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過去(未来)を変えるために

「間に合え……!」


 アナザーレッドルビーは急いでいた。知っていた筈なのに。岩の魔人、その初戦時にレオーネが戦死することを。そして、鮭延率いる特務部隊、彼らもまた副隊長であり、第二分隊長たる庭月をはじめ多大な犠牲を払うことを。

 確かにモムノフも良い装備であるのは間違いないし、バベルの怪人相手に良い勝負ができるのは事実だ。


 だが、それはあくまで()()()()()()。正確に言うなら盛周の方針で極力双方に被害を出さないようにしていることが大きい。

 そうでなければ、ガスパイダーやサモバット、ロブラスターなどの一般怪人はともかく、ガライオンに姿を表していないもう一体の幹部級怪人。そして、()()()()()()()()には手も足も出なかっただろう。

 彼らはバベルの中でも隔絶した戦力。その中でも最強怪人は、生きていたらレオーネですら苦戦したであろうと評されていた。


 ……いや、いまはそんなことどうでも良い。いまはそれよりも一刻も早く戦地にたどり着かなくては。レオーネが死ぬよりも前に。


 ――駆ける、駈ける、翔る。


 一心不乱に戦地に駆けつけるアナザーレッドルビー。

 彼女の思いが通じたのか、いまだレオーネの命は紡がれていた。だが――。


「まずい……!」


 彼女は態勢を崩した岩の魔人に追撃を掛けようとしている。アナザーレッドルビー、彼女が知るレオーネの最後は、その追撃を掛けようとして反撃を食らい命を落としていた。

 そもそも、いくらレオーネが最強のヒロインと言われても防御力はあくまで人並みでしかない。全身を穴だらけにされて生き残れるほど、彼女は人間をやめていない。

 間に合うかはわからない、それでもアナザーレッドルビーは一縷の望みをかけて叫ぶ。


「………………下がりなさい!」


 そして、その望みは繋がった。彼女はその警告を受けとり素直に引き下がったのだ。

 直後、岩の魔人から乱れ咲く槍の穂先。後一瞬でも遅ければレオーネの命はなかった。まさしく九死に一生を得たのだ。ならば――!


「破ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 黒い旋風となり吶喊するアナザーレッドルビー。彼女は自身のPDCを起動、サイキックエナジーを放出し、刃を形成する。

 そして手刀を刃とした彼女は延びた槍の穂先を切断していく。

 がしゃん、と音を立てて地に落ちる穂先を尻目に彼女は一度、魔人から距離を取る。また魔人が穂先を生成する予兆を読み取ったからだ。

 だが、距離を取るのが攻撃の終わりを示すわけではない。彼女はレオーネとは違い、ダメージを与える方法があるのだから。


「…………バスタァァァァァァァ!」


 形成したサイキックエナジーを殴って照射するアナザーレッドルビー。その一撃は寸分違わず魔人に向かって進み直撃、大爆発する!

 だが、アナザーレッドルビーはサイコバスターが直撃したにも関わらず、大爆発し煙がもうもうと立ち込める先を見つめる。彼女が知る魔人ならこの程度では――。


「……避けて!」


 叫ぶとともに回避行動へ移るアナザールビー。一拍遅れてレオーネもまた同じように回避行動を――。


 ――轟!


 瞬間、煙を切り裂き岩の槍が飛来する。しかもそれは鞭のようにしなり、辺りに破壊を撒き散らす。


「ウソでしょ……!」

「くっ……!」


 いままでなかった新たな攻撃に狼狽するレオーネ。いままで彼女が相手をしてきた敵たちは、あくまで常識的――物理法則に縛られて――な範囲だった。

 まかり間違っても岩を鞭のようにしならせる、などという芸当は行ってきていない。それもまた魔法少女、魔人の芸当といえばそれまでだが、それでも彼女の虚をつくには十分だった。


「――――――!」


 咆哮とともに煙が晴れる。そこには――。


「……なっ、姿が違う?!」

「いよいよ、本番ね……!」


 さきほどまで全身に覆われていた岩の一部が剥がれ――一応、顔は仮面と化した岩、そして胸など急所は岩で覆われている――肩から人間の腕以外に岩で形成された腕が四本。そしてその外側には多数の槍の穂先――しかも、一部は射出され鞭のようにしなっていた槍の正体――が設置されていた。

 それはさながら先ほどまでが防御重視の形態なら、こちらは攻撃偏重の形態で――。


「いきますよ、レオーネさん!」

「……ああ、もう。なにがなんだか! 後で色々説明してもらうからね! 君のこととか!」


 叫ぶレオーネに反応して魔人は槍を射出する。それが第二ラウンド、開始の合図であった。

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