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ーーと、この部屋に帰って来てからずっと繰り返している同じ考えに、またたどりついたとき、急に頭の中に、冷静な俺の声が響いた。


何を考えてるんだ。

悪いのは俺じゃないか。


すう、と頭が冷えたのがわかった。

そう、俺が勝手に思い込んでただけだ。星野ならこうだ、なんて、勝手に決め付けて、そうじゃなかったから癇癪を起こしてる。思い通りにならないから当たり散らすなんて、幼稚園児と同じじゃないか。

男同士の恋なんだ。受け入れられなくても仕方ない。きっと他の、俺と同じように同性を好きになった人は、きっとこんなふうに不用意に告白なんてしないんだ。星野はそれに、当然の反応を返しただけじゃないか。




「……りゅうちゃんっ、あのね、」



長い沈黙を破って、星野がドアの向こう、俺の意識の外から、声をかけてきた。


俺ははっとした。

そして星野が何か言おうとするのを遮って、星野、と呼びかけた。



「星野、ごめん。俺が悪かったわ」


「え……」


「そうだよな、男同士だもんな、しかも今まで友達だったのに、急に、キモいよな。てか、星野、やさしいな。うわっとか、マジかよとか、言わなかったもん。なのに俺、なんか勘違いしてたわ。マジごめん、ごめんほんとに」



俺は早口でまくしたてた。そうしないと、何か話し続けていないと、心から何か余計な感情が出てきてしまいそうだったのだ。「キモい」という単語を口にするとき唇が震えたけど、それを押しとどめるように、俺は口を動かし続けた。

口は動かしたまま、俯いて、シーツを見つめる。気付いたらシワが寄っていて、俺は自分がシーツを握りしめていることを知った。



「ち、違、違うよりゅうちゃん」


「ごめん。しかも部屋、来てくれたのに、マジ悪いんだけど、俺さ、ちょっと頭冷やしたい。ごめん、帰ってもらってい?あ、あと心配しないでいいよ、俺もう星野と一緒にいないようにするし。いや、キモくて、ごめんねほんと……」




「っりゅうちゃん!おねがい、聞いて!!」




そのとき、すごく間近で、星野の声がした。


驚いて、顔を上げる。

そこに、星野がいた。俺の顔の、本当に目の前。すっと通った鼻に二重のくっきりとした瞳。色素の薄い、ツンツンの髪。第一ボタンを開けた制服のシャツ。

星野だ。星野が、床に膝立ちをして、ベッドに手をかけて、いまにも泣き出しそうな顔で、俺に顔を近づけていた。


俺はぽかんと口を開けた。

……こいつ、いつこの部屋に入ってきたんだ?




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