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情報提供とアグの望み

 アグと話した後、早速歩夢に確認の通信を送った秋葉。すると、彼女の予想とは裏腹にトントン拍子で話が進み千草との会談がセッティングされることとなった。


「まさか、こんなに早く出来るなんて……」

「まぁ、話は早ければ早いほどいいもん」


 秋葉にそう言いつつ、なぜこちらがフォローしてるんだろう、と内心首をかしげているアグ。

 それはともかくとして、二人は千草に指定された場所。バルドル司令室へとたどり着く。

 そして扉をノック、しようとしてその前に扉が開く。どうやら、彼女たちが来るのを何らかの方法で監視したいたのだろう。開いた扉の先には歩夢の姿があった。


「ようこそ、待ってたよ。秋葉ちゃん、アグくん」


 歩夢の呼び掛けに顔を見合わせる二人。だが、この部屋に用事があるのは変わりなく、二人はそのまま部屋へと入る。

 すると部屋の奥、執務机には以前と同じく部屋の主である千草の姿が見て取れた。

 二人の来訪を確認した千草は仕事の手を休め――。


「いらっしゃい、二人とも」


 と、にこやかに歓迎する。もっとも、内心ではこんなに早くまた秋葉をこの部屋に呼ぶなんて、という気持ちや、一体なにがあったのだろうか。という疑問を抱いていた。

 しかし、そんなことを考えていても仕方ない。秋葉が――正確にはアグだが――話があるということを告げてきた以上、なにかがあるのは確かなのだ。ならば、いま少しでも情報を得るため会談の場を持つのは有意義である筈。だからこそ千草は歩夢から話が上がってきたとき、二つ返事でオーケーをだした。

 そして、千草は考え通りこの時間を有意義にするため、二人へ話しかける。


「それで、話がある。ということだったけど、いったい何の話かしら?」

「えっと、あの……」


 優しげな口調であるものの、どこか凄みを感じる千草の雰囲気に気圧される秋葉。そんな彼女に変わって、というより本来用事があるアグが変わりに話しはじめる。


「それに関しては、オイラの方から」


 そう言ってアグは秋葉に話したときと同じく魔人と魔法少女の関係性。そして、妖精の国と魔物についても話したアグ。

 彼の話を聞いた後、千草は秋葉から話がある、という要請の意味をいやというほど理解した。


「なるほど、ね……」


 秋葉たちが目の前にいる手前、冷静そうに話を聞いていた千草。しかし、実際には彼女らが目の前にいなかったら頭を抱えていただろう。

 事実、二人の死角となっている場所で歩夢は頭痛をこらえるように額を抑えていた。

 だが、いつまでもそうしている訳にもいかない。それに考え方を変えるとアグからその話が出た以上、彼は否定的立場。つまり、こちらにとって味方と考えて良い訳だ。

 そう考えれば一概に悪い、と判断するのは時期尚早。なにせ、妖精側からの確かな情報源を得た、ということでもある。

 もっとも、それもアグが二重スパイでなければ、という前提がつくが。


「それで、アグさんはなぜ急にこの話を……?」


 結局、いくら心配したところでアグの考えが読めない以上どうしようもない。

 ならば、虎穴に入らずんば虎児を得ず。という考えで千草は問いかける。


「一つは秋葉に問われたから。もう一つは皆、バルドルの人たちにも協力してほしいことがあるんだもん」

「……協力してほしいこと?」


 アグがいう協力してほしいこと。という言葉の真意が分からず、頭に疑問符が浮かぶ千草たち。

 そんな彼女らに改めて説明するため、アグは妖精の国について話す。


「そもそも、なんで妖精たちが魔物という暴力装置を産み出したのか。本来なら力のない妖精が防衛のため、産み出した。と、考えるのが普通だろうけど……」

「……違う、のか?」


 アグの言い草に不穏なものを感じた秋葉。その感じたものを肯定するようにアグは話を続ける。


「そうだもん。魔物や魔法少女、魔人などといったシステムはむしろ他国家を侵略するための戦力として産み出されたもん」

「……は? おい、待てよ。それって――」

「そう、極めて単純にいってしまえば魔物、魔法少女、魔人は兵器ということになるもん」


 アグの説明が流石に斜め上すぎたのか、秋葉は呆然として、千草たちは()()()()()。と言わんばかりに力なく上を見上げる。

 しかし、バルドルの司令官として現実逃避ばかりしているわけにもいかず、千草は疲れた様子で問いかける。


「……つまり、妖精の国はいま戦争状態にある、ということよね? それはこちら側で?」

「違うもん、あちら側。イマジン側での話だもん。そして相手は以前レオーネに話したことのある」

「レオーネちゃんに……?」


 そんな話は上がってきてないけど……。と、訝しむ千草。だが、次の話でそういうことか。と、納得することになる。


「以前話した人間の国。それが妖精の国との戦争に参戦している国だもん」

「それって、もしかして魔導騎士の……?」


 その報告なら確かに受けた覚えがある。まぁ、報告というよりも世間話の体で聞いた話だというのが正確だが。


「そうだもん、そもそも魔導騎士は魔法少女のシステムをもとに人間の国が編み出した技術だもん」

「そ、そう……」


 次々ともたらされる情報に、内心情報量が多い! と、悲鳴を上げている千草。

 そんな彼女をよそにアグは本題へ入る。


「そこで、だもん。実は、一部の魔導騎士には話がつけてあるもん。だから、バルドルの皆にも魔法少女を救出するために協力してほしいんだもん」


 そう言って、頭を下げるアグ。

 そんな彼を見て、千草はどうしたものか。と、頭を悩ませるのだった。

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