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最悪の魔女は幸せを知る  作者: 涼邪
第一章
7/13

7


「魔獣討伐騎士団長のアイディーク・レヴァントだ」


空いた口が塞がらなかった。




いつも優しい笑顔で接してくる人が、冷酷の狼?



どこが?



まず本当に同一人物?



そもそも、偽名とかじゃなく、本名だったの?



只者ではないとは思ってたけど、王族だったの?




いつもの彼と目の前の彼とのギャップが凄すぎて、頭にはハテナしか浮かばない。

何から突っ込めばいいかさえも分かっていなかった。


そんなアイディークはホールの真ん中で、持ってた大剣の切先を床にドーンっと置いて柄頭には両手を置いて仁王立ちしていた。

アイディークの体型と大きな大剣は全く似合わない。

アイディークはムキムキな筋肉質なわけでも無いから大剣に振り回されそうに思える。まだ、魔術師と言われる方がしっくりくる。



国王陛下の弟君の御子息なら、緋色の髪と本名で正体が直ぐに分かるはずなのに、全く分からなかった。リリーアジュが世間を殆ど知らないというのもあるが、アイディークの正体を知りたいとは全く思わなかったからでもある。

私にとって、アイディークはアイディークだ。

お父様の知り合いであって、私の先生であって、私の……。


それ以上もそれ以下でもない。


だから、正体なんてどうでもよかった。


しかし、王族と知った上で、今まで通りにしていいのか分からなかった。


「レヴァント様!お待ちしておりましたわ」


ベルナーラがいち早くアイディークに駆け寄った。それに気付いたアイディークは眉間に皺を寄せ、小走りで来るベルナーラを睨んだ。


「近づくな。馴れ合いに来たわけでは無い」


無表情の冷たい目。こんな目は知らない。初めて会った時でさえ、こんな目ではなかった。



驚きのあまり、無意識にずっとアイディークを見てしまっていた。


それに気付いたベルナーラは、リリーアジュに鼻で笑った。


「そんなにレヴァント様を見ていても何も起こらないわよ。期待するんじゃないわよ」

「ちがっ、私はただアークがっ……!!」


しまった!


咄嗟に両手で口を塞いだが、もう呼んでしまったものは仕方がない。

ついいつもの癖でアークと呼んでしまった。血の気が引いて、途端に冷や汗が止まらない。


怖くてアイディークの顔を見れなかった。


アイディークに迷惑をかけるつもりもなかったし、アークって呼ぶつもりもなかったのに、動揺しすぎて、初歩的なミスをしてしまった。


ベルナーラはアークと聞いて、怒りで顔を真っ赤にした。


「この無礼者!!レヴァント様は名前は許された者しか呼んではいけないのよ!しかも愛称だなんて!!無知もいいところだわ!!この常識知らず!!」


ベルナーラが手を挙げた。

これは、叩かれる。


目をギュッとつぶるが、その手が自分に当たることもなかった。


恐る恐る目を開けると、ベルナーラの手はアイディークの部下によって掴まれていた。


「無礼者はどっちだ」

「レ…レヴァント…様?」

「今自分で言っただろ。許された者のみが俺の名を呼べると」


アイディークのこの発言で、まわりがざわめきだした。


「彼女には俺が愛称で呼んでくれと頼んだ。文句ないだろ」

「なっ!?し、信じられませんわ!!この女も魔術師なんでしょ!レヴァント様を操ったのね!」


この女も…ってことはこの人も魔術師としてきたのかしら。

っというか、私がアークを操るとか、不可能だ。絶対に無理だ。アークが高熱で寝込んでいたとしても絶対に無理だ。


「お前、まさかこの俺が魔術で操られるほど弱いと思ってんのか?」

「い、いいえ!!いいえ!滅相ありませんわ!こ、言葉の綾です!魔術には色んなものがありますから!この女でも使える魔術でもしもがあるかもと!!」


リリーアジュの次はベルナーラが顔を真っ青にする番だった。本人も恐らく自分で何を言っているのか分かってないだろう。目が泳いで汗がすごい。


「ほう。この女でも…ねぇ。随分とリリアを下に見てんだね。で?お前も魔術師だろ?俺を操られんの?」

「え!?あ、あの!?わたくしが、レヴァント様を!?」

「あぁ。俺をもし、操られたら、何をしてもいい。お前の好きにしていいぞ」


言葉がなんかエロく感じるのに目が怖いですアーク。流石、冷酷の狼です。


「ほ、本当になんでもしていいんですわよね!?」

「あぁ」


ベルナーラはデレっと笑う顔を真っ赤にしながら、アイディークに向かって、手を伸ばした。

きっと、ベルナーラはアイディークを操れる自信があるのだろう。

ベルナーラも魔術師として、名高い家系に生まれ、魔力も他人よりもずば抜けて高い。

魔術師としての彼女を知らない人はいないだろう。


「マリオネット!!」


『何か』をアイディークに向けて放った。

辺りはシーンと誰一人話さない。


「ア、アイディーク…様?わたくしの婚約者になってくれませんか?」

「…」


ベルナーラは顔を赤くしたまま、大きい胸を寄せ、アイディークに言い寄ったが、彼は無表情のままだった。

無表情で無言。表情の変化もなく、全く何も言わない。

顔を赤くしていたベルナーラも、何の変化がないことに段々と心配した顔になってきた。


「で?まだか?」

「え?」

「早く、俺を操ってみろ」

「あ、あの…」

「なんだ。終わりか。お前はリリアを下に見たのに、リリアが俺を操ったと言っていたが、これじゃリリアの方が上だな」


そういい、狼狽えてるベルナーラを放置して、アイディークは未だに呆然としているリリーアジュの元に行く。

ベルナーラは咄嗟にアイディークに手を伸ばすが、直ぐに払われた。


「ア、アイディーク…様?」

「俺の名を軽々しく呼ぶな。鬱陶しい」


大勢の前で拒否を受けたベルナーラは顔を真っ青にした。

そんなベルナーラには眼中になく、ホールにいた討伐メンバー全員に聞こえるように声を上げた。


「一度、お前達の実力を知りたい。明日、装備を整えて、今日と同じ時刻にここに集合だ。以上、解散」


アイディークと一緒にいるリリーアジュを皆んなは気になるが、解散と言われてしまえば、帰るしかない。後ろ髪を引かれる思いで、一人一人、ホールから出て行った。

ベルナーラもリリーアジュを睨みつけつつホールから出て行く。


そして2人になった。

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