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レオーネの小手調べ

 レオーネは秋葉を連れ立って、かつて渚と霞。二人と模擬戦を行ったエリアへと移動していた。


「よっし、それじゃやろうか?」


 レオーネは身体をほぐすように屈伸しながら秋葉へ話しかける。


「ほら、秋葉ちゃんも準備して」

「え、ええ……? えっと……。――変身!」


 終始レオーネに押されっぱなしだった秋葉は、しどろもどろになりつつも変身する。

 東雲秋葉から魔法少女-オーラムリーフに変わった彼女は、からだの調子を確かめるように手をにぎにぎ、と開閉する。

 そして、彼女は以前から感じていた疑問をレオーネに投げかける。


「えっと……。レオーネさんは、その……。変身とかは――」


 秋葉が感じていた疑問。それは唯一レオーネのみが他のヒロインたちと違い、活動時において変身というプロセスを挟まないこと。

 即ち、生身で戦っているのか、ということ。

 そして、その疑問をレオーネは――。


「あっははは、そんなの。ボクは昔からこのままだよ?」


 ――肯定、彼女は昔から生身で活動していたことを告げる。

 事実、彼女が最強のヒロインと称される理由。それは彼女自身が持つ身体能力に由来する。

 もっとも、それ故に彼女は大多数の敵からなる遅延戦闘。いわゆる持久戦、長期戦に弱いという弱点を持つ。

 だからこそ、彼女相手に偶然とはいえ弱点をついた秘密結社は彼女を撃破。捕囚にすることに成功した。まぁ、その最後はレオーネに対するやり方に激怒した盛周、バベル大首領の手によって壊滅させられた。

 それ以降、レオーネはヒロインとバベル四天王という二足のわらじを履いて活動している。


 もっとも、そのことを知らない秋葉は、己の身体能力だけで最強と言われるまでに至ったレオーネに感嘆する。


「ふへぇ……」


 果たして秋葉がレオーネと同じ立場だったとして、彼女の高みへ至れるのか?

 まず不可能だと思う。なにせ変身、魔法少女になった状態でもバベル怪人。エレキクラーゲン相手に苦戦したのだ。

 その状態でレオーネと同じように戦える、と自惚れるのは流石に無謀すぎる。

 だから、今は自身の腕を磨くしかない。そして、レオーネがその相手を買って出てくれた。ならば、秋葉がすべきことは一つ。


「レオーネさん……。よろしくお願いしますっ!」


 秋葉、オーラムリーフは深々と頭を下げると、拳に炎をまとわせファイティングポーズを取る。

 端からレオーネに勝てると思ってはいない。それでも、彼女との戦いは間違いなく自身にとって糧となる。

 その程度のことは彼女にも理解できた。だから――。


「……いきますっ!」


 彼女はレオーネに向けて吶喊する。そんな秋葉を、レオーネは眩しそうに見つめつつ、得物のデスサイズを構えるのだった。








「や、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――!!」


 気合いの咆哮とともに、拳で殴りかかるオーラムリーフ。そんな彼女の一撃をレオーネは悠々といった様子で躱す。

 流石にフェイントもなにもない、素直な一撃に当たってやるほど彼女も甘くない。それどころか――。


「よっ、と……」

「うわわっ――!」


 躱す際、オーラムリーフの足元へ引っ掛けるような形でデスサイズを――刃が当たらないように気を付けつつ――置く。

 それに引っ掛かったオーラムリーフは、転けそうになるのをこらえるようにたたらを踏む。しかし、そんな隙を逃すほどレオーネは甘くなかった。


「はい、残念っ――」

「……げふぅ!」


 彼女の隙だらけな背中。そこにレオーネはどん、と足蹴にすることでなんとか堪えていたオーラムリーフはびたん、と前のめりに倒れ込む。


「あ痛たたたぁ……」


 真正面から倒れることになったオーラムリーフは倒れ、打ち付けられた衝撃で赤くなった鼻の頭を抑えて涙目になっている。

 しかし、次の瞬間――!


「…………っ!」


 オーラムリーフの背中へ走った、猛烈に嫌な予感。それに突き動かされるように転がり避ける。

 そして、その予感は正しかった。彼女が先ほどまでいた場所にレオーネのデスサイズが突き刺さっていたのだから。

 それを見て、顔を青ざめるオーラムリーフ。もし回避が間に合わなかったら……。

 その結果が容易に想像できたから。


 そんなオーラムリーフをよそに、レオーネはデスサイズを床から引き抜くと、頭上で汚れを飛ばすようにぐるぐると回すと肩に立て掛ける。

 その顔は心底つまらなそうな様子で、明らかに期待外れといわんばかりに不満げであった。


「……まったく、いくら訓練だからって。ううん、訓練だからこそもうちょっと真剣にやってほしいんだけど」

「うぐっ……」


 レオーネの呆れたと言わんばかりの突っ込みに、オーラムリーフも思うところがあったのか口ごもる。

 確かに、彼女自身レオーネから指導を受けられる、ということで無意識に舞い上がっていた。それは確かだ。

 そしてそれが彼女から冷静さを奪い、行動が単調になる要因にもなっていた。


 そんな失態を見せつける形になったオーラムリーフは、己の行動を恥じるとともに――。


「……これ以上、恥はさらせないよな。なら、ここからは本気の本気でっ! ――ファイア、ブレイド!」


 己が得意とする魔法、炎の剣を生み出した。その彼女の瞳はぎらぎらとした好戦的な色を浮かべている。

 それを見たレオーネもまた――。


「それじゃあ、ここからが本番、だね!」


 再びデスサイズを構え、オーラムリーフを見つめるのであった。

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