第一話秘めたる想い
第一話秘めたる想い
誰かに好きな言葉を聞かれれば私、白本愛海はこう答える。
『"優しい"って言葉が私は好き』と
その後に続けてこう呟きもするだろう
『でも嫌いな言葉も"優しい"……なんだよ』と。
『好きと嫌いは表裏一体』その言葉が脳裏に浮かぶ。
なぜ好きな言葉や嫌いな言葉の話になったかと言うと今日の授業で『好きな言葉と嫌いな言葉を考えなぜ自分がその言葉が好きであり嫌いなのかを考えてみよう。そうすれば自ずと自分自身のことを分かるようになる』みたいなことをしたから
そうして私はその理由を考えてみた。
そしてなぜこの言葉が好きな理由は……私が密かに想いを寄せている相手、彩那が誰に対しても優しいから。
私の幼馴染であり一番の親友なのが黒瀬彩那
そして私の初恋の相手も……。
私は彩那のそういう優しさに惹かれたのに……嫉妬してるんだ。
彩那が私以外の誰かと……誰かと話してるから!!
付き合ってもないのに嫉妬してるなんておかしい、こんな私は嫌われるに決まってるだから
私はそう言い聞かせている……周りから見れば別におかしくはないのだろう。多分普通なんだと思う、好きだから嫉妬する。
私が優しいという言葉が好きな理由は彩那のことが好きだから
嫌いな理由は私が自分のことが嫌いだから。
これだけだとわからないと思うから説明すると私が同級生や先生から『白本さんは本当に優しいよね』と言われる。
けど私はただみんなに嫌われたくないから動いているだけ……なんだけどな。
私がそんな考えで動いていることに気づいてる人もいると思う。
私は自分の愛されたいという感情を抑えたいが心の隙間から溢れ出たものが理性を少し壊す。
その結果"優しい"と言われるだけ
結局私は自己中というやつなんだよ
私は好きな人に気持ちを伝えることさえ出来ない意気地なし……本当は拒絶されて今までの関係が壊れるのを怖がっている弱虫なんだ。
私は昔からそう、なにもかもを怖がって怯えてばかり……でもいつも怖がってないフリをしてなんとか自信があるように見えるようにしてやり過ごしていた。
そうしてたら頼られるようになった。
私は頼られることが嬉しかった……だって必要とされていると思えたから。
だから私は余計に無理をした。
しかし彩那には私が無理をしているのが分かるようだ……彩那にだけは気づいてほしくないんだけどな
彩那が私を心配したように
「……あのさ愛海無理してるでしょ、悩みがあるならいつでも言ってよ。私、愛海が辛い思いをしてるのが嫌だから……でもいやなら言わなくていいからね」と言ってくれた。
本当は彩那に悩みを言いたい……でも否定されるが怖い
「ごめん彩那……今は言えないかな。でもどうして気づいたの?」
彩那が答えたことは私自身気づいてなかったことだった。
「だって愛海たまにこんな暗い表情してるよ」
そういって彩那は私の写真を見せてきた。
この写真いつ撮ったのって気になったけど今は聞かないようにした。
理由はたまにするって彩那に言われたこの顔を今後なるべくしないようにするために。
(ちなみに背景の花は彩那が写真を加工してつけた物です)
私ってあの時こんな顔してたんだ……確かこの時って笑顔の練習してたんだけど、顔を作ってる最中に辛いことを思い出して…………一瞬で真顔になったんだ。
最近妹の咲美から『お姉ちゃん最近さ無理して笑顔作ってるでしょ、だって笑顔になってもすぐに真顔になることが多いよ……家族なんだし言ってくれてもいいんじゃない? 私だってお姉ちゃんの助けになりたいよ!! お姉ちゃんは頑張りすぎなんだからたまには頑張らないのも大事なんじゃないの?』って言われる。
私がそう考えている時に彩那が小さな声で
「だって愛海いつも誰もいないを確認したあとにこの顔するんだもん。こんなの見たら分かるよ……本当はこんな辛そうな顔をするまえに私に相談してほしいんだけどなぁ」
「ねえ彩那、本当は私!!…………ごめんなんでもない。そんなこと言われたら気になっちゃうよねでも本当に……その、なんでもないから」
私はつい本音を言ってしまうところだった。
分かっている本音を言えば全てが壊れることを。
彩那は私の家の事情も知ってる。
家の事情というのは私と咲美が親から虐待を受けていること、そして私が咲美を連れて家を飛び出したこと、私がバイトをして生計を立てていること。
咲美と私が住んでいる家は叔母が大家をしており、そこを借りていてそこで暮らしていること。
だから……優しい彩那は心配するんだろうな
「……ねえ愛海……その、今日の授業で好きな言葉と嫌いな言葉のことで班で話し合いしたでしょ……愛海はどんな言葉が好きなの? 私は『自分を愛せるのは自分だけ』とか『緊張は本気の証』とか……まあそういうのかな。
他にもあるんだけど、特に元気がもらえたのがこの言葉なんだよ」
その二つの言葉って中学生の時に私が彩那に言った言葉…………覚えてくれてたんだ嬉しい。
私が嬉しさを噛み締めていた時彩那が何か呟いた。
「……まあ愛海が言ってくれた言葉なら全部好きなんだけど……今はまだ"友達"のままでいたいけど、いつか……」
「彩那何か言った?」
今私難聴系主人公みたいなこと言った気がする。
でも難聴系主人公は好かれてるけど私は違う。
私は彩那に好かれるほどの人間じゃない……そもそも彩那には私なんかよりいい相手を選んでほしいし幸せになってほしい
彩那が『なんでもない』と頬をさくらんぼのように赤く染めながら言ったのを見て私はかわいいと思ってしまったのと同時に、少し気まずいとも思ってしまった。
彩那はどう思ったか分からないけど……少しの間無言の時間が過ぎた時部屋の外から走る音が聞こえてきた
ドタドタドタドタ……ガチャ
「たっだいま〜お姉ちゃ〜ん咲美が帰ってきたよ!! あれっお姉ちゃんの部屋に彩那ちゃんがいるってことは…………あっもしかして私お邪魔だった? ごめんねお姉ちゃんそれじゃ私は外走ってるから頑張ってね〜」
そして咲美はまたドタドタ足音を立てながら部屋を出ていった
「ちょっと咲美!?」
私は思わず叫んでしまった
咲美……私に気を遣ってくれたみたいだけどね……余計恥ずかしいし気まずいから一緒に居てくれたほうが良かったかな!!
どうしようさらに気まずくなった気がするが、それが杞憂だったことはこの後の彩那の言葉で分かった。
見つけて読んでいただきありがとうございます!!