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バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~  作者: 想いの力のその先へ
第二部 魔法少女オーラムリーフ 第一章 魔法少女、始めました
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もう一人の『  』

 バベルの怪人、ガスパイダーとサモバットを吹き飛ばし、その場から離れた彼女。

 ガスパイダーとサモバットは吹き飛ばされた衝撃でゴロゴロと転がる身体を無理矢理止めると立ち上がる。


「己ぃ、貴様。なぜ我らの邪魔をする!」


 立ち上がり、目の前にいる人物に憤るガスパイダー。それもある意味道理だ。

 前回はバベルに協力しバルドルと敵対したくせに、今回はその逆を行う。

 あちらにふらふら、こちらにふらふら。サモバットではないが、まさしく蝙蝠ではないか。

 だが、詰められた彼女にはまるで効果はなく、それどころか飄々とした返しまでぶつけてくる。


「……言った筈だよ。あの娘をやらせるわけにはいかない、と」

「それが大首領のご指示であってもか!」


 以前、彼女のした行動から、彼女が大首領。盛周に対して何らかの感情を抱いている。そう理解していたガスパイダーは、そのように詰め寄る。

 その言葉に一瞬口ごもる彼女だったが、フードの奥に見える唇をきゅ、と引き締めると肯定するようにガスパイダーへ答えを返す。


「そう、だよ。たとえ彼の願いであろうとも見過ごす訳にはいかない。……あの娘はこれから必要になる人だから」


 拳を引き絞り構えを取る目の前にいる人物の言葉に、ガスパイダーは彼女が間違いなく単独。あるいは仲間がバベルに潜入していないことは確実、と確信する。

 なぜなら、彼らが今回大首領。盛周から受けた指令は新たに現れたヒロイン、魔法少女オーラムリーフの戦力評価であり、()()()()()()()()()()()

 そして二人は、もしエレキクラーゲンが先走るようなら力付くで止めるためのストッパー役として同行していた。

 もし、目の前の人物がそれを理解していたのなら、逆にオーラムリーフを危険にさらす愚行をしていることとなる。

 ゆえにガスパイダーは、彼女が大首領に何らかの、正の感情を抱きながらも内部には詳しくない、と判断したのだ。


 だが、同時にそのことを彼女へ説明しても意味がない、とも感じていた。

 なにせこの場では、バベルと敵対してしまったのだ。こちらの説明を受けたところで鵜呑みしないだろう。

 それに、仮に鵜呑みにし掌を返したとして、今度はバルドルに不信感を植え付ける結果となる。

 彼女がオーラムリーフを助けるように動いた以上、バルドルにも何らかの想いを持っているのは確実。

 その上で信用――されているかは別として――を失うような真似は出来ない筈だ。ならば、どちらにせよこの場では敵対して戦うしかない。


「……ままならぬものよ。行くぞ、サモバットよ!」

「おお!」


 そして二人の怪人は目の前の彼女へ襲いかかる。

 それを彼女もまた迎え撃つのであった。





「そうら、行くぞ!」


 最初に動いたのはガスパイダー。

 彼は挨拶代わり、とばかりに糸を目の前の戦士へ吐き出す。


「無駄だよ!」


 彼女はガスパイダーならそうする、と理解していたのかPDCらしき籠手越しに力場を形成すると、それを鋭利な刃物のように尖らせ切り裂く。

 しかし、この場にいるのはガスパイダーだけではない。

 サモバットは飛翔すると、今度は超低空飛行に変更し、硬質化した翼で引き裂こうとする。


「これで――!」


 その時、サモバットにぞくり、と背筋が冷える感覚が流れる。

 このまま突進すれば間違いなくやられる。

 そんな直感を感じたサモバットは緊急上昇。

 その直後、先ほどまでサモバットがいた場所に光の奔流が走る。

 そして、その先には拳を振り抜いた彼女の姿。

 それでサモバットは先ほどの光の奔流が、レッドルビーのサイコバスターと同質のものであったと理解する。


「ぬぅ、だが――!」


 上空に逃れたサモバットは戦士に向かって熱光線を放射。彼女もサモバットがそうすることを予測していたのか、バックステップすることで躱す。

 そして彼女は着地する際、なぜか脚を力強く地面へ踏み込ませる。

 亀裂が走り、割れるコンクリート。その亀裂の間から何かが出てくる。

 それを見たガスパイダーとサモバットは驚愕の声をあげる。それは、本来はここにある筈のない、あり得ないものだったから。


「「ブ、ブルーコメットだと――!!」」


 彼女が手にしたもの、それは二人が言うように、本来ブルーサファイアの主武装である筈のブルーコメットであった。

 そして、サモバットは驚きのあまり、一瞬とはいえ動きを止めてしまう。


 ――それが致命の隙となった。


「はあぁぁぁぁぁぁぁっ――――!」


 彼女は手にしたブルーコメットを槍に変え、サモバットへ投てきする。

 驚愕に固まっていたサモバットは、ブルーコメットが投げられたことでようやく正気に戻り、回避しようとするが間に合う筈もなかった。


「ぐ、ああ……!」


 深々と突き刺さるブルーコメット。それは的確にサモバットの動力部を貫いていた。


「だ、大首領に、栄光あれぇ――――!!」


 ――動力部を貫かれたことで大爆発を起こすサモバット。

 それとともに彼に突き刺さっていたブルーコメットは回転しながら地面に落ちて突き刺さる。

 ガスパイダーは撃破され、大爆発を起こした相棒を見て叫ぶ。


「サ、サモバット――! 己ぇぇ!」


 そのまま下手人である彼女を見るガスパイダー。

 しかし、そこで彼は明確な隙になるということを理解しながらも、再び驚愕に包まれる。

 先ほどサモバットが起こした大爆発でいつの間にか、彼女の姿を隠していたフードが捲れ、素顔をさらしていた。

 そして、その素顔に彼は見覚えがあった。

 いや、あったどころではない。なぜなら、その顔は多少成長が見られ、同時に古傷のようなものが刻まれているものの、間違いなく彼女は――。


「き、貴様は……。レッドルビーだとぉ!」


 そう、少女から淑女に成長しているものの、その顔はまさしく彼らの怨敵。超能力戦士であるレッドルビーのものであった。

 そして、それが今回彼が最後に見た光景。


「ふっ……!」

「しまっ……!」


 いつの間にか接近していた成長したレッドルビーの拳が、ガスパイダーの腹部に深々とめり込むとともに――。


「……サイコインパクト」

「――申し訳ありません、大首領。このガスパイダー……!」


 最後まで言葉を発することなくガスパイダーは爆散する。

 それを成長したレッドルビーは、感情のこもっていない目で見つめるのだった。

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