4-4 お試しの結婚生活
湯を含んだ布で汗を拭きとり、紅悠が用意してくれた浴衣に着替えてしばらくすると、小さな土鍋を乗せた膳を抱えて、紅悠が部屋に入ってきた。
「旦那様、とり粥をお持ちしました」
律の前に膳を置き、土鍋の蓋を開けると、出汁のいい香りが鼻をくすぐる。
圭からは、「律様は風邪をひいた時、何も食べたがらないんですよ」と聞いてはいたが、身体に栄養を入れないことには、熱で奪われた体力を回復できない。
「少しだけでも、召し上がってください」
紅悠の言葉に、律は匙を取ると、粥をすくって口に含んだ。
柔らかく煮込まれた鶏の旨みが粥に溶け込み、生姜の微かな辛みが身体を温めてくれる。
「…これなら、全部食えそうだ」
そう言うと、紅悠が本当に嬉しそうに笑うので、律までつられて嬉しくなった。
律が粥を食べ終えると、紅悠は布団の敷布と枕掛けを取り換え、律は再び眠りについた。
圭は帰り際、もう一度医者に寄ってみるという。明日になったら一応様子を見に来てもらえるように、頼んでくれるそうだ。
夜、床に就く前に、紅悠はそっと律の部屋に入り、熱を測る。
ほぼ平熱に戻ったのを確認すると、紅悠はようやく肩の力を抜いて、律を起こしてしまわないよう静かに襖を閉めた。
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