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元人間の怪人・フェルゴールの行く末  作者: 湯田一凪
2章 怪人フェルゴールと再会
23/71

再会

 

 やがて、発信機が反応する目的地付近に到着し、芹澤は警戒しながら静まった周囲を歩いていた。


「芹澤!」

「……!」

「芹澤っ!」

「なんだよ!」


 村主の呼びかけに、芹澤がようやっと返答した。


「一体なにがあったってんだよ!」

「そうよ!あの怪人が生きてるって!」


「はぁー…………」

(飛鳥井話してなかったか……ま、そうか。)


 芹澤が隠れてため息を吐き、四人に向き直った。


「俺が最初にあの怪人と競り合った時、アイツの手に発信機を仕掛けておいた。だが、その発信機が未だに反応している。本当にあの時……あの怪人が爆発したのなら、その発信機も一緒に壊れるはずだろう!?」

「……いつの間に……!」

「じゃあ、」

「そうだ、この先に……いる!」

(!動きが止まった!っ!あのビルの上だ!)



 すると、そのとき



 ドンッと



 上から重力が襲いかかるような



 心臓が握る潰されるような



 威圧感が俺達を襲った。



 ♢♢♢



 ガーディアンズ 日本支部


 ヴィィィィィィィイイイイイイ!!!

 ヴィィィィィィィイイイイイイ!!!

 ヴィィィィィィィイイイイイイ!!!


「きっ……危険度レベルS!危険度レベルSです!!とんでもない怪人が現れました!!出動できる隊員は全員出動してくださいっ!急いでっっ!」


 ガヤガヤ……!

 驚愕と動揺が、ロビーに広がる。

 オペレーター室に、誰かが入ってきた。


小鳥遊(たかなし)さん!」

九条(くじょう)さん!」

「オペレーターのお仕事、手伝います!」

「お願いします!それにしても……こんな危険度の高い怪人がなんで……!」


 不安のある声が思わず小鳥遊の口から出た。ヘッドセットをつけて、九条がオペレートの用意を始める。


「……わからない……でも、俺達には、俺達の出来ることをやるしか……!」

「そう、ですね……九条さん、お願いします!私はすでに出撃している第一、第六小隊と出撃準備中の第二を!九条さんは今待機している第三、第四、第五小隊をお願いします!」

「了解っ、付近にいる小隊は……!?」

「第六小隊……飛鳥井くん達です!」

「っ!そうか……!まずいな……なんとかして、第一小隊と合流させなければ……」


 あいつらは、全滅するかもしれない……!



 ♢♢♢



「な……なに……」

「これ、は……」

「お、オエッ……」

「ハァ……ハァ……!」


(この殺気……このプレッシャー……化け物がいる!なんだ……!)


 震えが……止まらない……

 怖い

 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い


 一歩も、動けない……!


『さてと、すぐに終わらせるか。』


 瞬きと同時に、目の前に……あいつがいた。


 音も無く、一瞬でビルの上から降りてきたっていうのか……


「鎧の……怪人……!」


 その姿は以前と比べてずっとキズだらけだったが、額の角と左肩の青い31の数字……間違いない……


 あのときの、鎧の怪人だ……!


 だが、一体どこから……!


『お前か……』


 こいつが……このプレッシャーの正体……!


 あのときと……覇気が……全く違う……!


『はぁ、面倒な仕事を増やしてくれるなよ。……こんなものつけてさ。』


 そう言って鎧の怪人は手に持っているものを見せた。その手には、俺がさっき剣の怪人につけた発信機が付いていた!


 ……やられた!


