合流と帰還
魔物との戦いでアナザールビーとの共闘し、彼女が去ったあと。サファイアとリーフはルビーと合流していた。
「ルビー、そちらは大丈夫だったの?」
「大丈夫、大丈夫。わたし怪我してるように見える?」
にやり、と、おどけたように笑顔を浮かべるルビー。
そのことに安堵を覚えるサファイアだったが、それ以上にルビーの機嫌が良いことに気付く。
「貴女、なにかあったの?」
「え、えっと……。なんの話……?」
問いかけたサファイアに対し、ルビーの反応は顕著だった。
あきらかに狼狽し、目が泳いでいた。
付き合いの浅いリーフですらなにかあった、と理解できるほどに挙動不審であった。
あまりにも分かりやすいルビーを見てため息をつくサファイア。
「はぁ……」
「ちょっと、流石に失礼じゃない……?」
あからさまなサファイアの様子に、頬をぴくぴく、と痙攣させるルビー。心なしか額にも怒りのマークが浮き出ているように見える。
「それで? 今回はどんな無茶をしたんです?」
「無茶なんてしてないし! ただ、チカくんに良いとこ見せよう、と……。――あっ」
思わず口を滑らせたルビーは、しまったとばかりに口に手を当てる。しかし、その行動は既に遅く、彼女の言葉を聞いたサファイアは聞き捨てならないとばかりに問い詰める。
「なぎさ! やっぱり貴女無茶してるじゃない!」
「ちょっ、サファイア先輩。ストップ、ストップ!」
無意識だったのだろう。ルビーの本名である渚の名前を出して詰め寄るサファイアをわたわた、と慌てて止めるリーフ。
「ここで名前呼びはまずいですって! 先輩、落ち着いて。いや、マジで!」
「……そう、ですね」
あまりに慌てふためくリーフを見て、逆に冷静さを取り戻したサファイアは深呼吸し、改めてルビーに話しかける。
「ともかく、そのことについては司令の前で話してもらいます。こちらも報告を入れないといけないことがありますので」
サファイアが告げた言葉にルビーは少し顔色を悪くする。
「えっと、やっぱり言わなきゃダメ?」
「当たり前です! ほら、行きますよ」
そのままサファイアは、ルビーの首根っこをむんずと掴む。
「――ぐぇ! ちょっ、ちょっ。サファイア、タンマ!」
結果として首を絞められたルビーは抗議の声を上げるが、それが聞き入れられる筈もなく――。
「サ、サファイア先輩! ルビー先輩の首絞まってる、絞まってるから!」
リーフが先ほどとは別の意味で顔色が悪くなりはじめているルビーを救助するべく、サファイアへと駆け寄るのだった。
「それで、そんなことになってたのね」
場所は変わりバルドル司令官の私室。そこに集まっていたヒロイン三人と司令である千草、そして歩夢。即ちいつものメンバーたちはそれぞれ異なる表情を見せていた。
ある意味原因となった渚はどことなく申し訳なさげに顔を歪め、霞は眼光鋭く渚を睨み、秋葉は疲れでくたくたになった姿を見せ、そんな三人を千草と歩夢は苦笑いを浮かべ見つめている。
そんな彼女らにまた別の人物が声をかける。
「まぁまぁ、かすみちゃん。落ち着いて、ね?」
「ですが、レオーネさん!」
いつものメンバーとは違う最後の一人。それはレオーネであった。彼女はなおも言い募ろうとする霞を手で制しながら声をかける。
「まぁまぁ、なぎさちゃんが好きな人に良い格好したい、ってところは君も分かるでしょ?」
「それは、まぁ……」
歯切れ悪く肯定する霞。と、いうのもバルドルで盛周の正体。バベル大首領だということを知っているのは渚、霞、千草、歩夢の4人だけであり、秋葉とレオーネは正体を知らない、とされている。
もちろん、実際はレオーネはバベル四天王の一人であり正体を知らない、というのはあり得ないのだが、そんなことをバルドルメンバーが知る由もない。
ともかく、本当に盛周の正体を知らないのは秋葉だけであった。
「ま、ともかく。なぎさちゃんは盛周くんを守ったんだから大金星じゃない?」
「「それは……」」
レオーネの言葉を聞いて声を濁らせる二人。実際にはパワードスーツで思いっきり暴れることのできる盛周のことを言うわけにもいかず、歯切れの悪いことになっていた。
もちろん、レオーネもそのことは知っていたが、自身とついでに秋葉は正体を知らない――秋葉は本当に知らない――ことになっており、それを補強するためにあえてそう言ったのだ。
「それにボクもそのときは現場にいなかった訳だし、そのことをとやかく言える立場じゃないし……」
「それは、まぁ。仕方ないんじゃない? レオーネちゃんはあの時、別のところにいたんだし」
そうレオーネにフォローを入れる千草。彼女が言うようにあの時レオーネは、とある用事で政府の方へ顔を出していた。
「まぁ、それはそうなんだけど、ね? ――ともかく、そういう訳だから、ボクにも聞かせてもらえる? 特にかすみちゃんたちが会ったもう一人のなぎさちゃん辺りについて詳しく、ね?」
そうレオーネは、霞に優しく問いかけるのであった。