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おっぱい

「おっぱい、おっぱい、おっぱい」

 僕は部屋でギターを弾きながら、おっぱいのことばかりを考えていた。おっぱいというこの世の創造物の中で最高傑作のことばかりを、僕は考えていた。

 キスの次はおっぱいだった。おっぱいおっぱい。僕の頭の中はおっぱいでいっぱいだった。

 愛ちゃんを抱きしめる時、その胸の感触は体で感じることはできた。しかし・・。

 僕は自分の手の平を広げて見る。

「この手で・・」

 この手で、この手で、しっかりと愛ちゃんのおっぱいを掴みたい。僕は鼻息荒く思った。

 おっぱいというあの聖域をこの手で掴みたい。愛ちゃんのおっぱいは、正直それほど大きくはないが、その魅力は無限大だった。

 しかし、そのハードルは高い。キスですらあれだけ手こずったのだ。おっぱいとなると、それは気の小さな僕にとっていきなり富士山を飛び越えてヒマラヤ登山に挑むようなものだった。

「おっぱいの山は高い・・」

 でも、愛ちゃんは、それを許してくれようとしている素振りも感じていた。つまりは僕の勇気次第だった。

「・・・」

 おっぱいのことを考えていたら、つい僕は斜め向かいでギターを弾く凉美の胸の膨らみに目が行ってしまっていた。

「なんなんだろうこの膨らみは・・」

 僕は凉美の胸の膨らみを見つめながら考えた。凉美は今日も白のミニのワンピースと薄着で、その立派な胸の膨らみは、服越しではあるがくっきりと露わになっていた。

「・・・」

 ただの肉の膨らみが何でこんなに男を惹きつけるのだろうか。そして、男は惹きつけられてしまうのだろうか。

「おっぱい・・、おっぱい・・」

 おっぱいは実に謎が多い。しかし、考えずにはおれなかった。

「おっぱい・・、おっぱい・・、ん?」

 僕は顔を上げる。

「わっ」

 ふと視線を上げると凉美がそんな僕を見ていた。思いっきり目が合う。凉美はニヤニヤと笑いながら、勝ち誇った顔をして僕を見ていた。

「うううっ」

 恥ずかしいやら何やら、なんだかよく分からないが、ものすごく負けた感じがした。女というものは男が最大に欲望する最高のものを生まれながらに持っている。男はもうどうしようもなくそれに惹かれひれ伏すしかない。それを突きつけられていた。

「うううっ、負けた」

「勝った」

 凉美の顔はそう言っていた。


 愛ちゃんと会っていても、つい、愛ちゃんの胸に目が行ってしまう。思春期絶頂の僕の頭は、完全におっぱいに支配されていた。おっぱいが世界で世界がおっぱいだった。

「ヒロシさん」

「えっ」

 愛ちゃんが突然立ちどまる。僕も何ごとかと立ちどまる。そして、愛ちゃんを振り返り見る。

「いいよ」

「はい?」

 何がいいのかまったく分からなかった。

「胸」

「胸?」

「・・・」

 そこで愛ちゃんは顔を赤くする。

「・・・」

 僕はそんな愛ちゃんを見る。

「ええっ」

 しばらくして、そこで僕も分かった。

「あああっ」

 そして、なんか変な声が漏れた。全身の血が逆流して、脳天から噴流した。

「えっ、な、何で分かるの?」

 僕は驚く。なぜ、僕の考えていることが、頭から漏れているのか分からなかった。

「だってヒロシさんずっと私の胸見てたでしょ?」

「えっ」

 昨日の凉美といい、やっぱり女の子には分かるんだ・・。バレないようにチラ見していたのだが、思いっきりバレバレだった。

「いいよ」

 そして、愛ちゃんはもう一度言った。

 そのいいよが、何を意味するのかを分かっていながら僕は、頭が沸騰していて一瞬分からずにいた。愛ちゃんは意気地のない僕に気遣って、わざわざ自分から言ってくれているのだ。

「でも、私おっぱい・・、小さいから・・」

 愛ちゃんが恥ずかしそうに言った。

「おっぱいがなくたっていい。愛ちゃんがいてくれたら、それだけでいい」

 僕は思わず叫んでいた。何か、僕は訳も分からず興奮していて、舞い上がっていた。

「小さくてもおっぱいはおっぱいだよ」

 僕は力を込めて言う。

「そんな、叫ばなくても・・、余計恥ずかしいです。それになくはないですから」

「そ、そうか、ごめん・・」

「でも、うれしいです」

「そ、そう?」

「うん」

 愛ちゃんは、本当にうれしそうに僕を見る。その目が輝いている。

「愛ちゃん・・」

 僕の中に何か熱い衝動が湧き上がった。僕は辺りを見回した。平日昼間の湖畔端近くの公園沿い。そこには幸い誰もいない。

「・・・」

 そして、あらためて、真正面に迫る愛ちゃんの胸の膨らみを見る。目の前のこの小さな膨らみが、まるで巨大な山脈のように僕に迫って来る。

「ゴクッ」

 僕は息をのむ。しかし、ここで行かなければ男じゃない。

「ヒロシ行きます」

 愛ちゃんのおっぱいに僕の右手が恐る恐るゆっくりと伸びる。僕のその手は震えていた。

 ゆっくりゆっくりと愛ちゃんのおっぱいに手が近づいていく。そして、愛ちゃんのおっぱいに手が触れる。アポロ十一号が、初めて月に降り立った時の感触はこんなであったろうか。その瞬間、感動で僕の全身は震えた。

 僕は、そのままおっぱいを包み込むように手を置いた。丁度愛ちゃんの心臓のある方のおっぱいだった。 

 愛ちゃんは恥ずかしそうにうつむいている。そんな愛ちゃんの鼓動が聞こえる。愛ちゃんの生きている、その温かいその胸の膨らみを僕は感じていた。

 緊張の中に、痺れるような感動と、熱い喜びがあった。

「愛ちゃん・・」

 僕は愛ちゃんを見つめる。愛ちゃんもその小さな顔を上げ、僕を見つめる。

 愛ちゃんのおっぱい・・。

「ついに、おっぱいを・・」

 あの男の憧れ、夢にまで見たおっぱいを服の上からではあったが、僕はその手いっぱいに包み込んでいる。

「おっぱい・・」

 どこか現実ではないような、しかし、恐ろしく痺れるような感動が僕の脊髄を貫いていた。

「おっぱい・・」

 それはおっぱいだった。あの夢にまで見たまごうことなきおっぱいだった。


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