 絶望感でいっぱいだった。

 嫌な汗がさらにドッと吹き出したのがわかる。


『ふう……さて、君達。聞きたいことがあるんだけど……』

「ふざ……けるな……」

「しの、のめ……」

「誰が……お前の言う、ことなど……」

『じゃあ、そうしないようにすれば?まあ、全員動けないみたいだけど。』

「言われ、なくても……そう、してやる……」

『どうぞ。』

「ハァ……ハァ……お前、には……絶対、負けて……たまるか……!」


 東雲がプレッシャーに負けじと、立ち上がろうとする。


『……』

「彩くんの、為にも……絶対……!彩くんを殺した……お前達、は……絶対、許さない……!」

『許さない……?』


 ドォッ


 黒い鎧の怪人が放つプレッシャーが、さらに強くなった。

 まるで逆鱗に触れてしまったような、鋭い気迫が彼らを襲う。


「か……ぁ……!」

「な、ん……!」

(さらに……強く……!)


楠 彩莉(くすのき さいり)()()()にしたお前が……よくそんなことを言えたな。』

(見殺しに……した……?)


 俺が疑問に思っていると、目の前ではさらに現実離れした現象が起きていた。


 バキッバキッ


(地面にヒビ……!?マンガの世界じゃあるまいし……!こいつは俺達……いや、今まで見てきた怪人達とは遥かにレベルが違う……!)


「そんな、こと……!」

『俺が楠彩莉だから……いや、楠彩莉()()()からこそ思い出したことがある。

 お前があのとき、身につけていたブレスレットを使って今のように変身して戦えば!楠 彩莉は死ななかった!全ての始まりは……俺にバレてはいけないという気持ちを優先し、お前が守るべきときに守らなかった、お前の怠慢だッ!』

「黙れ!お前は……お前は彩くんじゃない!」

(私が……わたしが……わたしが……!)

「わたし、は……彩くんを、殺して、ない……!」


 東雲は涙を流しながら、叫んだ。


「ま……ずい……!」

(東雲の戦意が無くなった!)


『言い残す言葉はそれでいい?』


 ヒュン……


 一瞬で鎧の怪人は東雲の前に移動する。

 そしてその手には、黒い氷で作られた剣が握られた。


『天国で会えるといいね。君の言う、君の信じる彩クンに!』


(ダメだ……!)

「うご……けえ、えええ!」


 ガキイィン


「っあ……!」


 芹澤の持つレーザーランスが黒氷の剣によって弾かれた。


 いってえ……!

 なんてパワーだ……!

 腕が……痺れて……


『……ち』

「やめ、ろ……形はどうで、あれ!今、こいつを殺すと……お前、は絶対……後悔、する……!」

『よく、動いたな。』


 スッと鎧の怪人が腕を振り上げた。


(やばい……!今のでレーザーランスは……)


 レーザーランスはさっきの怪人の一撃で遠くまで吹っ飛んでいた。


 彼、芹澤 七樺(せりざわ ななか)は人生三度目の極限状態の中、頭が"死"という恐怖に染まった。


 だが、彼に襲った出来事は……全く予想だにしていないものだった。


『やめた。』

「……!」


 黒い鎧の怪人が、俺を殺すのを止めたのだ。


「なん、の……つもり、だっ……」

『君はあの時……"許せ"と言った。その言葉に俺なりの形で、今は君を許そうと思う。』

「……!」

『君の気持ちを今は汲もう。ただし、次はない。』


 次の瞬間、トンと軽い衝撃が背後から俺を襲った。


 そしてなす術なく、俺はそのまま意識を失った。



 ♢♢♢



(芹澤……!)



『だから、君達3人に借りを返すとしようか。』


 そう言うと、黒い鎧の怪人は村主の方へと歩いて行った。


『やあ、人間サマ。』

「ひっ……!」

『楯突かせてもらうよ。』

「いやああああああ!!!!」


 ドンっ!!

 メシメシ……


 大砲から発射された砲弾のような一撃が、村主に直撃した。


 バキバキ……!


「ごぶっ……」


 村主はいくつもの建物を貫通して吹っ飛んで行った。


『しまった……やりすぎた。相手は人間だったな。』


 どこまで飛んで行った……

 たった蹴り一発の威力じゃない……


 確実にスーツのプロテクターがなかったら、村主は死んでいただろう。


(あの様子じゃ話は聞けそうにないが……とどめはさしておこうか。)


 黒い鎧の怪人が動いた。

 間違いなく、村主を殺すつもりだ!


