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 わたくし、創条院 志乃は友人達との夏休みを楽しむ為、フランスを訪れていた。というのは半分嘘で、泣きながら電話をしてきた雛乃に頼まれ、急遽、旅行をすることになったというのが真実だ。


「ひなっち、もう止めなよ〜!!今日、初めてのお酒なんでしょ?二日酔いなるよ?」


「ヒック・・・うるさい!まだ、飲めるんだから!!あ〜」


 18歳でも飲酒が可能な地域が良いと言うので、フランスに連れてきたのだが、まあ、酷い荒れようだ。わたくし一人では手に負えないかもと思い、秋穂を連れてきたのは良い判断だったと思う。


 そもそもが、家出したいだの、遠くに行きたいだの、荒れる気配はあったのだが、ここまで荒れるとは一体何があったのだろうか?


 家の伝手で泊まっているホテルに併設されたBARで、私は荒れる彼女を見ながら頭を悩ませていた。


「雛乃、何がありましたの?辛いことがあったというのは解りますが・・・」


「志乃・・・」


 優しく背中に触れ、優しく声を掛けると彼女は泣き腫らした目を此方に向けた。しかしながら、弱ってるせいか、今日はスキンシップが豊富で堪りませーーいえ、それほど弱っているということ、親友として支えねば。


「秋穂さんも私も雛乃のことを心配してますから、ゆっくりで良いので話してくれませんか?」


 雛乃は暫くシャンパンのグラスを見つめていたが、それを避けると顔を伏せーー。


「・・・絶対引くよ?それに秋穂ちゃんは軽蔑すると思う」


「秋穂さんのことはわかりませんが、早々引くことはありませんよ。幼稚園からの仲じゃないですか」


 雛乃とわたくしの関係性を振り返れば、大凡のことは知っていた。そのくらい仲が良い自負もある。


 大体、友人で推し活しているわたくしと、友人の父親をストーカーしていた秋穂を知っていて、早々引くことがあるとは思えなかった。因みに秋穂は現在、わたくしと協力関係にあり、お互いの推し活を密かに楽しんでいる。


 雛乃は顔を伏せたまま暫く黙っていたが、ポツリと漏らすように言った。


「私、ずっと好きだったんだ。お父さんのこと」


「えっと・・・ファザコンって話だよね?」


「ファザコンって行き過ぎた"ライク"のことだよね?"ラブ"の方・・・」


「ラブの方って・・・」


 唖然として言葉を失っている秋穂を見ながら、わたくしは何だか納得していた。普段の盗さーー観察の様子から、御父様との距離が近いとは思っていた。


「雛乃・・・もしかして、法学部に入りたいのって・・・」


「うん。お父さんと結婚するためだよ。その為にはそもそもどんな法律があるのかとか、詳しく勉強したかったから・・・でも、もう無理かも。だって、弟が出来たから」


 当然のように語り、諦めた理由を話す彼女にわたくしの世界は崩れていくようだった。あの輝かしい笑顔も、勉強を頑張る様も全て歪んだ愛情から始まったものだったのかとーー。


「だから、もう、どうやって頑張ったらいいか解んないや。未来みえなくて・・・2人ともごめんね。こんなんでーー」






「ねぇ、ひなっちさ。ウチとモデルやんない?前から一緒に出来たらサイコーだと思ってたんだよね〜」

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