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彼女たちの願い

 孤立したアナザールビーに殺到する魔物たち。それを彼女は裏拳を、肘打ちを、蹴りを叩き込み、ときには突っ込んできた魔物を近くの魔物に投げつけることで見事に立ち回ってみせていた。


「すご……」


 アナザールビーの舞踏とも言えそうな見事な立ち回りを見て、リーフは感嘆の声をあげる。それに対しサファイアは、彼女の立ち回りを見て苦々しい顔をする。


()()無茶をして……!」


 彼女の立ち回りを見て、サファイアは間違いなくあの娘はレッドルビー。親友の真波渚と同一人物だと確信した。

 なにせ、彼女の自らを危険にさらして仲間を守るのは、もはや癖のようなものだからだ。

 それもある意味仕方ないと言えばそれまでだ。なぜなら彼女はブルーサファイアが、南雲霞が仲間入りするまで一人でバベルという組織と戦っていたのだ。

 一応、警察機構や自衛隊という味方がいることはいたが、それでもその二つは戦闘員クラスと戦うのが精一杯で怪人の相手は夢のまた夢。

 足手まとい、とまで言わないが力不足は否めなかった。


 そのことが彼女の戦闘スタイル。即ち、自らを囮としてヘイトを稼ぎ味方を守りつつ敵に対応する、というスタイルを確立させていった。

 むろん、そんなことをすれば彼女自身の怪我への危険度も跳ね上がるが、それでも生身の人間が怪人と戦えばどうなるかなど想像に難くない。

 そして、それを是としたくないルビーに選択肢などはじめからなかった。


 だが、今はサファイアもリーフもいる。そんな状況でそんなことをする必要はない筈だ。

 にも拘らずアナザールビーは当て付けのようにそんな行動をとっている。

 それにサファイアは憤慨していたのだ。


「あのおバカ……!」


 サファイアはブルーコメットをライフルへ変形させ三点バースト!

 発射された弾は寸分の狂いもなくアナザールビーの背後を取ろうとした魔物に吸い込まれ吹き飛ばす!

 その時、サファイアは確かに見た。一瞬ではあるが、アナザールビーがにやり、と薄く笑ったのを。


 それを見て、彼女のなかで再び怒りが募らせる。だってそうだろう?

 あのルビーは、無茶をすればサファイアが必ずフォローを入れる。と理解した上であえて無茶をしていたのだ。

 サファイアからすれば信用されているとも取れるし、体よく利用されているとも取れる。

 それが調子に乗ったときのルビーらしくて腹立たしいのだ。


 まるで彼女が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのように楽しげに、だ。

 一体、彼女の相棒の筈の私は何をやっているのか!

 見当たらない、恐らく未来の自分自身に憤るサファイア。

 しかし、そんなことをやってる暇はない。彼女はいまだ呆然としているリーフに檄をとばす。


「リーフ! いつまでもぼうっとしてない! いきますよ!」

「お、おうっ! ごめん、サファイア先輩!」


 サファイアによる突然の言葉にびく、と身体を震わせたリーフは反射的に謝りながら行動に移る。

 それを見ながら、サファイアもまた援護のためブルーコメットを構えるのだった。






 二人のやり取りを聞いていたアナザールビーは無意識のうちに、にやり、と口角が上がる。

 以外と突っ込み気質のサファイアと、姉御肌ながらちょっと天然なきらいのあるリーフのやり取りを聞くのはずいぶんと久しぶりだったからだ。

 その懐かしさから、彼女は()()()()()()()()()()嬉しくなるのも無理なかった。


「……本当に、懐かしい」


 彼女の記憶にある懐かしく、楽しかった記憶たち。ありし日の仲間たちとの記憶。

 そして、もはや手に入ることのない日常の記憶。彼女は、アナザールビーからすればそれを守るため、この場にいるのだ。


「こんどこそ、わたしは――」


 アナザールビーの脳裏には自身の想い人の顔が――。



 ――お前さえ、渚さえ生き残ればきっと……。



「……違う」


 アナザールビーは悔しげに歯を食いしばる。

 わたしじゃなくて、()()()()こそが生き残るべきだった。

 彼が生き残れば、きっと――。


 ――さて、なぎさくん。覚悟はいいかい?


 自身をこの()()に送ってくれた大恩ある彼女。仲間たちのなかで唯一の生き残りであった()()さん。

 きっと彼女の命も、もう……。


 だからこそ、アナザールビーはなんとしても成し遂げないといけない。彼女たちの、そして自身の願い。池田盛周を生き残らせるという願いを。

 そのために彼女はこの時代に帰って来たのだから……。

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