1章 (1)「その後…」
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目を覚ますと、そこは眩しいくらいに白い空間だった。
目が慣れてくると、この空間は病室だということがわかった。
私はただぽかんと天井を眺めていた。心も体も、空っぽだった。
突然ガラッとドアが開き、姉が肩で息をしながら飛び込んできた。
姉は何も言わず私を抱きしめ、「本当に、無事でよかった。」
その瞬間、あの時のことが全て頭に蘇った。
私は怪異や霊に対して、強い恐怖心を抱いた。
「残念なことに、源さんは昨日お亡くなりました」と、先生はクラスのみんなに告げる。
先ほどまで、賑やかだったクラスは、一瞬にして静まり返った。
そして、静まり返った教室に、先生の嗚咽が響く。
一人の生徒の「死んだ……?」という声を皮切りに、クラス全体が騒然とする。
彼女はクラスの中心的人物だった上、私を除き、誰もが死んだ原因がわからない状態。
「なんでさくらちゃんは死んだの!」と泣いてしまう女の子もいれば、「誰かに殺されちゃったんじゃないか!?」と騒ぐ男の子たち。
驚き、泣いたのは私たちクラスメイトだけではない。
担任の先生、給食のおばちゃん、学年主任、掃除のおじさん。そして、他のクラスの人たち。さらに他の学年の人も。
皆、泣いていた。それほどまでに彼女は周りから好かれていたのだ。
でも、一番辛く悲しいのは彼女の親だ。
さくらちゃんの親は、知ってしまった。自分の娘が、酷い状態で死んでいるところを見てしまった。
濁った紫色のヘドロに、彼女の体は埋もれていて、手足はあらぬ方向に曲がり、ヘドロから突き出ている。目玉と髪、歯が全てなくなっていた。ヘドロの中を警察が探したが、最後まで眼球と髪と歯は見つからなかった。
彼女の親はその事実を受け止められず、精神がおかしくなってしまっていた。
――……私は学校の屋上に立っていた。空を見上げると、曇り空。辺りは薄暗い。
「今の私みたいな空模様だなぁ」そう呟くと、さらに辺りが薄暗くなった気がした。
……
私はあの日から自分を責め続けていた。たった一人の親友を失った。
私がもっとコックリさんについて調べ、あんな事が起きてしまうという可能性を理解していれば止められていたかもしれない。
私が最初から止めていればよかった。怪異や呪いを甘く見ていた。
あぁ、自分が許せない。
代わりに自分が呪われていればよかった。
それなら、たった一人の親友を失うことにならなかったのに。
あの場で呪われるべきは自分だったのだ。
これから、どうしよう。
あのことを忘れ、普通に生きる?
そんなことは私が自分を許さない。あの出来事を忘れるなんてできない。したくもない。
原因と思われるあの狐を殺す?
人をああも無惨に呪い殺す怪異に、私が対抗できる可能性はほぼない。
姉に頼み込めば、姉が払うこともできるかもしれない。だけど、姉を巻き込み、もし死なせてしまったら、そんなことはできない。
あぁ、もうわからない。
「あぁ…もう考えたくない。」
いっそ、自分の命を捨ててしまおうか。
屋上の柵の上に立つ。
あの世で彼女に詫びよう。
私はそこから飛ぼうとした。
その時だった。先ほどまでの曇り空が嘘かのように、辺りが明るくなる。
突然の光に、私は眩しくてバランスを崩す。
後ろに倒れ、落ち損ねてしまった。
「いてて、何が起きて……」
すると、私はあることに気づいた。今までは霊感が薄く、霊や怪異がぼやけて見えていたのが、くっきり見えることに気づいた。
なぜ気づいたかというと……
『何してんの! 私よりテストの点数高いくせに!バカなの!?』
目の前に彼女がいた。そう、源さくら。死んでしまったはずの彼女が、目の前に立っていた。
おそらく霊、だって私はあの時たしかに、彼女の死体を見たのだから。
でもそんな事はどうだっていい。私の想いを伝える。
「あの時…止められなくてごめんなさ…」
言葉を1つ1つ、発する度に涙が溢れてくる。
視界が涙でぼやけ、言葉が詰まる。
そんな私の肩に彼女は手を乗せる。
触れられている感覚はない。だけど、なぜか暖かい。
『何言ってるの!私が勝手にやっちゃったのが悪いしさ、まさかあんな事になるなんて誰も分からなかったと思うよ』
「ごめん、私があの場でお祓い出来るくらい、才能があればよかったのにごめん…」謝り続ける私に、彼女は困ったような顔をする。そして、何かを思いついたような表情を浮かべながら口を開く。
『私は怒ってないから!恨んでもない!もう自分を責めなくていいんだよ。でも、お願いがあるかな』
「な、何!なんでもするよ私は」
強くそう答えると、彼女は少し微笑みながら言う。
『死なないでね。死ぬことなんて許さないから!』
そう言って、彼女は消えた。
私は目をこすり、涙を拭う。
空を見ると、先程の曇り空は嘘かのように、眩しいくらいの青空がそこには広がっていた。
1章は2個あります。次に出るのは2章ではなく、1章(2)です。




