16 シューター
とんとん拍子どころじゃない勢いで、
アリシエラさんが試作品を完成させちゃいました。
ノッテるときのアリシエラさんは、本当に半端ナイのですよ。
今はジオーネ『平和の館』の屋上で、
アリシエラさんとふたりで新装備の検証中。
実は、みんなを驚かせようと思って、内緒で開発中なのです。
ほう、これが試作型スレッドシューター、
少し厚手の手袋みたいですね。
両手にはめてみても、特に違和感などは無し、かな。
「操作には、試作型の思考制御用魔導具を使用しておりますよっ」
「"つくも神"とマスターの方の会話を参考にした新しい操作方法」
「スイッチや音声認識よりも、危険なアレコレへのより素早い対処が可能、ですよっ」
ふむ。
「もちろん思考制御だけでは暴発の危険性がありますので、指の動作との二段階制御となっておりますっ」
「参考にしたのは、マユリさんの魔法選択方法ですよっ」
ふむふむ。
「それでは、あちらのダミーゴーレムを、右手の人差し指で指差して」
「『シュート』と念じてみてくださいっ」
よしっ、いきますよ、
『シュート』
しゅるる、ペタリ
うは、粘着糸がゴーレムに引っ付きましたよっ。
って、僕とゴーレムが糸で繋がった状態なのですが、
はて、これからどうしましょう。
「クロ先生の『瞬間止血接着剤』と『バリサン』にて使用した魔導薬液技術とのコラボレーションッ」
「人差し指での攻撃は、貯蔵庫内の魔素と『収納』されている魔導薬液を反応させて糸状に射出、その高強度魔導糸はあのゴーレムを吊り下げても切れないほどの頑強さを誇っちゃうのですっ」
えーと、たぶんゴーレムが糸を引っ張ると、僕がずるずる引きずられちゃうんじゃないかなって……
「いっぱい食べて体重を増やすか、いっぱい鍛えて筋力アップして引っ張りかえしちゃいましょうっ」
はい、僕が鋭意努力する方向ですね。
ちなみに、他にはどんな攻撃方法があるのですか。
「中指での粘着ネットや、親指での超硬化粘着弾ですねっ」
「全ての糸は、小指の消去薬剤で消滅させることが可能ですよっ」
スゴいですね、ちなみに薬指は?
「えーと、ただいま空欄となっておりますっ」
「なにかナイスなアイデアがございましたらご一報くださいねっ」
ありがとうございます、アリシエラさん。
スッゴくイカした魔導具ですよね。
ところで、コレは試作品とのことですが、なにか不足していることでもあるのですか。
「普通に使用する分にはなんら問題ございませんっ」
「あえて言うなら魔素貯蔵庫の容量が若干不足気味、くらいですねっ」
「今の試作型スレッドシューターでは、片手分でさっきの糸が10本くらい、ですかね」
「将来的にはカミスさん専用の『イッテラ』との連携による使用魔素量増加を考えておりますよっ」
それは楽しみですね。
このシューターは、このまま僕が使っちゃってよいのでしょうか。
「すみません、セキュリティのためにこれからカミスさんの『コニタン』と紐付けせねばならないのです」
「完了しだい完成版をお持ちしますので、乞うご期待、なのですよっ」
楽しみにしてますね。
本当にスゴいな、アリシエラさん。
ハリウッドとかに行ったら、大活躍しそうだね。
いろいろ応用が効きそうな魔導具だし、完成版が来るのが楽しみだよ。
それじゃ、ゴーレムと綱引きしても負けないくらいに鍛えなきゃね。
アランさんの安全闘技場で鍛錬してきましょうか。




