親友を助けるために
一方その頃、バルドル秘密基地内にいたレオーネは主要メンバー。千草と歩夢、そして目覚めた渚と話していた。
「それで、なぎさちゃん。身体は大丈夫?」
「ええ、大丈夫ですよ。レオーネさん」
そう言って笑顔を浮かべて、力こぶを作るような仕草をする渚。それを見て、レオーネは安堵の笑みを浮かべる。
未だバレていないとはいえ、盛周から叱責された件もあり、彼女なりに渚の容態は気に掛けていた。
そして、彼女が目覚めたこともあり、念のため千草と歩夢に許可を取り面会をしていたのだ。
歩夢と千草にしても霞、ブルーサファイアを奪還するまで即席とはいえコンビを組む二人の親睦を深めるためにもちょうど良い、ということもあり、二人の同席のもと面会が許可されたのだ。
「でも、本当。大丈夫そうで良かったよ」
「えへへ……。でも、千草さんたちも心配性なんですよ? もう大丈夫だって言ってるのに、まだここで休んでなさいって――」
「まぁまぁ、一度倒れてる以上またあるかもしれないし……。それに、倒れた原因だって、知らず知らずのうちに疲れを溜め込んでたのかもしれないんだから、ね?」
軽い調子であったが、そのように渚が不満を漏らしたことに対して、千草は万が一の可能性を説く。
渚も千草の説明に思うところがあるのか、不承不承であるが頷いている。
そんな二人のやり取りにレオーネは微笑ましそうに笑っている。
もっとも、レオーネに笑われたことに渚は不満なようで……。
「むぅ……」
頬を膨らませ、ハムスターのようになっている渚。
渚の可愛らしい顔を見た三人は、それぞれが笑いをこらえたり、顔を逸らしたり様々な反応を見せている。
「……むぅぅぅぅぅぅ!」
そのことで不満が爆発し、唸り声をあげた渚。
そしてそれに対して、さらに笑いそうになる三人という、一種のスパイラルに陥っていた。
そんな和やかな雰囲気が一堂の合間に流れる。しかし、その雰囲気は唐突に破られることになる。
「……ん? あっ、ちょっと失礼」
レオーネが持っていた通信機に着信が入ったのだ。
彼女は千草たちに断りを入れると、部屋を退室し通信に出る。
「はい、こちらレオーネ」
『レオーネ、俺だ』
「……ごしゅ――いえ、どうされましたか?」
通信を入れてきた相手は盛周であり、ついついご主人さま、と言いそうになったレオーネ。しかし、ここがバルドルの秘密基地であり、どこに耳があるか分からない以上、その言葉一つで致命的な失敗になる可能性が出てくる。
そのため、すんでのところで言い留まると社交辞令のようなやり取りにするレオーネ。
もちろん、盛周もそこら辺りは理解しているため目くじらを立てるつもりはなく、端的に用件のみを告げる。
『ブルーサファイアが目覚めた。これから彼女を脱出、怪人たちに追撃させる。レオーネ、お前は彼女の救援に向かえ』
「……っ、了解しました!」
盛周はそれだけを伝えると通信を切る。
そして、レオーネは慌てた様子で部屋に戻る。
彼女の様子に驚く面々だが、レオーネはそれに構わず歩夢に話しかける。
「水瀬さん、ごめん! 今すぐ、オペレーターたちに市内全域の走査をしてもらって!」
「ど、どうしたの。急に?」
「さっきの通信! 詳しい場所までは分からないけど、かすみちゃんが今、バベルの怪人と交戦中みたいなの!」
レオーネから告げられた言葉に驚く歩夢。
しかし、すぐに正気に戻ると分かった、と返事をする。
「……! 分かった、すぐにさせるわ!」
彼女は千草を見ると互いを見て頷くと、オペレーターたちに指示するため部屋を出る。
そして、千草もまたレオーネと渚。二人を見て話しかける。
「レオーネちゃんもそうだけど、場合によってはなぎささんにもでてもらわないとだけど、お願いできる?」
「それはもちろん……。でも、かすみがどうしたんですか?」
「それは……」
その時、はじめて千草は渚に彼女が意識を失っている間に霞がバベルに連れ去れたことを話していなかったことに気付いた。
もともと、意識を取り戻した後の渚。彼女の精神状態を懸念した二人によって意図的に情報を遮断していたのだが、今回はそれが裏目に出た形だ。
しかし、現状はもう既に隠し通す意味もなく、ここで秘匿すれば逆に不信感を抱かれかねないため、謝罪しながらことの経緯を説明する千草。
その説明を聞いた渚は驚きはするものの、それ以上に親友を救うため、一刻も早く動けるように奮起するのだった。