ペヅマウ vs 第二小隊
移動しました。
荒谷工業・東京本社前
「全員構えろ。」
「「「「はい!」」」」
『『『『NOW INSTALLING』』』』
京極の一声で、第二小隊全員が武器を構えた。
『お……お前くらい、さっさと潰してやるよ!』
叫声をあげて、京極に飛びかかるペヅマウ。
だが、二本のレーザーサーベルでそれを軽く流し、そのまま切りつけた。
「その血が昇った頭で向かってくるとは……クールじゃないな。」
ペヅマウの腹に片足を当てると、彼はそこからスーツの蒸気を噴射した。
それにより、強烈なジャンプを彼の腹でしたような強い衝撃がペヅマウを襲う。
そのままペヅマウは建物にぶつかり、瓦礫に埋もれた。
「なにかあったか?」
「第五小隊が……」
「そうか。加勢に行きたいが、こいつを野放しには出来ない。今は目の前に集中するぞ。」
『くそっ!何度目だ!』
瓦礫から声がする。
声のする場所から、瓦礫をかき分けたペヅマウが現れた。
『わ、私は……私は力を得たんだ!』
ペヅマウは叫ぶ。
『理不尽をひっくり返す力を!人の上に立つ力を!不幸を覆す力おおお!』
心の底から嘆き叫ぶ。
紛れもない本心を、爆発させた。
『誰もが嫉妬する力を手に入れた私が負けるわけが無いのだ!』
黒いオーラがペヅマウから溢れ出している。
「……クールじゃ、ないな。間違った力を使っている時点で。」
『へああああははっはははっはっはっは!』
彼の……京極の言葉を聞いたペヅマウが、嘲るように笑った。
それは、生前の彼からは想像できない……下卑たものだった。
『例え正しく力を使っていても、お前たち人間はこの姿を見て拒絶するくせに、ずいぶんカッコつけるねえ!』
「……なに?」
そして指差し、睨みつけると威圧するように叫んだ。
『人生の先輩として、社会人の先輩として言ってやる!人は結局見た目で判断するんだ!どんなに仕事を頑張っていても、会社を宣伝するためのモデルには選ばれない!男女はみんな見た目で人を判断して、かっこいい・かわいいを口にして、勝手な妄想をする!付き合おうと下心を持って、近づくんだ!』
ペヅマウの過去が、走馬灯のように頭に巡る。
そのためか、口調も言いたいことも爆発していた。
『汚ねえ格好した医者と、白衣を着た医者どっちがいいって話だ!何も持たねえ人間と、人間にはない力を持った怪人……何も持たねえ人間の心が悪で、怪人が善でもどっちを味方だと思う!?何も持たねえ人間の言うことが間違っていても、正しいことを言う怪人の事を考えもせずに人間の言うことを判断するだろ!それが人間だ!』
ギロりと、睨みつけるペヅマウは……自分の結論を吐き出した。
『結局自分の価値を示す以方法なんて……力で相手を屈服させるしかないんだ!』
精一杯、ペヅマウは叫ぶ。
最後まで聞き、その様子を見た京極は、改めて武器を構えるのだった。
「悪いな。お前は既に、危機を及ぼしている。」
あの痛々しい死体が、頭に過った。
「その時点で、お前は危険でしかない。」
京極のレーザーサーベルを握る手に、力が入る。
『はあ、そうかい。そうかよ……イラつくなああ!社会を知らねえバカ相手は!』
鍵爪を構えて向かう。
二人のレーザーガンを構えたガーディアンが、ペヅマウにレーザー弾を放つ。
『ううううううう!』
「はあああああああ!」
京極とペヅマウが武器をぶつける。
鍔迫り合いのように、どちらが押切るのか……ギリギリの競り合いだ。
「諸星!」
「はっ!」
京極の一声に応じて、諸星がペヅマウの体勢を崩した。
『うがっ!』
スっとそのスキを逃さずに京極は攻める。
初撃をもらうも体勢を立て直し、ペヅマウは鍵爪で京極の一撃一撃を受けた。
京極から迫りくる連撃を、ペヅマウは鍵爪を駆使して止め続けた。
だがここで戦闘での経験の"差"が見え始める。
受け続けることによって、「これで受けられる。」と体が勝手に錯覚し始める。
つまり、ペヅマウの動きと思考が楽をしようとし始めたのだ。
そのためか、有り体の動きがペヅマウから見られるようになる。
だからこそ、京極には一瞬一瞬に考える時間が生まれた。
同じ動きにどうやって一撃を合わせるか、を。
『ああああああああっ!』
(今っ!)
そのペヅマウの攻撃は、先程よりも大きく振りかぶっていたことに京極は気づいた。
いや。気づいたというよりは、反応したと言うべきか。
頭で理解するよりも先に、身体が動いていた。
京極のカウンターが炸裂した。
『あぐっ……!』
ペヅマウの腕を弾き、がら空きの胸に一撃……二撃と叩き込んだ。
『ぐうっ……!』
とうとう膝をついたペヅマウは、衝撃のあまり頭が混乱していた。
(なぜだ、なんであんな武器が……私に効くんだ!?)
