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レオーネの決意、彼女の功績 後編

 レオーネのご主人さまになってください。という願いを聞いて頭を悩ませる盛周。

 だが、それは彼女の願いを拒否する、という意味ではなく――。


(これは、断れないよなぁ……)


 盛周の中にある倫理観。断れない状況にあるが、それでも受け入れて良いのか? という悩みからだった。


 そもそも、いくら助け出すことが出来たとは言え、半年にも及ぶ拷問、虐待により彼女の肉体、並びに精神は多大なる影響を受けている。

 だからこそ願いを叶えることで、盛周が彼女の精神的主柱になる、という意味では理にかなっている。自身と同年代の女性を主従関係、悪く言えば奴隷関係にする、という倫理観を無視した点から目を瞑れば、だが……。


 そこまで考えた盛周は自嘲の笑みを浮かべる。


(何を今さら……。俺は秘密結社バベルの大首領だぞ。それを思えばその程度……。それに俺は決めたんだ。()()()()、と)


 ……ならば何も変わらない。例え彼女のご主人さま、とやらにならなくとも。今さら罪の一つや二つ、背負わずしてどうするか?

 盛周が選んだ道とは、そのような道なのだ。だからこそ……。


「……いいだろう」


 盛周の返事を聞いたレオーネはぱぁ、と笑顔が花開く。まさしく満面の笑みだった。

 そんな彼女を見ながら盛周はさらに話を続ける。


「なろうか、君のご主人さま、とやらに。だが、その場合君もバベル所属になる。その覚悟はあるか?」

「うんっ! ボク、なんでも頑張るよご主人さまっ!」

「そ、そうか……」


 レオーネに覚悟を問う盛周だったが、まさかの秒で、間髪いれずの返事を受け、逆に面食らってしまう。

 そんな盛周を不思議そうに見つめるレオーネ。

 彼女の純真無垢な視線に少し居心地悪くなりながら、盛周は今後について考える。

 そして、一つの可能性を思い付いた彼はレオーネに問いかける。


「それじゃレオーネ、最初の命令だ。……これから俺が聞いたことに関して、知っていることは正直に答えるんだ。……それと同時に知らないことについては、きちんと知らない、と答えること。良いね?」

「……? うん、ボク頑張るよ!」


 盛周の命令の一部、主に分からないことを分からない、という意味が理解できなかったようでレオーネは首をかしげていたが、とりあえず聞かれたことを答える。ということだけは理解できたので元気よく返事をした。

 ちなみに、知らないことを知らないと答えること、という命令にももちろん意味がある。

 というよりも、ある意味言葉通りなのだが、()()()()()()()ということも()()()()()なのだ。

 そも、レオーネというヒロインは傭兵的な側面が強いこともあり、複数の組織から依頼を受けたり、契約していることも多かった。それは言い方を変えれば複数の情報源があったという意味でもあり、そんな彼女が知らない情報というのは、それこそかなり機密性が高い情報である可能性が途端に高くなる。

 分かりやすく言えば、彼女が知らない情報というのは、それだけで重要度が高い証拠となり得る、ということだ。

 もちろん中には本当に意味のない情報という可能性もあるが、それだったとしても判断を下す材料が増えるという点で考えれば有用だ。





 それから盛周はレオーネに数多くの質問をした。


 ――今まで味方した組織のこと。

 ――今まで潰した組織のこと。

 ――見聞きした技術や能力。


 それらは多くの知見をバベルに、盛周にもたらした。そしてその中の一つ。彼女の依頼者、というよりも契約関係の常連を聞いて、盛周はほくそ笑む。

 うまく使えば、計画を前倒し出来る、と……。


「そうか、色々教えてくれてありがとう」

「ボク、役に立てた?」

「ああ、もちろんだとも」


 そう言いながら無意識にレオーネの頭を撫でる盛周。

 それは、幼馴染みの渚にやっている癖、のようなものだったが……。

 ……だが、彼女は渚ではなくレオーネ。しかも、男性不信、恐怖症の気もみえた娘だ。

 それを思い出し、しまった。と思う盛周。しかし、レオーネの反応は――。


「えへへ、ご主人さまぁ……」


 ふにゃり、とふやけた笑みを浮かべ幸せそうにしていた。その事に安堵する盛周。少なくとも、彼女が盛周を心の底から信頼している、というのが目に見えて理解できたから。

 これなら、これからもなんとかやっていけるだろうと思うのだった。

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