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ブラックオニキス

 かつてダンゴバックラーが襲撃しようとした郊外にある工場付近。そこに盛周、否、アクジローと見慣れぬ怪人。そしてどことなく自衛隊のパワードスーツと、ブルーサファイアのスーツの合の子に見えるモノを装着している者。その三者がいた。


 そのスーツ、全体的に黒い色合いの戦隊スーツのような見た目に、手足に鉄甲。レッドルビーのPDCを思わせる装備。そして、装着者の顔を隠す大型のバイザー付きヘルメット。

 それらを装備した人物。見えている部分は口元のみだが、スーツ越しに見える身体が、女性らしい丸みがあることから、女性であることが見て取れた。

 その人物が口を開く。


「……大首領、何もあなた様が御出座しになるのは、流石に――」


 その言葉、女性らしいソプラノボイスに見慣れぬ怪人も同意するように頷いている。


「そうですぞ、閣下。――()()()が仰るように、御身を危険にさらす必要はありますまい」


 怪人が口に出した楓、という名前。そう、あのパワードスーツを着た人物こそ、バベル四天王の一人。草壁楓であった。

 彼女が今着ているスーツ。それこそ、以前盛周と奈緒が話題に出した自衛隊に納入予定のパワードスーツ。それの改造品であり、実質楓の専用装備となるものであった。


 そして、楓の名を出した見慣れぬ怪人。彼は――。


「まぁ、そう言うな()()()()()。これにも、それなりの訳がある」


 ……アクジローが出した名前に覚えはあるだろうか? ……そう、以前奈緒が話していた楓を補佐するために開発していた幹部級怪人。その片割れである、人とライオン、それにがらがら蛇の身体を合体させたキメラ怪人だ。

 そのガライオンが昨日完成したことによることと、楓の特別製パワードスーツ。それらの()()テストを行うため、彼らはこの場に現れていた。


 ……そう、実戦テストだ。

 そのために盛周は、アクジローはわざわざフツヌシを装着し、二人とともにこの場にいる。その理由は――。


「なぁに、あくまで俺は誘蛾灯の役割だ。なにせ今回は襲撃ではなく、あくまで戦うことが目的。しかし、ガライオンや、その装備……」


 そこまで言って、なにか思うところがあるのか口ごもる盛周。

 そして彼は、なにかを思い付いたのか。その思い付きを口にする。


「流石に楓の名前を出すのはまずい、か。……なら」


 彼が危惧すること、それは楓が実名で立塔学院高校の教員として働いていることだ。その状態で彼女の名前を出し、万が一正体がバレる可能性を憂慮した。

 それゆえ、盛周はそのパワードスーツ装着時の楓の名前。思い付いたコードネームを告げる。


「そうだな……。楓、貴様がそのスーツを着用時のコードネームだが、今後は【ブラックオニキス】と呼称する。覚えておくように」

「……ブラックオニキス、了解いたしました」


 楓、ブラックオニキスは盛周の発言を反芻していた。

 そんな彼女を見て、盛周。アクジローは満足そうに頷いていた。彼にとって、今回の名付けは会心の出来だと思ったからだ。


 そも、ブラックオニキスという宝石には『成功』『忍耐』『判断力』等の意味が、そしてオニキス全体でいえば『迷いのない信念』『秘密』等の意味がある。

 それらすべてが、盛周にとって楓に至ってほしい一つの境地であり、目標であった。つまり、一種の願掛けであるが、彼女にそうなってほしい、という盛周の想いを込めてつけた名前だった。

 ……もっとも、その名前が敵対するヒロインたちと、偶然とはいえ似た名前になったのは皮肉かもしれない。もしくは、盛周自身無意識の内に彼女らを意識していたのかもしれないが……。

 ともかく、今はブラックオニキスとガライオン。二人の実戦テストのため、ヒロインたちの到着を待つのみだった。

 そしてあわよくば楓に命令したもう一つの指令。それを達成できるかもしれない、という欲もあった。

 そのことを確認するように盛周は、アクジローは二人に喋りかける。


「一応、最後にもう一度確認するぞ。現在、この地点で俺、というよりもフツヌシがここにいることをバルドルが悟るように、遭えて隠蔽を解除している」

「……そして、ヒロインたちをここへおびき寄せる」

「そうだ、そして彼女らが現れればレッドルビーの相手を俺とガライオンが、ブルーサファイアの相手はブラックオニキスが担当。ここまでは良いな?」


 盛周の確認に頷く両名。それを確認した盛周は話を続ける。


「……そして、もしもレオーネも現れた場合は、ルビーをガライオン。レオーネは俺が担当する。つまり、ブラックオニキスの担当は変わらずだ。……間違っても殺すなよ?」

「……はっ!」


 盛周の念押しに、ブラックオニキスは少し返事を躊躇しつつも答える。そのことに彼は頭を抱えそうになる、が、最悪こちらが介入することで止めることも視野に入れるべきと判断する。

 そんな彼らのもとへ、奈緒から通信が入る。


『はいはい、お楽しみのところお邪魔するよ?』

「……博士? そうか、来たか――!」

『その通り、皆準備を頼むよ?』

「あぁ、大丈夫だ。こちらは万端だ――! 散開!」


 盛周が散開の指示を出し、即座に行動に移る二人。その直後、先ほどまでいた場所に光の帯が駆け抜けていく。

 ――敵の、ヒロインの攻撃だ!


 それをなんとか回避した面々の前に、ヒロインが現れる。


「……貴方たち、よくもやってくれましたね?」


 そこには、怒り心頭といった様子のブルーサファイアが、銃口を、殺意を向けながら立っていた。

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