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咆哮、ブルーサファイア

 レッドルビーとガスパイダーの間に微妙な空気が漂っている頃、もう一方のヒロインと怪人。ブルーサファイアとサモバットはというと……。


「くっ、この……! 放しなさい!」

「ぐぅっ、まだまだ……!」


 サモバットの片足の爪に捕らわれたブルーサファイアは解放されるため、ブルーコメットで攻撃を仕掛け、サモバットもまた、それに応戦するようにもう一方の足で防御、反撃を行っていた。

 ただし、彼らが今いるところは地上から100メートルは離れていそうな上空であり、仮にブルーサファイアがサモバットの拘束から逃れても危険であることには変わりない。

 もっとも、それでもうまく着地できれば負傷することはない、といえる程度に頑強であるのも確か。

 ゆえにブルーサファイアはこのままサモバットに拘束され続けるよりも、多少危険でも解放されることを優先していた。


 そしてブルーサファイアにしつこく攻撃されることに業を煮やしたサモバットは、防御、反撃しながら辺りの地表を見渡す。すると、どうやらちょうど良い立地を見つけたようで、その場所めがけて降下する。

 サモバットの急な方向転換にバランスを崩す。


「きゃあ……!!」


 思わずといった様子で悲鳴を上げるブルーサファイア。

 だが、サモバットはそんなブルーサファイアには目もくれず降下し続け――。


「ここで良い。――ふんっ!」

「うぁ……!!」


 降下エネルギーそのままに、ブルーサファイアを脚から放り投げる。

 急に放り投げられたブルーサファイアは受け身を取ることが出来ず、地面をごろごろと転がる。

 その結果、彼女の髪やスーツは転がった際に砂がついて、そして口にも砂が入ったのか咳をするように吐き出している。

 そして身体中についた砂で汚れた彼女は、叩き落としながら辺りを見渡す。そこは先ほどまでとは違い――。


「……ここは、採石場?」


 彼女が言うとおり、一部堀進められたかのように不自然に窪んだ地表。それとともにまた一部は自然にできることのなさそうな直角の壁状の山など、まさしく採石場の様相を呈していた。

 そんなブルーサファイアを見て、サモバットはせせら笑うように挑発する。


「ここがどこでも問題あるまい。ここが貴様の墓場となるのだからな!」

「……ええ、そうね。ここが貴方の墓場になる以上、疑問を持っても意味ないわね」


 だが、ブルーサファイアは怪人の挑発にのることなく冷静な状態で、言葉をそのまま返すかたちで挑発し返す。

 彼女の言葉を聞いたサモバットは怒りだす――ことはなく、不適に笑う。


「くくく……、貴様の減らず口もそこまでだ。今の貴様らでは我らに勝つことは不可能だからなぁ!」

「……そう。なら不可能を可能にしてみましょうか!」


 本来直情的なサモバットが自身を持って言い放った言葉を聞いて、ブルーサファイアはならばそれを乗り越えると宣言する。

 そして、それが合図となりヒロインと怪人。二人が激突する!


 最初の一手はブルーサファイアだった。

 彼女はブルーコメットをライフル形態に変形させると牽制も兼ねて三点バーストで、サモバットに向けて放つ。

 もっとも、それはサモバットにも見える状態で放ったこともあり、空を飛ぶことで悠々と回避される。

 そしてサモバットはお返しとばかりに空中から急降下し、脚の爪による攻撃を加えようと――。


「……掛かった!」

「なにっ! ぬぉぉっ――!」


 だが、ライフルを避けられるなど既に折り込み済みだったブルーサファイアは、敢えて避けさせることで隙を作り攻撃を誘発。それを迎撃する策を取った。

 それにまんまと引っ掛かったサモバットは急降下してきたところを棍形態に戻したブルーコメットで叩き落とされる。

 そのまま墜落し、うつ伏せに倒れるサモバット。

 ブルーサファイアは倒れたサモバットを追撃するために、ブルーコメットを今度は大剣形態に変更。そのまま振り下ろして両断しようとする、が――。


「……っ!」


 虫の知らせか、何か良くないものを感じたブルーサファイアは直感を信じてバックステップ!

 彼女の、ブルーサファイアの直感は正しかったことが、この後すぐに証明される。

 サモバットの周囲が急に燃え上がったのだ。

 それを見て、少なくとも前回の戦闘時、そのような攻撃はなかった筈、と思い返す。

 しかし、現状その攻撃が起きている以上、何らかの打開策が必要。そう考えたブルーサファイアは何か、何か情報がないか。と思い返す。

 その時、かつてバベルに所属していた時に産みの親の一人。青木奈緒が言っていたことを思い出す。


 ――まったく、SEINOが不足しているからといって、一部能力をオミットしないといけないなんて世知辛いねぇ……。


 それは奈緒が発したちょっとした愚痴だった。そして、その能力。彼女がオミットを残念がっていた怪人たち。その怪人たちは――!


「……まさか!」


 ――まずい、まずいまずい!


 そう焦るブルーサファイア。

 彼女が知るうちで怪人たちに特殊能力が付与される予定だったのはガスパイダーとサモバットの二体。

 サモバットの擬似的な発火能力については何とかなる。しかし――!

 ガスパイダー、奴の複数のガスを生成する能力はまずい!


 ガスパイダーの相手をするのが自身、ブルーサファイアであればそこまで問題ではなかった。

 ブルーサファイアは、南雲霞は多少生体部品を使っているとはいえガイノイド。

 普通の人間よりも耐性は上であるし、多少のことなら耐えられる。

 しかし、今ガスパイダーの相手をしているのはブルーサファイアではなくレッドルビー。ガイノイドや改造人間ではなく、純粋な人間だ。

 そのレッドルビーとガスパイダーの特殊能力の相性は最悪といっていい。

 そして現在二人は分断され、フォローが出来ない状態だ。


 そこまで考えたブルーサファイアの脳裏に最悪の可能性、レッドルビーが敗北。死亡する可能性がよぎる。


 ――そんなことになっては……!


 その思いとともにブルーサファイア、霞は過去の思い出として平穏な日常、盛周と渚が笑いあっていた風景を思い起こす。

 その日常を崩させてはならない。

 その事を強く意識したブルーサファイアは――。


「やらせるものか! ――貴方を倒し、彼女を助ける、そこをどけぇぇぇぇぇ!」


 いつの間にか体勢を立て直したサモバットに対して、そう吠えるのだった。

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