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バベル再興記~転生したら秘密結社の大首領になりました~  作者: 想いの力のその先へ
第二部 魔法少女オーラムリーフ 第一章 魔法少女、始めました
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彼女たちの行方《ゆくえ》

 バベル秘密基地内の私室にて、盛周はレオーネから報告を受けていた。


「ご主人さま、バルドルに保護された例の魔法少女だけど……」

「何か進展があったのか?」

「うん、どうやら行方不明事件の被害者。西野春菜の関係者だったみたい」

「西野春菜、というと、あの……?」


 盛周は以前、レオーネの報告で見た怪物。魔物と戦闘を行っていた仮称魔法少女のことを思い出す。

 そう、彼女こそが西野春菜。連続女性行方不明事件の被害者にして、最初に確認された魔法少女であった。


「……しかし、その西野さんは今、行方不明なのだろう?」

「うん、最後に確認されたのが、あの戦闘映像だったからね」


 盛周の疑問に肯定するようにレオーネは告げる。彼女もまたアグと同じような妖精と出会い魔法少女として覚醒。その後、行方不明になった。ということになる。

 そして、魔法少女。否、ヒロインが行方不明になったということは……。


「……何ともやるせないな」

「まぁ、ね……」


 端的に考えれば、件の少女が生存している可能性は絶望的。と、考えるのが普通だ。

 もしも、他の可能性を考えるならば、かつてのレオーネのように……。


 そこまで考えてレオーネの顔を見る盛周。

 彼女もまた同じ考えに至ったのか、顔色こそ普通なものの、彼女をよく知る人間が見れば身体が僅かに震えているのが分かった。

 いくら、彼女がヒロインとして鉄火場を経験している――むしろ経験しているからこそ――精神的なトラウマを完全には払拭できていなかった。


「……大丈夫か、レオーネ」

「……うん、大丈――。ううん、ごめんね、ご主人さま。やっぱり、まだ少し……」


 盛周の心配を受けて気丈に振る舞おうとしたレオーネ。しかし、盛周の嘘は許さない。という視線を見て、情けないと思いながらも本心を語る。

 確かに彼女はヒロイン、戦闘者だ。だが、それ以上に彼女もまた、一人のうら若き乙女なのだ。

 そんな彼女を襲った卑劣な行為。それに対して未だ恐怖を覚えていても不思議ではない。

 彼女が盛周をご主人さま呼びしているのも、唯一彼がレオーネを助け、恐怖から遠ざけてくれたからに他ならない。


 そして、盛周としても偶然とはいえ、彼女が手を貸してくれたからこそ、今の状況。完全、とまでは言わないが多少なりとも余裕のある状態で魔物たちへの対処を、正確に言うならバルドルへの支援を行えている。

