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「たっだいまー。あ、隆聖。星野も」


「おかえり」


「アッキー、おじゃましてまーす」



淳仁が、コンビニの袋を提げて帰ってきた。

俺らは、共有スペースにあるテレビの前に胡座をかいて、ゲームをしていた。ちなみにスマブラである。

俺らの方へ歩いてくると、淳仁は俺の隣に腰を下ろす。そのとき、俺の顔を見て、そして何も言わず目を逸らした。それから星野を「じゃますんなら帰れよな」とからかう。

ほんとに、同室者が淳仁でよかった。優しい友達。いつか、星野とのことも言えたらいいな、と俺は思う。



俺と星野は、付き合うことになった。


星野のバカみたいな告白を聞き流した後、じゃあ付き合おうという話になったのだ。互いに恋人がいたことがなく、付き合い始めとはどうするものかわからなかった俺たちが、「とりあえず正座していることだし」と三つ指ついて頭を下げたのは、つい30分ほど前のことである。

火星に帰るときどうするかとか、そういう先のことは、今は考えない(やはりまだ半信半疑な面もある)。大事なのは、いま、俺が星野を、星野が俺を、好きだということだ。



目だけで隣を見ると、星野は目を皿のようにしてテレビ画面を見つめていた。その目には飛び跳ねるマリオが映っている。

見慣れた、イケメンなのにバカみてーな横顔。

これからも隣にある。

いや、これからは、これまでよりももっと近くに。

そう思ったら、胸がじわじわ暖まるような気がした。



辛いこともあったし、すごくびっくりすることもあったけど、今日はいい日だったな、と俺は思っていた。

そしてこれからも、たとえ何があっても、星野を信じて、一緒にいようと思った。そうできると思う。だって、星野だから。


だから、大丈夫だ。









俺が画面に目を戻すと、星野が、あっそうだ!と声を上げた。



「ねーねーアッキー」


「なに?」


「俺ねぇ、りゅうちゃんと付き合うことになったからー」


「……は!?」



俺は驚いて星野の方を向いた。しかし星野はテレビ画面から目を離さない。視界の隅で俺のカービィが死んだのが見えた。

――いやたしかに、淳仁にいつか打ち明けたいとは思っていた。思っていたが、それはたとえば男同士の恋愛に偏見はないかとかもし引かれて友情が壊れても耐えられるような心の準備とか、そういう諸々をうまく片付けてからだろうと俺は思っていたっていうか、絶対に今ではなかった。


こいつ、何をポロっと暴露してるんだ!?


つい大声を上げた俺をよそに、ふーんと淳仁は言い、コンビニ袋からガサガサと何かを取り出している。見ると、それはプリンだった。あ、淳仁それ好きだよね。いやいやそうじゃない。

淳仁はプリンのふたをぺりぺり剥がし、プラスチックの小さなスプーンを突き刺しながら、「ていうか」と口を開いた。




「むしろ星野と隆聖って、まだ付き合ってなかったんだ。それにびっくりだよ。

で? 星野は隆聖のこと、火星に連れて帰んの?」




「……はぁあ!?!?!?」


「あれ、星野、俺のこと隆聖に言ってないの?」


「言ってないよ~、付き合い始めたのがさっきだもん」


「あーそうなの。隆聖、言ってなかったけど俺、金星から来たんだわ」


「や、えっ……はぁあ!?!?」






おわり


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