺らがこの世界に来てからは、海軍と陸軍による合同訓練や共同作戦等を頻繁に行うようになって、旧体制よりはだいぶマシにはなったが、陸軍と海軍は伝統的にあまり仲が良いとは言えない。なので、交流が盛んになった今でも対抗意識みたいなものは消えていない。
「なるほどな。それは木村陸将も苦労しただろうな」
「でも、結婚してからはお互い親戚付き合いを最小限にしているので、あまり苦労はなさそうですよ。父と母は毎年、年末年始はお互いにそれぞれの実家に帰るんで、父は父で越谷の実家に帰って今頃のんびりしてると思いますよ」
「まぁ、お互い気まずいなら関わらない方がいいよな。でも、それなら、木村陸将に付いて越谷に行けば良かったんじゃないのか?」
「あっちは顔を出す度に木村家の長男なのに結婚はまだなのかって、無理矢理お見合いさせようとしてくるので、居心地が良くないんですよね」
「そういえば、木村くんはそういう相手いないのか?」
「実はお付き合いしている方はいるんですけど、日本人じゃないので、絶対に結婚を反対されるんですよね」
「えっ、外国人て誰?俺の知ってる人?」
「はい。ソ連大使のお嬢さんです。お付き合いと行っても、たまに二人で食事に行く程度ですが」
「あーっ!!あの子か!ドゥーニャさんだっけ?でも、ソ連大使のお嬢さんなら問題なくね?同盟国だし、ソ連大使なら俺からも話し通せるしさ。そういうことなら、俺が仲人やってやろうか?」
「えっ、いいんですか?閣下が仲人なら誰も文句言わないですね。ちょっと彼女にも話してみます」
「うん。向こうが結婚に乗り気になら、今度3人で食事しよう」
「はい!ありがとうございます!」
俺も本来であればこの正月にでも木村邸に訪問して、楓さんに結婚を申込もうと思っていたが、そもそも木村邸がなくなり、家族がバラバラに正月を過ごしているため、俺の予定が狂ってしまった。
そのあとも暫く二人で酒を飲みながら囲碁をやったりダラダラ過ごしていたが、3日も家にいるとさすがに飽きた。家から出なすぎて頭もボーッとしてきた気がする。
「なぁ、俺たちもずっと家の中に篭っているのも勿体無いからさ、皇居内にある緊急用の地下通路探検でも行かないか?それなら警護の問題もないだろ?」
皇居の地下には脱出用の地下道はずっと気になっていたのだが、探検する暇がなかったので、折角入っても良い立場だというのに、まだ入ったことがなかったのだ。
「なるほど、確かに皇居内なので安全ですね。そして、緊急時に対応できるように休みの日に経路の確認をしておくとは、流石は閣下です!では、宮内庁に連絡だけは入れておきます!」
「あぁ、それなら地下通路の入り口は、宮内庁の庁舎内だからこのまま一緒に行こう」
家の中では二人とも作務衣に半纏というかなりラフな服装で過ごしていた。しかし、悠斗以外の皇族の方もおられるのに、さすがにこのまま皇居内をうろつくわけにもいかない。そこで、これしか私服を持ってない俺は陸軍の新装備の迷彩作業服(自衛隊でいう3型迷彩作業服)に着替えてから外に出た。




