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指針

 ヒロインたちとの戦いから無事撤退した盛周は、バベル秘密基地内の会議室にて朱音、奈緒、楓たち四天王と今後について話し合いを行っていた。


「……さて、今回のことについてだが――」

「大首領、どうか挽回のチャンスを!」


 楓は切羽詰まった表情で盛周に具申する。彼女にとって、やはり今回の失敗――特に下手すると、盛周を負傷させたかもしれない、という可能性を与えたことに――は堪えたようで、名誉挽回のチャンスを欲していた。

 だが、そんな彼女に対して、朱音は冷たい目線で。


「……控えなさい、楓。今はその様な些事に拘っている場合ではありません」


 そう、ぴしゃりと言い放つ。

 その言葉を聞いた楓は怯えたように肩を縮こませる。

 いくら名目上楓と朱音が同格とはいえ、実際には最古参と新参という明確に違いが存在する。

 そして、それが今回明確な序列として表れていた。

 そんな二人を宥めるように奈緒が声を上げる。


「まぁまぁ、朱音落ち着いて。楓くんも焦ってはいけないよ?」


 奈緒の意見に同意するように盛周も続く。


「そうだな、博士の言うとおり。今回のはとびきりのイレギュラー、それで楓を糾弾するつもりはない」

「「……はっ」」


 盛周の実質的な宣言に、朱音は凛とした表情で、対する楓は申し訳なさと己の不甲斐なさから縮こまっている。

 そんな対照的な二人に盛周と奈緒は、互いに見合って苦笑する。

 そして会議室に漂う妙な雰囲気を払拭すべく盛周は奈緒に問いかける。


「そういえば博士? 今回、ガスパイダーとサモバットが無事に帰還したわけだが、なにか有益なデータは取れたのか?」


 盛周の質問が、二人に搭載した新型コアのことだと悟った奈緒は、我が意を得たり、とばかりに話し出す。


「そうそう、それだよ大首領。今回の戦闘データのお陰で、新たな怪人の作成に弾みが付きそうでねぇ!」

「……ほう?」


 奈緒の口から興味深い発言が出たことで、盛周は続きを促すように視線を送る。

 それに奈緒は嬉々とした表情を浮かべ、続きを話す。


「いやぁ、今回のコアが従来のものより高出力なのは理解してもらってると思うけど、そのお陰で他部分もグレードアップできたからね! 色々なテストが同時に出来て捗ったよ!」

「具体的には?」

「まずは装甲材だね! 今までの特殊精製スチールから、超高硬度チタン合金に変更。しかも、今までは出力の関係上、搭載不可能だった装甲修復用ナノマシンも搭載できるようになったから、生存性がかなり向上したよ!」


 そうウキウキとしながら話す奈緒。それはまるで新しい玩具を買い与えられた子供のようであった。


「しかも、今回の改修で出力が改善した結果、本来オミットされていた彼らの特殊武装も搭載できたからね! ……まぁ、使う機会がなかったわけだけど」

「特殊武装と言ったら、ガスパイダーは特殊なガス、催涙や感度向上、毒ガスなどの複合ガスの噴射。サモバットは熱線を照射したり、超音波で擬似的な発火現象を引き起こす、などだったか?」

「そうそう、それだよ!」


 盛周の言葉に、奈緒は嬉しそうに同意する。

 やはり、奈緒としても怪人たちは自らの作品。あるいは子供のようなものなのだから、彼らが評価されるのが嬉しいのだろう。

 そんな彼女を微笑ましそうに見ている朱音。


「それで博士? 新しい怪人については?」


 いい加減脱線している話を戻すために盛周は問いかける。

 その問いに奈緒は――。


「……あぁ! 一応、一体完成の目処が立ったよ」

「ほう、ならば上々。……楓」

「……はっ!」


 盛周に声をかけられた楓は、気合いをいれた返事をした。

 そんな彼女に盛周は――。


「博士の話は聞いていたな? 新しい怪人での襲撃計画の策定をしてもらう。良いな」

「はいっ、お任せください!」


 暗に名誉挽回のチャンスをもたらされた楓は、嬉々とした様子で返事をした。

 彼女にとっても、望むところだった。

 そんな彼女を見て盛周は満足そうに頷く。そして――。


「じゃあ、朱音。後は任せる」

「はい、お任せください盛周さま」


 朱音に後の事を任せると、会議室から退室するのだった。

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