パニック状態になって、彼が感じたのは怯え。
自分の存在が消えてしまうのではという、恐怖だった。
その彼がこの状況を打破するために、ある行動をとることを決意した。
それは--
逃亡。
『はあっ、はあっ、はあっっ!』
背を向けて、脱兎のごとく逃げ出したのだ。
『くそ、くそ、くそ!逃げてやる!生きたもん勝ちだ!』
「僕らを忘れてもらっちゃ困る!」
『な!』
逃亡の先にいたのは諸星、そして北條。
諸星が懐に入った。
そのまま一撃をもらってしまう……
そのすんでのところで彼は攻撃を受け、受け流す。
まるで水の流れのように淀みない動きで、ペヅマウを斬りつけた。
『くっ!』
「北條さん!三上さん!」
名を呼ばれた二人はすでにレーザーガンを構えており、諸星が回避行動を取った時には既に銃の引き金を引いていた。
正確無比の数々のレーザー弾が、ペヅマウに襲いかかる。
『ええ、く、くそ!』
ペヅマウは逃げようとした。
逃げられなかった。
そこにはもう、京極がいた。
「俺を……沢渡より弱いから……と、油断したな。」
『ナニ……!』
ビィィィィイン……
ガキィン!
京極はペヅマウの鋭い鍵爪を折ろうと試みる。
そのためにレーザーサーベルによる剣技が、武器折にかかる攻撃になっていた。
「確かに、アイツにコンプレックスを抱いていたかと聞かれたら、否定は出来ない……だが!」
京極がペヅマウとの競り合いを弾いた。
「俺は言える。胸を張って言える。自分のコンプレックスを抱き続けるのではなく、俺は受け入れた!だからこそ……だからこそ、そんな小さなものよりも、アイツを尊敬出来た!アイツと肩を並べて戦えた!俺は前を見て進める!」
徐々に攻撃は、言葉と共に強くなる。
そして、激しくなっていく。
『ぐっ……』
武器と武器の火花が散る。
徐々にペヅマウが押され始めた。
京極の一撃一撃が重くなるのを、ペヅマウは感じていた。
だからこそ、彼は逃げ出したかった。
同時に、逃げ出したところで再び追いつかれるくらいなら、スキを狙って大きな一撃を食らわせ、時間を作りたいという考えもあった。
「アイツは、数少ない同期で、戦友で……親友だ。だが何より、俺は第二小隊隊長。自分の小さな気持ちをを優先しようとするほど--」
京極はペヅマウの鍵爪の上に乗り、宙を飛んだ。
(しめた!)
ペヅマウは宙に浮いた京極を見て、チャンスだと思った。
空中では身動きが取れないと、そう考えたからだ。
だが、次の瞬間。
京極が宙を蹴った。
それにより、勢いよくレーザーサーベルを構えてペヅマウに向かっていった。
「甘くはないっっ!」
叫びながら振り降ろされた一撃は、自慢の鍵爪にヒビを入れ、数本を折った。
『ぎゃああああああああああああ!!!』
「クールに……決まったか?」
(つ、爪が……)
自分の唯一といっても過言ではない凶器を失ってしまった。
その事実が、ペヅマウを想像もできないほど激しい焦燥に囚われた。
(まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずぃいぃぃぃぃぃいいいい!!)
自分の体に血はない。
だが、身体中に何かが蠢いている。
(このままでは、死んでしまう!相手が怯えることもなく、弱い自分のまま死んでしまう!)
自分の身体中を、暴れ回っている。
(せっかく手に入れた力も失ってしまう!)
自分が闇に染っていく。
(いやだ……いやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだいやだ!!失って……たまるか!私の……私だけの、力!気に入らない奴を!人を、怖がらせ……屈服させる力が……!)
ペヅマウの目の前が、真っ暗になった。
♢♢♢
こっ、ここは……
何も無い、なんだ!
私は本当に死んでしまったのか!?
うっ、うわああああああああああ!
う、後ろから……く、黒い何かが追ってくる!
光が、逃げていく!
待ってくれ!置いていかない……で……
か、課長、どうして……
-私を置いて、お前だけがのうのうと生きるのか?
はあ……はあ……
-よくそれができるな。卑怯者!
な、なんで……
お、お父さん!お母さんも……どうして……
-人殺しをしたんだってな
-そんな育て方をした覚えはないのに!
-お前は立派な化け物だよ!
う、わ……
-卑怯者め、現実を見ろ。お前のやってきたことは、まともな人間のやってきたことじゃない。
う、うるさい……!
-お前は特別な人間じゃない
はあ……はあ……!
-お前は誰にも認められない
ひい……ひい……!
-お前はただの"臆病者"だよ。
わあああああああああああああああああああああああああああぁぁぁああ!!!!!!
ピシッ
ヒビの入ったガラスが割れる音がした。
すると、瞬く間にガラスの割れるような音が響き、床が崩れた。
何も出来ずに、落ちていく。
ただただ上にいる上司と両親を見上げることしか出来なかった。
そして、下では待っていたかのように黒いナニカが渦巻いていた。
ナニカに落ちてしまうと、抵抗することも無く、そのまま底なし沼に嵌った人間のようにゆっくりとナニカに浸かった。
ナニカはずっと渦巻いていた。
♢♢♢
『まだ……死にたく、ナイ……』
「まだ、やられてはいなかったか。」
レーザーサーベルを構える京極が、警戒を強めた。
『オレは、マダ……ナニモ、してナイ!』
明らかに様子が先程とは違う。
ドッと、黒い何かが溢れた。
『お、おおおおおお、お、おおお!』
ペヅマウは黒いオーラを纏い、周囲を自身が無意識に発動するプレッシャーで威圧した。
建物のガラスが割れていく。
『チュウウウウウウウハアアアアアアア!!』
黒いナニカがペヅマウの鍵爪にまとわりつき、鍵爪のようなものを形成した。
『オオオオオオオオオオオオオオオオ!!』
ペヅマウの咆哮が、第二ラウンドの開戦を告げた。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
ブクマしてくれた方々、この場を借りてお礼を言わせてください!ありがとうございます!
この作品を楽しんで頂けたのであれば、作者としてとても嬉しく思います。
次回も、ぜひ。
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