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最悪の魔女は幸せを知る  作者: 涼邪
第一章
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捨て子だったリリーアジュは、正確な誕生日も年齢も分からないが、孤児院に来た日を誕生日とし、まだ小さかったリリーアジュの見た目で年齢を決めた。


この決め方は、別に特殊なわけでもなく、孤児の子には普通にされる決め方である。


リリーアジュが推定年齢12歳をライデンの屋敷で迎えて数日後、ライデンから神殿に行こうと誘われた。

魔力診断をするのだ。

12歳になると魔力を持っている人間は魔力が安定するので、神殿にて魔力数値を計ることができる。


そして、そこで魔力の有無、さらに魔術師かどうかを知ることができるのだ。


「何も怖いことはないよ。ただ計るだけさ。魔力があれば魔術を使えるし、魔術が使えれば、身近なことが楽になるからね」


魔力があれば、魔術で火や水を出したり、風をおこしたりと、自然の力を借りることもできる。様々な魔術があるので、重いものを軽くしたり、気温を調整したりと…キリがないほどの魔術がある。


ただ、言ってすぐできるわけではないので、魔力があると分かれば勉強や実技で使い方を学んでいく。


本で魔力判定があるとは知っていたが、まさか自分が神殿に行くとは思わなかったリリーアジュはライデンに誘われたが、暫く固まってしまった。




ライデンの娘になってから約4年の月日を一緒に過ごしたが、未だに外に慣れていない。



あの日、初めて帰る家が出来た。


ライデンに使用人が何人もいることは知っていたので、家に行くのが怖かった。

大切な主に私みたいな身元不明の灰黒髪をもった孤児の子が娘となったということに対し、嫌な気持ちを抱いてる人が沢山いるだろうと思っていた。

その感情が正しい感情だと教えられていた。

私みたいな不吉の象徴がいると、家の評価も下がるだろうし。


しかし、予想と違い屋敷の中の人達はビックリするくらい初めからリリーアジュに優しかった。


感情を外に出さないなんて、流石プロの人達だ。

ライデンがリリーアジュに優しくしろとキツく言ったのかと思ったが、そうでも無さそうだった。


「リリーアジュ様がライデン様のご息女になることを心からお待ちしておりました」


メイドがニッコリと綺麗な笑顔でリリーアジュに話しかけてきたのには驚いた。


調理場の人達はリリーアジュにこっそりお菓子をくれるし、庭師はお花を、メイド達はおもちゃなど、色んな人が優しくしてくれる。


そして、何よりライデンの親バカっぷりが凄かった。周りの貴族が少し引いてしまうくらいリリーアジュに甘かった。


ライデンについて、家族になって知ったのは、ライデンは妻子がおらず、ずっと1人だったらしい。

だからなのか、リリーアジュには本当に血の繋がっている娘のように大切に扱う。

養子だったことなんて皆んな忘れるくらいに大切に育てていた。



初めはおどおどしていたが、だんだんと屋敷に、使用人たちに、環境に慣れていった。これもライデンのおかげだ。


しかし、一歩外に出ると、人々の目は恐ろしいものに変化する。


ライデンがあまりにも自分がビクビクとし、泣きそうな顔をするもんだから、外出用のフードを買ってくれた。外に出ることがあれば、そのフードを深く被って、ライデンと手を繋いで外を歩くようになった。


