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レオーネと歩夢

 レオーネが二人の模擬戦に乱入する少し前に、一度時は巻き戻る。

 そもそも彼女が再びバルドル基地に訪れた理由だが、まず始めにスパイ活動を行うなら内部にいた方が都合が良いこと。そして、それ以上に盛周から与えられた使命。それを達成するには渚と霞、二人とこれまで以上に(よしみ)を通じていた方がやりやすいこと。

 それらの理由から、彼女は再び基地へと舞い戻っていた。


 しかし、間の悪いことに千草は所用により不在。また、歩夢の姿も見えないことからどうしたものか、と悩むレオーネ。

 そんな彼女の耳にとある会話が聞こえてきた。


 ――曰く、レッドルビーとブルーサファイアが久々に模擬戦を行う。また、彼女たちの見届け人は歩夢が勤める。というものだった。


 そのことを聞いたレオーネは、これはチャンスだと思った。


(むふふ……。ボクの力をみせて好感度ゲット! そうじゃなくても、指導とかである程度仲は縮まるもんねっ)


 内心ホクホク顔になりながら二人がいる模擬戦用の部屋、ではなく歩夢が待機している管制室に向かうレオーネ。流石の彼女でも、何の連絡もなしに乱入してもヘイトを買うだけで意味がないことは理解している。

 そのため、まずは歩夢に許可を得ようと管制室に向かうのだった。





 管制室にたどり着いたレオーネは、そのまま部屋の中へ入る。

 そこには映像越しに二人の模擬戦をモニターし、データ取りなどの作業を行っている歩夢の姿があった。

 また、彼女の補佐なのか、他にも複数名のオペレーターの姿も確認できた。

 ……ただ、彼女らは一様に忙しなく動いており、どうにも声を掛けづらい。

 さて、どうしたものか。と悩むレオーネ。

 しかし、そんな彼女の仕草で気配が漏れたのか、歩夢はレオーネの方を見る。


「……誰? あら、レオーネちゃん」

「……あはは、ごめんね? お仕事の邪魔しちゃった?」

「そんなことないけど、どうしてここに?」


 そう問いかけながら、作業を止めて完全にレオーネの方に向く歩夢。

 そんな彼女の様子に、今なら目的を言ってもいいかな、と思うレオーネ。

 そして彼女は自身がここに来た目的について告げる。


「……あはは。ここに来た時に、ちょっと小耳に挟んで、ね。どうせなら、お手伝いでも、と……」

「お手伝い……?」


 レオーネが言ったお手伝いという言葉が婉曲過ぎたのか、意味が分からず首をかしげる歩夢。

 彼女の仕草に思わず笑いそうになるが、なんとか堪えて、レオーネは自身が考えていたことを言う。


「ほら、ここにはあの娘たちより経験豊富で、なおかつ強い娘がいるわけですよ。だから――」

「……レオーネちゃん、まさか?」

「そう、そのまさか。彼女らにとっても、ボクと戦って得るものはあると思うよ?」



 歩夢にとって、レオーネの提案はとても魅力的に感じた。しかし――。


「でも、レオーネちゃん。本当に良いの?」


 歩夢はレオーネがこのような提案をするのを意外に思った。なぜなら彼女は基本的、自身に利益が出ないことをするのは消極的だ。

 そのことは歩夢も知ってるし、何より彼女の半生を考えれば当然でもある。それを理解しているからこそ、歩夢は彼女に無理強いできないし、しようとも思わない。

 だが、今回彼女がこんな提案を行ったことで、なにか無理をしてるのでは? と、勘繰り先ほどの言葉が出たのだ。


 むろん、レオーネもレオーネで、彼女のそんな心遣いが分かるからこそ苦笑を浮かべる。

 ……それと同時に歩夢や、彼女の反応を見る限り千草からも銭ゲバ扱いされてるかもしれない、ということを理解して、人知れず落ち込んでいた。

 それでも、流石に歩夢に悟られると色々と問題――主にレオーネの心情的な部分で――なので、普段のように振る舞いながら話す。


「い、良いの良いの。ほら、ボクだって後輩に良いところ見せたいのもあるし……。」

「……そう? それなら是非ともお願いしたいけど……」

「……任せてよ! それじゃ、早速行ってくるね!」


 そう言ってレオーネはそそくさと部屋を去る。……決して、ボロが出そうだから撤退した、とかそういう訳じゃない。ただ単に少しでも早く身体を動かしたかっただけだ。そう自分に言い聞かせて。

 そんなレオーネを、歩夢は不思議そうに見送るのだった。

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