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強請るな、さすれば──

 ファイアブレイドを生成してこちらへ突撃してくるオーラムリーフ。それに気付いたブラックオニキスは、防ぐため俺の前へ割り込む。しかし――。


「なにっ……!」

「………………っ!」


 そのままファイアブレイドを振るうことなく通り過ぎた。まさかの事態にブラックオニキスはもとより、彼女。オーラムリーフの仲間であるブルーサファイアすらも動揺していた。

 そして肝心の、通り過ぎたオーラムリーフは――。


「で、ぇぇぇぇいっ――――!!」


 さらに奥にいたオーガ型の魔物に向けてファイアブレイドを一閃!

 まさか自身が狙われていると思っていなかった魔物は防御する暇もなく一刀のうちに薙ぎ払われ、焼き払われた。


 灰塵と化した魔物を一瞥することなく、さらに彼女は駆ける、駈ける、翔ける――。


「お、りゃあぁぁぁぁぁあ――――!」


 まるで鬱憤を晴らすかのよう、暴れまわる。彼女の大暴れっぷりに、ともに現場へ来たブルーサファイアも困惑している。


「あき――オーラムリーフ?!」


 普段冷静な彼女の困惑に、こちらも――いや。


「この頃のあいつならおかしくない、か……」


 博士に再調整を受けてから彼女はある意味、より人間らしくなった。前もレッドルビー。渚の影響で多少人当たりは良かった。が、それでもふとした瞬間、無機質なガイノイドとしての側面が表に出ていた。

 しかし、再調整を受けたあと、どうにも喜怒哀楽がより表に出てくるようになった。それを見て、楓。表向き、教師として接している彼女はとても複雑そうな顔になっていたが……。


 それに、彼女の。秋葉ちゃんの暴れたい理由も分からなくもない。バベルの本拠地で、奈緒とレオーネにあそこまで好き勝手されたんだ。ストレスも溜まるというもんだ。

 ただ、まぁ……。


「このまま、彼女にすべて任せる。というのは面白くない」

「…………はっ!」


 俺の一言でブラックオニキスも意図を理解したのだろう。脚に力を込め、どん、と飛び出していく。

 なにも、魔物に対抗できるのはフツヌシだけじゃない。バベルの科学力、博士の頭脳は常に敵を解析。己が発明に反映させている。

 さすがにまだ怪人やバトロイドたちに反映させられていないが、それでもワンオフのパワードスーツ。ブラックオニキスをアップデートさせる程度なら造作もない。


「雄ォ――!」


 どごん、と鉄塊を殴ったような音とともに狼人間型の魔物が吹き飛ぶ。……殴られた胴を中心に大穴が空き、臓物を撒き散らしながら。

 それに一番驚いたのは攻撃を食らった魔物本人だろう。吹き飛ばされ、あり得ないものを見たように驚愕しながら、身体が粒子へ紐解かれていく。

 ……あれは命ごと消失しているのか、それとも――。


「――元の世界へ送還されているのか……」


 だとしたら、正直面倒ではある。そうなると敵の戦力はあくまで一時的に減少しているだけで、弱体化しているわけではないのだから。

 まぁ、現状考えたところで、どこまでいっても予想でしかない。それよりも、今は――!


()()とブラックオニキスの力。存分に試させてもらおうか――!」


 単純なデータ取り、という意味ではフツヌシの役目は既に終えている。だが、それだけじゃない。フツヌシとブラックオニキスにはまだ役目がある。

 我らが――、否。俺がかつて追い求めていた(ゆめ)を形作り、世に生み出す、という役目が。

 特にブラックオニキスはその雛形だ。だからこそ、あのパワードスーツにはバベルの科学の粋。解析されたレッドルビー(真波渚)ブルーサファイア(南雲霞)。そして、俺のデータが利用されている。

 そして、その果てに生み出されるのが究極の、いや、至高の戦士。かつて、俺が夢見た、憧れた英雄(ヒーロー)


 ……いまの俺に相応しい、などと考えるつもりもないし、なにより烏滸がましい。だが……。


「それでも、いつか必要になる」


 もちろん、必要にならない方がいい。しかし、どうしても必要になる時が出てくる。そんな気がする。その時になって後悔したくない。だから――。


 ――一歩、脚を踏み出す。ざり、とアスファルトを摺る音が聞こえた。


 いまは、ひとつでと有用なデータが必要だ。今後のために、己のために、世界のために。


「悪く思え……。鏖殺する!」


 俺はフツヌシの背部ブースターに火を入れる。(ごう)、と吐き出される熱量とともに飛翔。敵へ突撃を開始した。

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