ライデンは初めは外に出てくれるリリーアジュを見て、フードは正解だったと思っていたが、段々と間違ってしまったのではないかと後悔をしてもいた。

自らの手でリリーアジュを隠さないといけない人物にしてしまったのでは、と思い続けている。




神殿にもフードを被って行くなら、リリーアジュも勇気を持てる。

だから、いつものようにフードを被ってライデンと共に神殿に行くと、入り口で神殿の警備員に待てと足を止められた。


「神殿内は神聖な場所となっております。どうかおかぶりものを取って、お入りください」


フードをぬげ…


この言葉がとても怖かった。


「この子にはフードが必要なんだ。どうか許可をくれないかな?」

「申し訳ございません。それはできかねます。規則ですから」


ライデンは眉間に皺を寄せ、んーと唸る。


「リリア。魔力判定はやめておくか。今から違うところに行こう」


ライデンは笑顔でリリーアジュに言うが、貴族の娘として魔力判定をしないというのは風評が良くないことを知っている。


「お父様!私、フードぬげます!ですので、行きましょ!」

「リリア、無理をしなくていい。義務でもなんでもないのだから」

「いいえ!私も知りたいとは思っていたのです。お父様が一緒にいてくれるなら、大丈夫です」

「……そうか。けど無理はしないように」

「はい」


そうして、少し深呼吸をしたのち、フードをとった。


日にあたり、キラキラと輝く綺麗な灰黒の髪が風で靡く。


しかし、それは他の者からすると綺麗ではなく、不吉の象徴。


警備員も、ヒッと声をあげ、後ろざったが、ライデンがすぐに警備員に睨みつけた。


「行こうか。リリア」

「…はい」


ライデンの手を無意識にギュウと強く握っていたが、ライデンが怒ることも指摘することもなく、優しく握り返すだけだった。


神殿内にはいると、人々の目は想像通りすぎるくらい、ジロジロと見られ、頭は自然と下がってしまう。


「リリア。顔をあげなさい。堂々とするのだ。リリアは綺麗だ。何も臆することはない」

「お父様…」


そうだ。私にはお父様がついている。


リリーアジュは人を気にしないように、視界に入れないように前を向いた。



暫く神殿内を歩いていると、大きな広場に出た。

そこには、先程いた人達とは違う服装とオーラがあった。


「ようこそ、おいでくださいました。ライデン・メンデランス卿、リリーアジュ・メンデランス侯爵令嬢」


優雅に一礼をする、優しそうな顔つきの高齢な男性は、ジェス司教。

この神殿で1番偉い人だ。


「今日は娘の魔力診断にきたのだが。神殿の人達には、なんとも困ったものだ」

「申し訳ありません。まだ見た目で差別が行われているのは私の力不足です」


そういい、リリーアジュの目の前で跪き、目線を合わせる。


「小さなお嬢様、神殿の人達が貴方に失礼をしました。魔力の判定はすぐに終わります」


そっとリリーアジュの小さな手を取り、その上にキラキラと白く光る綺麗な球が置かれた。

ジェス司教が何かを呟くと、その球は目が開かないくらい眩しいほどの光を放った。


「なっ!!??」

「何が起こったのだ!?」


手のひらにある球はじんわり熱く、しかし、じんわりと冷たくもある。不思議な感覚で球を早く手離したかった。


やがて、光は収まり、最初の綺麗な輝きに戻った。


「今のは…」

「メンデランス卿、リリーアジュ侯爵令嬢は魔術師でございます。それも、壮大なほどに魔力をお持ちです。…長年この仕事に携わってきましたが、ここまでの光は…久しぶりに見ました」

「なっ!!」


初めて知った。

私は魔力持ちだったみたいだ。


魔力持ちと認定されると、国に報告がいく仕組みとなっている。例外なくリリーアジュも報告される。

そのことを知っているライデンは頭を抱えた。


「…そんな…まさか…リリアが…」

「…お父様??」


さっきは魔力があると便利だと言っていたのに、何故急に顔色が悪くなるの?


「ジェス司教、確か近々、国王が魔獣討伐のメンバーを決めると噂がある。……リリアは、リリアが選ばれることは…」

「…高いと思われます」


ジェス司教の言葉を聞いて、ライデンは項垂れた。


その日はそのまま、何もないまま、家に帰った。

そして、数日後ライデンの嫌な予感があたり、家には国王の印が捺された封筒が届いた。


もちろんそこには、


リリーアジュ・メンデランスを魔獣討伐メンバーとする。


と書かれていた。

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