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調査のため、たった一つの冴えたやり方?

 盛周から指令を出されたレオーネは、結局とんぼ返りでバルドル基地へと戻ることになった。

 そのこと事態に不満はないレオーネ。しかし――。


「あのぬいぐるみについて調べろ、と言われても……。まぁ、ご主人さまの命令だから頑張るけどさ」


 そもそも、レオーネとアグ。というよりも秋葉とそこまで親しくしている訳でもないため、どうやって調べたものか、とうんうん唸って頭を悩ませていた。

 と、いうのもレオーネからすると、秋葉はどうにも、渚、霞はともかく、こちらに壁を作っているきらいがあるのだ。

 そう感じていたレオーネの感性はある意味正しい。確かに彼女、秋葉はレオーネに対して他人行儀で接することが多々ある。

 しかし、レオーネは気付いていなかったが、それは別に秋葉が彼女を嫌っていたからとか、そんな理由ではなかった。


 ただ秋葉は、自身の女っぽくない性格や、自己評価が低く卑屈になっていたことから、きらびやかに活躍する彼女らを羨んで、重度のヒロインオタクを拗らせていた。

 そしてレオーネは、バウンティハンターとも称され、多くの者が認める最強格のヒロイン。そんな人にアタシが話しかけるなんて恐れ多い、と恐縮していたのだ。

 まさかレオーネもレオーネで、秋葉がそんな考えを抱いているなど夢にも思っていなかった。

 そもそも、レオーネはヒロイン家業をあくまで金稼ぎの手段で行っていただけで、世間の評価については無頓着だった。精々、評判が良くなればもっと金が稼げる、その程度の意識で、だ。

 まぁ、そこら辺りの意識の違いに関しては、もともと孤児で明日食う食べ物にも事欠く有り様だったレオーネと、家族とともに平穏無事に暮らしていた秋葉という、環境の違いから来るものであるから仕方ない。

 もっとも、そんなことはレオーネに関係ない話だし、彼女自身、はいそうですか。と納得するつもりもない。

 あちらが壁を作るのなら、それをぶち壊して仲良くなれば良いだけの話。ならば、どうするか?


「渚ちゃんたちに仲介を頼む……? なんか、それはそれで負けた気がして嫌だなぁ……。うぅん、ならやることは一つ、かな?」


 ヒロインの先輩と後輩。その間柄でやるとしたら特訓しかないだろう、と意気込むレオーネ。

 こと、他の人間との交渉であればそれなりに場数をこなしていたためそれなりに様になるのだが、逆にヒロイン同士、同僚相手になると急にポンコツ、脳筋になるのがレオーネというヒロインであった。






「――と、いうわけで少ぉし顔を貸してくれない。秋葉ちゃん?」

「……なにが、というわけで?!」


 バルドル基地内部、貸し出された私室でゆっくりしていた秋葉は、唐突に現れたレオーネの言葉に絶叫する。

 そんな秋葉にレオーネは、訳が分からないとばかりに首をかしげる。そのレオーネの様子に、え、アタシの方がおかしいの? と、一瞬考え込む秋葉だが、どう考えてもおかしいのはレオーネの方だ。

 秋葉自身も同じ結論に達し、せめてなぜレオーネが唐突にこんなことを言い出したのか問いかける。


「あの、レオーネさん? 急に、どうしたん……ですか?」

「そう、それなんだよっ!」


 ……どれだよ!

 秋葉の心の中から発せらせた絶叫。

 もっとも、それがレオーネに聞こえる訳もなく、彼女は話を続ける。


「どうにもボクと秋葉ちゃんって、あんまり関わることないじゃない?」

「……はぁ、まぁ。そう、ですね……?」


 レオーネの言い分を聞き、曖昧に頷く秋葉。そもそもヒロイン成り立ての秋葉と、レジェンドとも言えるレオーネでは天地ほどの差があるでしょう、と内心突っ込みをいれている。

 まぁ、だからと言って渚と霞。二人が近い立場か、と問われるとそういう訳ではなく、彼女らの場合は同じ学生――中学生と高校生という違いはあるが――なのだから、ある程度接しやすいというのがある。


「だからさぁ……。二人の親睦を深めるために――」


 そう言ってにんまり笑うレオーネ。

 秋葉もまた、レオーネのそんな様子に遊びにでも誘ってくれるのかな? と考えていたのだが……。


「――模擬戦、しよ?」

「……なんて?」


 思わず聞き返してしまった秋葉。

 脈絡が無さすぎるし、なぜ親睦を深めるために模擬戦なのか、意味が分からなかった。

 そこをするなら、普通はどっかでショッピングやお茶会なんて選択肢があるはずなのに模擬戦。

 控えめに言って、秋葉からすると本当に意味不明だった。

 しかし、レオーネからすると反応が予想とは違っていたようで――。


「えぇ、何が不満なの?」

「いや、不満もなにも……」


 まず、意味が分からない。それが秋葉の偽らざる気持ちだった。

 そんな二人の合間を取り持つように、アグが秋葉に語りかける。


「秋葉。彼女はきっと、秋葉に訓練をつけてくれるつもりなんだもん。秋葉だって強くなりたいなら、今回の誘い、逃す手はないもん」

「……あぁ、そういう。確かにそう考えたら――」


 アグの指摘に、秋葉は考え込みながらレオーネを見る。

 レオーネはにこにこ、と笑いながらこちらを見ていた。


 ……確かに、最強格のヒロイン。バウンティハンター-レオーネ手ずからの訓練。これを逃す手はない。

 それに、そうでなかったとしてもあちらから歩み寄ってくれたのだから、ここで恐れ多いと身を引くのは逆に失礼だ。

 それにうまく行けば、彼女と仲良くなれる訳だし、秋葉としても断る理由はない。さらに言えば、サインだって貰えるかも……。


 最後の方で少し欲望が漏れだしたが、そんな役得があっても良いよな。と、秋葉は一人うんうん頷くと……。


「分かりました。模擬戦、よろしくお願いします、レオーネさん」

「うんっ、それじゃ早速行こう!」

「……ひぇっ」


 秋葉が了承の返事をすると、レオーネは嬉しそうに彼女の手を取る。

 ある意味、推しから急に手を取られると思わなかった秋葉は情けない声をあげる。

 そんなことはお構いなしに、レオーネは秋葉を連れだって模擬戦をするため、部屋を出るのだった。


「……ちょっと、オイラを置いてっちゃダメだもん!」


 ……本来の目的であるアグを置き去りにして。

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