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第4話 ティナの想い

 「やってきました、王都~!」


 日差しが降り注ぐ朝、ティナがバっと両手を広げる。

 帰還した次の日、エルタはティナに連れられて早速王都を見に来ていた。


 だが、すぐさまティナはがっくりと肩を落とした。


「でも、私はこれから学院だよぉ……」

「それは行った方が良いよ。ティナは “特待生” なんでしょ?」

「なんとかね」


 昨日、二人はあれからも色々な話をした。

 その中で、エルタはいくつか驚くべきことを聞いたのだ。


 まず、学院の名は『王都エトワール学院』。

 名前だけは知っていたが、なんと国内で最高峰(・・・)の学院だという。

 勉学はもちろん、強さに関しても、国中の精鋭が集まるエリート学院なのだ。


 しかし、学院にはそれなりの学費がかかる。

 孤児院育ちのティナにはとても(まかな)えなかったが、彼女は努力を重ねて試験時に優秀な成績を収めた。

 その結果、“特待生”として学費を免除してもらっているらしい。


 また、一年ながら生徒会にも所属しているようだ。

 エルタは改めて誇らしげな表情を浮かべる。


「立派な妹に育ってくれて嬉しいよ」

「えへへっ」

「でも、どうしてそんなに学院に行きたかったの?」


 王都エトワール学院では、強さに磨きをかけることを求められる。

 エルタからすれば、十年前のティナには考えられなかったようだ。


「それは……」


 対して、ティナはふいっと目を()らす。

 それから若干(ほお)を赤らめたまま、エルタをチラっと(のぞ)き込むようにして答えた。


「助けたかった人がいたから……だよ」

「うん?」


 いかにも意味深だったが、生憎(あいにく)小さな声はエルタに届いていなかった。


「なんだって?」

「〜〜〜っ! もう、そんなこともほんっとに変わんない!」

「ええ?」


 エルタは昔からこうらしい。

 その腹いせと言ってはなんだが、ティナは昨日の話の続きを持ち出した。

 

「絶対にお兄ちゃんを講師に推薦するんだから!」

「いやいや、だから話も聞いてもらえないって」


 だが、エルタはまあまあと抑えるのみ。

 話を聞いた時は動揺したが、学院がそんなすごい場所だと知ると逆に(・・)安心できたのだ。


「こんな住所不定の男なんか、即却下に決まってるよ」

「ううん、私が絶対押し通すもん! 生徒会の一員だし!」

「はは、そっかそっか」


 だからこそ、この余裕の態度である。

 と、そうこうしている内にティナは魔法時計を見てハッとした。


「あ、私そろそろ行かないと! お兄ちゃんは本当に一人で大丈夫?」

「うん、今日はとりあえず案内所にでも行ってみるよ」

「わかった。じゃあ放課後にここで待ち合わせだからね!」

「おう」


 互いに手を振り、エルタは学院へ向かったティナを見送る。

 その長身にもよく似合う制服の後ろ姿は、兄としてとても誇らしいものだった。


(ギリお兄ちゃんの方が高いけどな)


 そうして、ティナの姿が見えなくなったところで、エルタは(きびす)を返す。

 

「さて、じゃあ案内所にでも……」


 だが、そんな彼の前に複数人の影が現れる。


「エルタ殿だな」

「へ?」


 全身白銀の(よろい)に、等身大の槍を持った者たちだ。

 胸部分にはそれぞれ、槍がクロスしたマークが刻まれている。

 彼らはすぐに自ら名乗り出た。


「我々は『王都騎士団』だ」

「おーときしだん……って、あの“王都騎士団”んんん!?」


 さすがにエルタでも聞いたことがあったようだ。


 王都は広く、国内で最も人が行き交う場所だが、トラブルは少ない。

 それは彼ら──『王都騎士団』が治安を守っているからだ。

 人々の憧れであり、この国の精鋭部隊。

 栄光ある騎士団と言えば、この王都騎士団に他ならない。


 そんな騎士団が、突然エルタをたずねてきたのだ。

 動揺するのも無理はない。


「えーと、どうされたんですか?」

「副団長よりエルタ殿を連れてくるように命じられている。どうかこのまま付いて来てほしい」

「なんで!?」


 全く身に覚えのないエルタだが、“上の命令は絶対”である王都騎士団には関係ない。

 彼らは、エルタに付いて来るよう身振りをした。


「僕は何もやってませんよ!?」

「ああ、だから悪いようにはしない。黙って来てくれれば事は済む」

「うそだーーー!」


 王都騎士団に反抗すれば、それこそ罪になりかねない。

 エルタは声を上げながらも、言われるがままに連行された──。

巻き込まれ系主人公のエルタ君

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