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 遂に決戦の時がやってきた。それは私の誕生日だ。手元には私の名前を書いた婚姻届、そして、今から母に突き付ける離婚届が用意されている。


 私は前々から疑問に感じてたことがあったのだ。母親であるあかりとは確かに似ているが、父と私は容姿的に似ている所がまるでない。


 考え方などは似ているかもしれないが、それは普段から関わっていれば似てくるのものーー要は環境要因というやつだ。どうにでもなるというもの。


 最近の小説や動画でも、よく高校生くらいになったら両親から呼ばれて「実は血が繋がっていない」と告げられるストーリーが横行しているが、私も実はそれではないか?と思ったのだ。


 そうでなければ、思春期間近の私が父を恋愛的に好きなんて考えられない。ハッキリ言って異常だ。


 ということで私は父が帰って来るまでに母から、その事実を引き出し、この離婚届にサインさせる。そして、私が結婚出来る年齢になったら婚姻届を提出する。


 そして、私はハッピーエンドを迎えるーーああ、考えただけで最高だ。


 母に解錠してもらい、早速リビングに向かう。せっせと料理を作り、準備をしている母を横目に私はテーブルに離婚届を叩きつけた。


「あかり!大事な話がある!!」


「・・・あら、また例の発作が始まったの?」


 真剣な私とは裏腹に母はタオルで手を拭きながら、「はいはい」と向かいの席に座る。


「それで今回はどんな妄想話を聞かせてくれるのかしら?・・・というか、離婚届なんてどうやって用意したのよ」


 溜め息をつきながら頭を抑える母に「非常に協力的な友人がいるの。内容は言ってないけど」と口角を上げる。


「それは良かったわ。ファザコン過ぎて母親と争ってるなんて、そんな恥ずかしい話広まったらこまるもの。それで?雛乃、話を聞かせてみなさい?」


 呆れ返った母を前に私は「余裕でいられるのも今の内だ。精々高みの見物を決めるが良い」と腕を組む。


「私は思ったのだ。思春期を前にした娘が父親に恋愛感情を抱くなんて異常だ。普通はDNA的に体臭をきつく感じたり、疎ましく感じる等の問題が起きる。これは近親で起こる異常を回避するべく天がもたらしたシステムのハズ・・・何故、それが私には起きないのかと」


「・・・異常って認識はあったのね。そこには安心しました。それで?」


「それで私は自分の容姿を鏡で見て違和感を感じた。私は母にはそっくりだが、父に似ている所が見当たらない」


「ーーなるほど。なんとなく言いたいことは解ってきたけど言ってみなさい」


「察したならば話は早い。私はこう結論付けた。似てないのは血が繋がっていないから・・・要するに私はあかりの連れ子だったのではないかと!!」


 ビシッと指を突き付けながら、告げると母は深々と溜め息を吐きながら頭を押さえた。


「そうだとすれば説明がつく。私が父に恋心を抱くことがおかしいのではない!!私と父が家族であるという前提が間違っていたのだ!!そして、その原因はあかりにーー「これどうぞ」


 熱弁から自分の世界に入ってた私の前に一枚の書類が置かれた。明らかに何らかの研究機関から送られてきたそれにはデカデカとした文字でこう書かれていた。




『DNA鑑定結果』





「・・・なん・・・だと・・・?」


「あんたがいつも変なことばかり言うから、もしもの為に取っておいたのよ。"恋咲 康太30%""恋咲 あかり70%"。私の方が濃いけど間違いなく親子だから。馬鹿なこと言ってないで宿題でもやってなさい」


 愕然とする私を前に、料理作るの忙しいんだから、とキッチンに向かう。


「あ、そうそう。あんたお父さんと似てるところが無いって言ってたから、教えてあげるけど」


 トントントンと小気味良く包丁を動かしながら、母は言う。


「あんたとお父さんそっくりだから。お尻と後頭部」






 その日の夜、敗北の味を噛みしめるかのように好物であるタンドリーチキンを噛みしめる。


「いやぁ、あかりの作るタンドリーチキンは最高だなぁ。ビールによく合う」


「・・・えっ?」


 チラリと此方に視線を向けた母は父へと満面の笑みを返しながらーー。


「親子揃って好物が一緒だから、私も助かるわ〜」


 どうやら、お尻と後頭部だけでなく、好物も一緒だったようだーー畜生っ!!

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