 そのことを思い返した盛周は大きく息を吐くと――。


「……まだ死亡が確認された訳でもないし、諦めるのは早い、か……」

「ご主人さま……?」

「いや、なに。まだ救えるかもしれないのに俺たちが諦めてしまったら、そこで終わっちまう。今は信じよう、彼女が無事であることを。そして助けられることを」

「……うん、そうだね」


 盛周の言葉を聞いたレオーネは穏やかな笑みを浮かべる。実際、彼女自身も油断し、捕えられ、絶望の中で盛周に助けられた。

 ならば彼女も、西野春菜も助けられない道理はない筈だ。

 盛周は、レオーネを安心させるため、気休めを言ったのかもしれない。それでも、その言葉にレオーネが救われたのは確かだった。

 自身がそうであったように、彼女もまた命が助かる可能性を見捨てない。そう思えたのは確かなのだから。


 二人の間にしんみりとした雰囲気が流れる。

 盛周は、そんな雰囲気を解くためにも、違う話題を話し始める。


「それはそうと例の、レッドルビーに似ていた彼女について、何か分かったことはあるか?」

「……えっと、それについては――」


 盛周が切り出した話題。それはかつて彼らがブルーサファイア。南雲霞を捕縛した時、助力してきた謎の、超能力を使用してきた戦士についてだった。

 その後、戦闘データの洗い出し。並びに映像資料から彼女が装備していたものが、PDCを発展させた物であることまではバベルでも掴んでいる。

 しかし、それ以降の足取りについては把握できていなかった。

 ゆえに、盛周はレオーネに極秘で調査するように指示を出していたのだ。そしてそれには、政府の方も噛ませるようにした上で、だ。

 なにせ件のPDC。奈緒曰く、自身の技術をさらに発展させたものを使用した可能性あり。などという報告を上げてきたのだ。


「普段なら鼻で笑う報告なのだがなぁ……」

「まぁ、魔法少女なんてオカルトが出てきた以上、奈緒ねぇが考えた可能性を否定できる要素はないもんね……」


 二人はともに頭を悩ませる。

 異世界に魔法少女。現実にはあり得ざる存在が出てきた以上、奈緒が荒唐無稽と断じた可能性。謎の戦士、彼女の正体が時間旅行により逆行してきた未来のレッドルビー。真波渚という可能性を真剣に考える必要が出てきたのだ。

 もっとも、未来から逆行してきたとして、何を目的としているのかは、一切不明。かろうじて盛周の、アクジローへ協力をしたことからバベルと敵対するつもりがないのは確かなようだが……。


「……ともかく、あの娘? の目撃情報についてなんだけど。自衛隊の方で何件かあるみたい」

「自衛隊の方で……?」

「うん、ほらご主人さま。この間、広範囲に魔物が沸いたでしょ?」


 レオーネの指摘を受け、盛周は確かにレッドルビーとブルーサファイア。両名が初めて魔物と相対した時、自衛隊の戦力も魔物相手に奮戦していたことを思い出す。


「確かに、そうだったな。しかし、かなり苦戦していた、と報告が来ていたと思ったが……」

「うん、そうだね。で、その苦戦していた部隊の救援に来てたっぽいんだ」

「なんだと……?」


 レオーネの報告を受けた盛周は訝しげに顔を歪める。

 それが本当なら、彼女が何らかの活動拠点を持っている可能性も考慮に入れる必要がある。

 即ち、彼女以外にこちらの世界に来た人物。もしくは現地の協力者がいる可能性を。

 真剣に悩みだした盛周を見て、レオーネは困ったように切り出す。


「さすがにその可能性は低いと、ボクは思うな」

「ふむ……」


 レオーネの否定に、何らかの確証を得ているのを感じた盛周は先を促す。それに応え、レオーネは持論を展開する。


「ボクの考えとしては、誰か協力者がいる訳じゃなくて、物資を持ち込んできて拠点を構築したんだと思うんだ。その証拠、って訳じゃないんだけど――」


 そう言いながら彼女は机の上に立塔市の地図を広げる。その地図にはいくつかの印が付けられていた。印に疑問を抱いた盛周は問いかける。


「これは……?」

「ここの印は全部、魔物の襲撃があった地点だよ。そして――」


 そこまで説明すると、彼女はペンを取り出して線を引いていく。


「今引いた線は、確認できた分だけど未来のなぎさちゃん? が、戦場に現れた地点から逆算した移動ルートなんだけど……」

「なるほど、これは分かりやすいな……」


 地図に示された()と線を見て盛周は納得したように頷く。

 なぜなら例の戦士が戦場に現れた方角と現場、移動ルートを線で繋ぐと最終的に全ての線がとある場所で交差したからだ。そして、その場所は――。


「廃工場、再開発区画。……しかも、かつてバベルの秘密工場があった区域、か」


 何とも困った表情で呟く盛周。確かに廃工場であれば身を隠すには十分で、なおかつ秘密工場は旧バベル時代にバルドルに強襲された後、機材を完全に破壊し、放棄されていた。

 その後、バベルとバルドル。両組織ともに秘密工場に干渉していないため、隠れ住むにはもってこいの場所になっていた。


「こうなると、何らかの方法で調査、接触したいものだが……」


 だからといって怪人を使うのはさすがに躊躇われた。なにせ、秘密工場区画に現れる怪人など、バルドルを挑発するに等しい行為だ。

 何より、それでバルドルまで動いて、未来から来たと思しき渚と、今の渚を鉢合わせるとろくなことにならないと考えた。


「さて、どうしたものか……」

「あの、ご主人さま?」


 今後の調査について悩む盛周に、レオーネはとある提案をする。


「なら、ボクの方で調査をするのはどうかな? 理由なんかは、あちらの方の指示で。ってことででっち上げられるし……」

「ふむ、確かにそうだな。頼めるか、レオーネ?」

「うん、ボクに任せてよ!」


 盛周のお願いをレオーネは満面の笑みを浮かべ、自信満々に快諾するのだった。

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