奮闘、ブルーサファイア
歩夢たちが反応をキャッチしたように、サファイアは本拠地を脱出した後、オニキスの追撃を捌きつつ、かつてレッドルビーがガスパイダーと戦った廃工場まで移動していた。
だが、しかし――。
「くっ、この……。いい加減、しつこい!」
「当たり前だ、逃がさんぞ裏切り者! ……やれ、バトロイドたち!」
――現在サファイアを追撃しているのはオニキスだけではなく、バトロイドや複数の怪人からなる大規模な部隊であった。
そして、オニキスの指示が聞こえたバトロイドは一様にライフルや、腕を変形させたバズーカを向けると一斉に発砲!
「……――!」
その砲撃群は寸分違わずサファイアのもとへ殺到し、彼女の姿は爆炎に消えていく。
そんなサファイアの姿に、仕留めたか! と内心歓喜するオニキス。しかし、その歓喜は脆くも崩れ去ることになる。
爆炎が消え、粉塵が舞う空間の向こうから、その粉塵を切り裂くかのように銃弾が飛翔!
突然の攻撃に回避することが出来なかったバトロイドたちは、胴体を撃ち抜かれ倒れるとともに爆散。
そして銃弾が飛翔した衝撃波で粉塵が晴らされたその先。そこには――。
「……あぶ、なかった――!」
今まで付いていなかった肩アーマーや腰アーマーの装甲が一部スライドし、そこから粒子が放出。円形の力場、バリアのようなものがサファイアの周囲に形成されていた。
そのことに驚くオニキスであったが、即座に強化を施した下手人について悟る。
「奈緒さま、か……。強化されていなければ、今の一撃でどうにかなっていたものを……!」
思わず奈緒に対して悪態をつくオニキス。今までも散々振り回されていたこともあり、彼女が発した悪態には重苦しい実感がこもっていた。
しかし、既に起きてしまっている以上悪態をついたところで意味はない。
彼女は即座に部下たちへ命令を下す。
「やりなさいロブラスター、シャークマー!」
「……今度こそ逃がさん!」
「バウンティハンターには負けたが、貴様には――!」
そう言いながら以前レオーネに敗北し、再開発されたロブラスターと、サファイアが逃走した際に取り逃がしてしまったシャークマーの二体、さらには残存しているバトロイドたちまでもが襲いかかってくる。
その大群を相手に逃げられないと悟ったサファイアは、ブルーコメットを変形させつつ応戦するのだった。
いくら、ブルーサファイアが歴戦のヒロインとはいえ、怪人二体に戦闘用ロボット多数を相手にするのは分が悪すぎる。
故に目指すのは、まず戦闘力が比較的低いバトロイドたちの撃破!
そのために、サファイアは敢えて怪人たちに突貫、虚をつく策に打って出る。ブルーコメットを突撃槍に変形させると貫く、とばかりに突進して見せる!
まさかこの数相手に距離をとっての射撃戦ではなく、突撃を敢行するサファイアに気圧された怪人たちは、思わず後退る。
そしてその結果、敵の陣形に穴が出来たことで、サファイアはその穴へ飛び込んでいく。
しかし、怪人たちと違いバトロイドに感情は存在しない。……からこそ、バトロイドたちは粛々と、サファイアを撃破するために部隊を展開。彼女を包囲する形に変える。
それがサファイアの目的だったことに気付かずに――。
「……迂闊な――!」
彼女はその言葉とともにブルーコメットを二丁拳銃に変化。そして全方向に乱射する!
そも、包囲する。ということは確かに逃げ場をなくす行為だが、同時にその分壁の暑さは薄くなり、そして何より――。
――囲まれている、ということは即ち、どこに撃っても当たるということに他ならない。
事実、サファイアが放った弾丸はすべて周囲のバトロイドに撃ち込まれ、次々と機能不全を起こし爆散していく。
その後、サファイアの周囲には立っているバトロイドは存在せず、完全に全滅していた。
そのことに驚くシャークマー。
「なんだと……、この一瞬で全滅したと言うか――!」
「己ぃ……!」
そしてロブラスターは怒り心頭の様子で、硬質化させたハサミを彼女へ叩きつける。
もっとも、そんな見え見えの一撃に当たるほどサファイアは弱くない。
彼女は二体の怪人から距離を取るように飛び退くと今度はブルーコメットを大剣へと変化させる。
それとともに怪人二体が再びサファイアへ襲いかかる。
それが第二ラウンドの始まりであった。