上級魔法
「"大いなる風の女神アネモイに希う、悠久を漂いし優しき風を凶暴なる風に変幻せよ! 全てを切り裂く裂刃と成りて、矮小なる存在に見せつけよ!"」
ソフィーさんが魔法を唱え始めると周囲から風が吹いてきてそれとともに魔物たちもこっちへ襲ってきた。
フォレストラビットとフォレストウルフが真正面から突進してきた。
初実戦なのもあって恐怖で魔力弾を外したので、ソラとソフィーさんを一緒にシールドで囲った。
シールドは結構硬く、フォレストウルフとフォレストラビットたちの攻撃には割れる気配は全くなかった。
ソフィーさんの魔法は、最初はそよ風のような風だったが、段々と台風の時のように強風になっていった。
詠唱を唱え終わる前にこちらに気づいて
「味方の風魔法が来るから全員こっちに下がれ!」
とグレイさんの掛け声で他の冒険者が下がってきたと同時にソフィーさんの詠唱が終わった。
「サイクロン!」
すると竜巻のような風が目の前で魔物を蹂躙し無事に大量の魔物は一掃された。
「ソフィー、こっちに戻ってきたんだな。上級魔法なんて使って魔力は大丈夫なのか?」
こんな時ではあるが魔法には等級で分けられていて、初級→下級→中級→上級→超級→神級の順番になっている。
上級魔法を使えるだけで魔の森レベルの魔物は結構余裕があるらしい。
「えぇ、ですが上級は撃てて後一度くらいなので、できるなら後は補助魔法を使って下級と中級で戦うのが良いですね。」
「そうか、じゃあそれで行こう。もしやばかったらまた街まで連れて行ってやるからできる限り戦ってくれ。正直さっきので雑魚は全部倒したみてぇだが奥にかなり手強いのがいそうだからな。」
グレイさんは立ち上がって周りの冒険者に声をかけた。
「ソフィーの魔法のお陰で雑魚は全部処理できた! 奥にかなり強力な魔物がいるから怪我してるやつ以外付いてきてくれ!」
と、まるで隊長のように言っていた。
命令して喧嘩とかにならないのかな?と思っていたら特に反感もなく指示に従い動いていた。
どうやらグレイさんがこの中で、Aランクと一番高いらしくそれで司令塔がいない場合はランクが高い人の指示に従うのがギルドの常識だそうだ。
負傷してる人達は退いていって私たちは奥へと進んでいった。
「天音さん、先程はありがとうございました。お陰で無事魔法が撃てました。」
「い…いえ…私は全然ダメで魔力弾もうまく当てれませんでした…」
自分で言っていて、本当に私はここにいても良いのかと、迷惑になっているようで不安になっていた。
「確かに、魔力弾をあの距離で外してしまうのはまだまだかもしれません。」
「はい…すみませ──」
ソフィーが遮るように続いて話した。
「ですが、初めての戦闘で私を守ってもらえて戦おうとすることは新人ではなかなか難しいものです。帰ったら魔力弾の精度をあげれるよう特訓しましょう!」
ソフィーはニコリと笑ってくれた。
「はい…! 帰ったら頑張ります! ご指導よろしくお願いします!」
少しホワッとした気持ちでいると、奥から唸り声が聞こえてきた。
「この先に親玉がいるっぽいな。ソフィー、補助魔法だけ掛けておいてくれ。」
「了解。"汝の肉体に剛力を与えん"ストレングスエナジー"汝の肉体に速力を与えん"アジリティーエナジー」
「よし、親玉を倒しに行くぞ!」
冒険者たちが「おー!!」とやる気に満ちていた。
少し奥へ進むと、夜なこともあり視界が悪いが、奥で目がギラリと光っているのが見えた。




