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魔導騎士と契約の秘密

 模擬戦終了後、ことの次第を把握した歩夢に、レオーネとアグは医務室でしこたま怒られることになってしまった。

 模擬戦を行った部屋に対する修繕はもとより、秋葉に対して、気絶させるまで無茶をさせ過ぎたのだから当然の処置であった。

 もっとも、近くに気絶した秋葉がいたことで長時間の説教まではなかったが、その分、濃度がすさまじく、歩夢から解放されたレオーネは完全に脱力して机に突っ伏していた。


「はぁ……。やっと、解放されたよぉ」

「こっちもだモン。……オイラ、なにもやってないのに」

「あはは、ご愁傷さま……」


 黄昏るアグに、レオーネは乾いた笑みを浮かべる。

 今回のことで言えば、確かにアグはとばっちりだった。

 もっとも、模擬戦自体は彼も賛成していたことから完全に無関係とはいえなかったが……。

 そんな様子で仲良く話していた二人。そこでレオーネは今が好機だと気付く。


(今なら秋葉ちゃんは眠ってるし、彼から話を聞けるかも……。なら!)


 そこまで考えたレオーネは、真剣な様子でアグに話しかける。


「ねえねえ、アグくん?」

「……? どうしたんだもん?」

「ちょっと、きみにいくつか聞きたいことがあったんだよね」


 レオーネの話を聞いて、不思議そうに首をかしげるアグ。

 今まで千草や歩夢、渚などからはそう言うことがなかったから不思議に思っているのは明白だった。


「何を訊きたいんだもん?」

「えっと、ほら! きみらの世界のこととか、他にも魔法少女のこととか!」

「……なるほど、だもん」


 レオーネが言ったことに一定の理解を示すアグ。そして彼は自身の世界。イマジンについて話し始める。


「それなら、まず簡単なことから。オイラたちの世界は、科学が発展したこちらの世界とは違って魔法。いわゆる神秘が発展した世界だもん」

「……神秘って言うと、やっぱり精霊とか、神様なんかもいたり?」


 レオーネの質問に、アグは少し考えた素振りを見せると、一部否定する。


「こちらの世界も昔は神様たちがいたけど、今は自分たちの世界に引きこもってるもん」

「引きこもる?」

「この国の神話に天岩戸伝説ってのがあるもん? それと同じようなものだもん。ただ、それと違うところがあるとすれば……」

「あるとすれば?」

「こちらの神様たちは引きこもったまま、だってことだもん」


 確かに天岩戸伝説では最終的に引きこもった神、天照大御神は外へ出ていた。

 まぁ、そもそもその伝説を知らなかったレオーネはそうなんだ。と、頷いているだけだったが。


「ともかく、そういうことでオイラたちの世界でも神様、そして神様のお世話役として精霊たちは別世界にいるんだもん」

「ふむふむ。でも、そうなるとアグくんたちは妖精なんだよね? きみらは神様たちに着いていかなかったの?」

「……そうだもん。オイラたちはイマジンで妖精たちの国を作って、そこで暮らしてたんだもん」

「妖精たちの国、ね……」


 アグが語る妖精たちの国に興味を引かれるレオーネ。それはつまり、異世界では他の種族の国家群も存在し得る、という証左に他ならなかったからだ。

 なぜなら、妖精たちが他種族と共生しているならわざわざ妖精たちの国、と強調する必要などないし、そういった例えをした以上他種族の国家があるのは確実になる。

 そこを突っ込むべくレオーネはさらなる質問をする。


「他にどんな国があるの?」

「…………あちらにも人間たちの国があるもん。そこでは魔法少女たちとは別に騎士、こちら側に解りやすく言えば魔導騎士。マギウスナイツがいるもん」

魔導(マギウス)騎士(ナイツ)……。魔法少女たちとは違う存在」


 アグが語る魔導騎士という新たな存在。それを聞いたレオーネの目の色が変わる。

 もしかしたら、それらの存在がバベルの、盛周の障害になるかもしれないのだから無理もなかった。


「……特にあの国では力の強い魔導騎士が三人いるもん」

「そう、なの?」

「うん、攻めを得意とする剣の魔導騎士。守りを得意とする槍の魔導騎士。そして、その二人を指揮する弓の魔導騎士。その三人がチームとなって行動してるもん」

「よく、知ってるんだね……?」


 まさか、そこまでの情報をもらえると思っていなかったレオーネは目を丸くして驚いている。

 彼女も情報が武器になることぐらい理解している。だからこそ、アグがある程度情報を秘匿する可能性は考慮していたし、それをどうやって聞き出すか頭を悩ませていたのだが……。

 アグがここまで情報に無頓着なら、さらなる情報を聞き出せるかもしれない。そう考えたレオーネは、さらに疑問を抱いていたことを口にする。


「でも、そんな魔導騎士がいるなら魔法少女は要らなくない? なんで、わざわざこちらで契約してるの?」

「それは……」


 そこで初めて言い淀むアグ。そのことで何らかの秘密があるのを理解したレオーネはさらに言い募ろうとして――。


「……やっぱり、知らなかったもんね」

「知らなかった……?」

「オイラたちがこちらの世界で契約する理由。それは――」


 その話を聞いたレオーネは再び驚き目を見開く。それは彼女自身にもある意味関係のあることだったからだ。

 そして、アグとの話が終わったあと、彼女はその事実を伝えるため、バルドルの面々に悟られぬように静かに、そして急ぎながらバベルへと帰還することになったのだった。

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