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バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~  作者: 想いの力のその先へ
第一部 バベル、再興 第一章 バベル、新生
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情報

 盛周と奈緒が研究室で会合してから数日後。彼の姿は再びバベルの本拠地の中にあった。

 しかし、その場所は以前四天王たちと会った部屋でも、ましてや奈緒の研究室でもなくモニターや計器類が各所に設置され、それぞれに担当する構成員が操作するための席まで用意された、端的に言えば司令室とでも呼ぶべき場所だった。


 その部屋の中で盛周は一番高所にある席。それこそ創作もので分かりやすいもっとも位の高い者が座る、いわゆる司令席に座っていた。

 そこで盛周は眼下を見据えながら口を開く。


「さて諸君、用意は万全か?」


 彼の言葉に構成員たちは一様に肯定の返事を返す。彼らの返事に満足そうに頷いた盛周は、部下たちへ号令を出す。


「それでは作戦を開始する。各員の健闘を祈る!」


 盛周の言葉とともに構成員が計器を操作してバトロイドたち、そしてガスパイダー、サモバットに続く第三の怪人が出撃する。

 即ちバベルの新たなる襲撃、攻撃計画の開始。その合図であった。






 一方その頃、バベルと敵対関係にあるバルドル基地の一室にて、渚が心底つまらなそうに机に頬杖をついて不貞腐れていた。


「……うぅ――。つまんないっ、つーまーんーなーいぃ」


 そう言ってぶぅぶぅと頬を膨らませている渚を、近くに座っていた霞は困った顔をして見つめていた。


「ほら、なぎさ。あまりそう言うことは言わずに……」

「むぅ、だってぇ……」


 なんとか彼女をなだめようと声を掛ける霞に不満をぶちまける渚。そこには正義のヒロインではなく、一人の少女としての姿があった。


「学校が休みなのはまだ仕方ないよ? でも、ずぅっと基地に缶詰でチカくんに会えないんだもんっ!」


 不満をぶちまけるように机をバンバンと叩いた渚だったが、すぐに力尽きたかのようにへなへなと机に突っ伏す。

 それを見て苦笑を浮かべる霞。

 その時、彼女たちが待機している部屋の扉がかしゅ、と空気の抜ける音とともに開く。

 その音に気付いた霞は扉の方へ振り向く。そこには――。


「ごめんなさいね、なぎささん。でも近日中にバベルが動くかもしれない、という情報が入ったのよ」

「千草さぁん……」


 彼女らの待機室、そこに現れたバルドル司令の千草。彼女の声を聞いた渚は、完全に気合いが抜けた顔とともに情けない声を上げる。

 そんな彼女の顔を見て、霞と千草母娘はお互いの顔を見合わせ苦笑する。


 本来、バルドル司令として千草は彼女を叱責するべきなのだが、どうしてもそうする気になれなかった。

 彼女、渚が幼馴染みの男の子に恋心を抱いているのは千草も知るところであるし、何より彼女自身も渚や、本人は隠しているつもりであろう霞が恋い焦がれている池田盛周、という少年と交友を深めることに積極的なのは好ましい、と感じているからだ。


 そもそも、バルドルの活動にしても未成年である渚や霞――なお、霞に関しては、バルドル内でも意見が別れることがある――の力に頼りきるのではなく、本来は大人たちだけで解決すべき、という考えだ。

 それは千草一人の考えではなく、ほぼバルドルの総意と言って良い。

 むろん、それは彼女が役に立たない。などといった理由ではない。


 そも、バルドル自体もともと政府主導の、言ってしまえば自衛隊や警視庁などと同じく国家を、国民を守るための組織なのだ。

 それなのに現状で言えば民間人。言い換えれば善意の協力者である渚と霞におんぶにだっこの状況。

 正常な感性を持つ大人であれば、そんな現状。忸怩たる思いで見ているのは想像に難くない。

 もちろん、千草もその一人である。特に千草は養子縁組した霞を溺愛している関係で、その想いは人一倍強い。


 だが、彼女はそれでも大人の一人。国家の、国民の守護者。バルドルの司令なのだ。

 だからこそ、国民を守るためにあらゆる手を打たなければならない。それが例え己にとって恥であっても――事実、かつて過去の偉人が言った、|武者は犬ともいへ《上に立つものは犬と言われても》、畜生ともいへ(畜生と言われても)、|勝つ事が本にて候《勝つことこそがもっとも重要である》という言葉もある――もっとも効率的であるならば採用せざるを得ない。

 自身の自己満足のために、大多数の無垢なる、無力たる人々を危険に晒す訳にはいかないのだから。


 そして、さらに言えばある程度の訓練を受けているとはいえ、渚はやはり民間人。

 どうしても怪人との戦い(命の奪い合い)で多少なりともストレスを抱え込んでしまう。

 そのストレスの解消。清涼剤として好きな男の子(池田盛周)との交流を是非ともしてもらいたいのだ。何よりも彼女自身のために。


 だから千草は注意をするつもりも、そもそも資格もありはしないと思っている。


 そんなことを考えている千草。

 そして千草の考えを見透かしたのか、どことなく心配そうな顔で義母を見つめる霞に、その二人を見て不思議そうにしている渚。

 三者三様の変な空気が辺りを満たすが、その時――。


 ――けたたましいサイレンの音が鳴る。


 それは、バベル襲撃を関知した警報だった。


 その音を聞いて渚は本当に来た! とばかりに驚きの、霞は情報の通りに襲撃が起きたことに対して、()()()()()を抱いて立ち上がる。


「義母さ――南雲司令」

「ええ、そうね……」


 そして霞が感じた疑念。それは千草自身も感じていた。しかし、今はそれに注力している状況でもなし。千草は渚と霞、二人に声を掛ける。


「二人とも、お願いできる?」

「はいっ!」

「もちろんです」


 二人の返事を聞いた千草は、一度深呼吸をする。そしてバルドル司令として命令を下す。


「では、レッドルビー、並びにブルーサファイア出撃! ――襲撃してきたバトロイド及び怪人を撃退します!」


 その号令に二人は――。


『――了解っ!』


 そう言って部屋から駆け出していくのであった。

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