帰還
立塔自衛隊駐屯地近郊に於いて行われた、アクジローと名乗ったバベル大首領との遭遇戦。
そこで思わぬ苦戦を強いられたレッドルビーとブルーサファイアだったが、そこに現れたレオーネによって苦境を脱することに成功した。
その後、彼女らは遅れてきた鮭延小隊――彼らから聞いた話だと、バベルに襲撃を受けたわけではなく、単純に補給と整備に時間がかかっただけ、らしい――と、駐屯地へ帰還。
一連の報告を終えた後、レッドルビーとブルーサファイアは、救援に来てくれたレオーネとともにバルドルの司令部へと戻ってきていた。
そこでバルドル司令、南雲千草はルビーとサファイアだけでなくレオーネの姿があることに驚いた。
「……え、えぇっ! レオーネちゃん?!」
「えへへ、お久しぶり、千草さん。それと――」
そしてレオーネは千草同様に驚いているオペレーターへ向き直る。
「――水瀬さんも久しぶり、元気だった?」
「それはこっちの台詞! もう、元気だったら連絡くらい寄越しなさい!」
「あはは……。ごめん」
水瀬と呼ばれたバルドルのオペレーターは、音信不通だったレオーネに苦言を呈していた。
それをおおらかに笑って受け流すレオーネだが、突然水瀬に抱きつかれ頭をわしわし、と撫でられたことで目を白黒させる。
「うわわ……」
「まったく、心配かけさせないで」
そのまま自身の胸にかき抱くように抱きしめる水瀬。
彼女に抱き寄せられたレオーネは、安心させるように背中をぽんぽん、と叩く。
「大丈夫だよ。……ボクだって、もう大人になったんだから」
「……もう、大人になった。って言うなら、あんまり心配かけさせないで」
「えへへ……」
そんな二人の和やかなやり取りを見ていた渚は千草へ問いかける。
「あの、千草さん。あの人、レオーネさんとお知り合いだったんですか?」
「……え? あ、そっか。なぎさちゃんは――。そういえばかすみさんも知らないんだったわね」
千草の言葉に肯定するように、こくこくと頷く二人。
そんな二人の愛らしい様子に微笑むと、千草はレオーネについて話し出す。
「そうね、ここ。バルドルはもともと対バベルの組織として設立されたけど、初期の頃は怪人に対抗できる人材がいなかったのよ」
「そうでしたね、それで偶然私がスカウトされて……」
「えぇ、本格的に始動となったわ。……でも、それ以前にも一応対抗行動はとっていたの。その時に協力してくれてたのが、あの子。レオーネちゃんなの」
「……え? でも、それじゃ何で私が入った時に、あの人はいなかったんです?」
渚が当然の疑問を挟んだ時、千草は困ったような表情を浮かべる。
そして、なぜ彼女が入れ替わりになったのか。その理由を告げる。
「あの子は正式に組織へ所属する形じゃなくて、一種傭兵のような雇われの関係を望んでいたの。これは私たちだけじゃなくて、他の組織でも、ね」
千草の言葉を聞いて霞は何か心当たりがあるのか、小さく呟く。
「傭兵……雇われ、レオーネ……! そうか、だからバウンティハンター……!」
その呟きが聞こえた千草は感心するように答えを告げる。
「そう、よく知ってたわね、かすみさん。あの子は、その行動方針から賞金稼ぎ。バウンティハンターと呼ばれることが多かったわ。つまり、バウンティハンター-レオーネなんてのが通りが良いわね」
その言葉を聞いて息を呑む渚。いくら彼女が情報に疎いとはいえ、その名に聞き覚えがありすぎた。
即ち、最強格のヒロインとして。
そんなことを話しているうちに、一通り再会の挨拶を終えたのか、レオーネが渚たちのもとへ訪れる。
「ふふ、どうやらボクの話をしてたようだし、自己紹介は要らないかな?」
「……あ! えっと、ごめんなさい」
急に謝り始めた渚を見てレオーネはくすくすと笑う。
「何を謝ってるんだい? キミは何も悪いことしてないだろう。それよりも――」
キミたちの名前を教えてくれないかい?
そう告げるレオーネに二人は。
「え、あっ、はい。私は真波渚、ヒロインとしてとしてはレッドルビーです」
「……私は南雲霞。ブルーサファイアです」
そう自己紹介する二人。
そんな二人にレオーネは手を差し出すと――。
「そっか、それじゃ改めてよろしくね。なぎさ、かすみ」
そう言って二人に握手を求めるのだった。