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「モデル?私が?」


 どこか釈然としない表情を浮かべる雛乃に、秋穂は満面の笑みを浮かべながらーー。


「そうそう!!ひなっちパパの件は驚いたけどさ、まあ、仕方ないじゃん?勉強頑張ってるの邪魔すんのはちょっとって思ってたけど、そういうことなら新たな夢にしてみてもよくない?」


「・・・秋穂ちゃん」


「ーーそうですよ。それに家にいるのが気まずいということでしたら、わたくしの家が所有するマンションの一室に住んでもらっても構いません。


 色々と考えてみれば、これは逆にチャンスだと思った。というのも、今までは表立って推し活出来なかった訳だが、彼女がモデルになるならば、コソコソと推し活に励む必要がなくなる。


 確かに根底となる部分は幻想だったのかもしれないが、それも謂わばわたくしの勝手な思い込みのようなものだ。彼女が彼女じゃなくなった訳じゃない。


「・・・志乃」


 潤んだ瞳の雛乃に無言で頷く。唇を震わせ、何度も「ありがとう、2人ともーー」と呟く彼女を優しく抱きしめた。


「ずる〜い!ウチもウチも!」


 そう言って、わたくしごと雛乃を抱き締め始めた秋穂に皆で笑いあう。一時はどうしたものかと思ったが、結果だけみれば最高の結果に終わった。そんな夜だった。






「それにしても、良い方法を考えましたね」


 深酒に涙もあって、先に眠るとBARを出る雛乃を見送った私は、シャンパングラスを片手に秋穂に笑い掛けた。


「一緒にモデルやりたかったのは本当だけどね〜!でも、ほら、ウチらの推し活ってちょい危険じゃん?前みたいにひなっちに捕まる訳にもいかないし?」


「わたくしの場合は、雛乃にコレクション部屋を見られなければ問題はありませんが。どちらにせよ、表立って推し活出来るようになるのは有難いことですわ」


「だよね〜!!ウチはウチで、ひなっちが引っ越してくれたら、それをネタにお話くらいは出来るかもだし?本当、推し活が捗るわ〜」


「・・・接触は程々に。あくまでも推し活ということで協力しておりますから、それ以上になりましたら、わたくしも責任は負えませんよ?」


「解ってるよ〜!ウチだって親悲しませたい訳じゃないから!お陰で大分、消化出来てるし?推し活の範囲で、ちょっとだけ!」


 秋穂が雛乃の御父様に恋心を抱いていたのは、勿論知っていた。そして、その気持ちを消化する為に一時期はストーカー行為に及んでいたこともだ。


 現在はわたくしの協力の元、推し活に励むことで落ち着いてきているが、再燃して不倫などになろうものなら目も当てられない。


「その言葉、信じておりますからね?」


 わたくしが釘を刺すように言えば「モチのロンよ!!警察はゴメンだし!!」と、彼女は顔を青くする。


「それなら問題ありませんわ。改めて、わたくし達の推し活が今後、より素晴らしいものになることを祈ってーー乾杯」


「かんぱ〜い!!」


 陽気に差し出されたカクテルグラスに持っていたシャンパングラスを傾ける。お互いの成果を話しながらの楽しい夜は、あっという間に更けていくのだった。

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