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ライブ決まる

「そういえば最近、ジェフを見ないな」

 最近ジェフの姿がない。別にそれ自体は珍しいことではない。どこへ行っているのか、ちょくちょくどこかへ行って帰ってこないことはよくある。だが、これほど長いこといないのは初めてだった。

「もう、一週間になるんじゃないか」

 僕はマチを見る。いると思いっきり鬱陶しいのだが、いないとなんか妙に気になる。

「あの人は絶対死なない人よ」

「まあ、そうだな」

 確かにジェフは、絶対どこへ行っても生き残る奴だ。なんか妙な適応性というか順応性がある。涼美も全く気にしている様子はない。

 部屋の片隅では、丸ちゃんが、今日もメトロノーム相手に、スティックを無心に叩き続けている。

「まっ、別にいいか。そのうち帰ってくるだろう」

 とりあえず、この部屋ではみんな平和だった。

「やあ、みなさん、ハローハロー」

「あっ、ジェフ」

 そこへ唐突にジェフが帰ってきた。

「どこへ行ってたんだよ。みんな心配してたんだぞ」

 なんかほんと久しぶりにジェフを見る気がする。

「オレさまは神出鬼没だ」

 ジェフは何かを宣言するように高らかに言った。

「いや、なんか日本語おかしいから・・汗」

 やはり、ジェフは訳が分からん。

「ライブやるぞ」

 ジェフが突然叫んだ。

「・・・」

 全員、沈黙。ジェフを見る。

「はいはい」

 そして、涼美は最近はまっているライトハンドに再び熱中し、マチは読書に戻り、丸ちゃんはスティックをまた叩き始めた。

「そうだね。いつかやりたいね」

 僕は適当に相槌を打つ。

「もう決めてきた」

「何!」

 全員ものすごい勢いで再びジェフを見る。

「いつ?」

 僕が訊く。

「十八日」

「えーっと・・、おいっ、来週の日曜日じゃないか」

「そうだ。そう言っていた」

 ジェフは呑気に言う。

「・・・」

 僕は涼美を見た。涼美も僕を見る。

「あと十日もないぞ・・」

 僕は動揺しまくる。

「どうすんだよ。どうすんだよ」

 僕はもうパニック寸前だった。

「ついに来た。ついに来た」

 いつか来るその日がついに来た。しかも突然。バンド活動を夢見ていながら、僕はライブを死ぬほど恐れていた。しかし、バンドをやる以上それは避けられない。いつか向き合わなければならない現実だった。

「ライブだ。ライブだぞ」

 僕は涼美を見る。

「ライブだぞ」

 僕はもう完全にパニック状態になっていた。

「ライブ・・」

「慌てんじゃないわよ」

 涼美がそんな僕を一喝する。

「ほんと情けないわね」

「ううっ」

 確かに自分でもそう思うほど情けなかった。

「でも、どうすんだよ。実際」

「私に言わないでよ」

「っていうか何やるんだよ。俺たちは持ち歌なんかないんだぞ。コピーか?というかそれすらもない」

「ほんとね」

「ほんとねって、他人事みたいに」

 涼美も呑気だ。

「しょうがないわね」

「ん?」

「あたしが前にいたバンドで作った曲をやりましょ」

「そんなのがあるのか」

「あるわよ。ただ、あと十日で覚えるのよ」

「・・・、マジ?」

「マジよ」

「マジかぁ・・」

 僕は頭を抱えた。

「マジよ。これは現実よ」

 そんな僕に、涼美が冷ややかに言う。

「マジかぁ・・、うううっ・・」

 現実と認めたくなかった。僕のいつもの現実逃避癖が出ていた。しかし、そうやって逃げて逃げて、逃げた先に、僕は引きこもり、そして、それでも結局逃げきれず、自殺まで考えた。ここで立ち向かわなければ、僕は結局ずっとダメなままだ。

「丸ちゃんは大丈夫?」

 僕は丸ちゃんを見る。丸ちゃんは顔が青くなっていた。想いは僕と一緒らしい。

「は、はい・・」

 そして、丸ちゃんは自信なさげに呟く。

「三曲あるわ。それに何かコピー曲入れて形にしましょ」

 しかし、涼美は一人落ち着いている。

「うん・・」

「普通、ライブって自分たちの曲があってそれを聞いてもらいたいから、するもんだけどね。何でライブが先になるのか分からないけど。まあ、いいわ。私ライブ好きだし」

「ライブが好きなのか」

「大好きよ。人に見られるって快感」

 涼美は目を輝かせる。

「・・・」

 対人恐怖症&上がり症の僕にはまったく分からない感覚だった。

「なんで緊張なんかするのよ。それが分からないわ」

 涼美が僕を見る。

「なんでって言われたって、するもんはするんだよ」

「何威張ってんのよ」

「うううっ」

 確かに威張れることじゃない。

「あたしなんか、もうステージに立って、スポットライト浴びて、人から注目されて、それだけでもう堪らなくアドレナリンが出るわ」

 涼美はさらに目を輝かせる。本当に人から注目されるのが好きらしい。

「お前はちょっと特殊な気がするぞ・・汗」 

「そうかしら」

「絶対そうだよ」

 しかし、涼美は、全然ピンと来ていないみたいだった。

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