「やめ……ろ……!」


 声を振り絞る。

 それに反応し、黒い鎧の怪人がこちらを向いた。


「飛鳥、井……」

『……それじゃあ、君にしよう。君達のアジトはどこにある?』


 黒い鎧の怪人が俺に問う。

 そんなこと、答えるわけない。


「誰が……教え、るか」

『……そうか。』


 ボキィボキィ


「っがああああああああああ!!!!」

「いああああああああ!!」

『女の人を痛めつけるの……苦手なんだよな……』


 怪人は俺の右足の骨を蹴り砕いた。

 そのせいで立っていられず、俺は地面に倒れ込んだ。

 同時に、王城の足が黒い氷によって氷漬けになった。


『君が答えないと、彼女が凍りついちゃうけど……いいの?』

「う、く……!」


 東雲は普段の様子からは想像できないほど、覇気が無く、呆然としている。

 目は開いているが、意識があるのかすらわからない。


『君達のアジトはどこにあるの?』

「……っ!」


 ボキッ!


「っが……!?!?!?!?」


 腕が踏みつけられる。

 踏みつけた虫をしっかり殺しきる人間のように、入念にグリグリと踏みつける。


 腕が……!

 叫び声すらもう、出ない……


 王城の下半身が凍りつき、徐々に黒い氷が上へ上へと侵食していく。


『君も馬鹿だな。今さっさとアジトの場所教えて、この危機を回避して、後からアジトのことを考えればいいのに。』


 そんな余裕、もう彼……飛鳥井にはない。

 しかし、その"余裕がないこと"すら飛鳥井自身は気づいていなかった。

 "なんとかなる"、"大丈夫"という根拠の無い自信があったからだ。


 だが、そんな淡い自信は無情に打ち砕かれることとなる。


「ハァ……ハァ……」

『最後だ、今度は顔を砕く。お前達のアジトはどこにある。」

「……!そ……な……」


 喋る力さえ残ってない……!

 なんでこいつはこんなこと平気でできるんだ!?

 怖い

 助けて

 怖い

 助けて

 怖い

 助けて

 怖い、怖い

 助けて……!


『はぁ……残念。振り出しか。』


 黒い鎧の怪人の手が俺の頭を持ち上げた!

 そのまま頭を砕く気か!?

 プロテクターのないヘルメットでは、間違いなく俺の頭は握り潰されるだろう。


「ア……アア゛……」


 ああ、もうダメだ……!


 助けて……!


 タタタタッ


『!』


 すると、突然黒い鎧の怪人が俺を後ろにぶん投げ、防御の姿勢をとった。



 ウィィイイイイイイン!



 バイクの音だ。


 何者かがバイクごと黒い鎧の怪人に突っ込んだ。

 黒い鎧の怪人が、黒氷の剣でバイクを切り裂く。

 バイクを切り裂いた先には、()()()()()()()


(上か。)


 黒い鎧の怪人が気づいた。

 上にいる何者は武器を構え、勢いそのまま黒い鎧の怪人に迫り来る!


 上の影がどんどん大きくなる。

 そして--



 ガキイィン!



 二人の武器が競り合う。


 キキキ……


「お前か……おれの後輩可愛がってくれたのは……!」


『……』


 黒い鎧の怪人が相手の反動を利用して、斬り返そうとするが、彼はすぐさま身を退いた。


 彼が両手に持つのはレーザートンファー。


「俺も、相手してもらおうか。」


「さ……わたりさん……!沢渡(さわたり)さん……!」


 涙を流しながら、飛鳥井が名を呼んだこの男。


 沢渡 未来(さわたり みらい)


 ガーディアンズ日本支部最強の第一小隊を束ねる隊長であり、ガーディアンズ日本支部……最強の男である。


最後までお読み頂き、ありがとうございます。

この作品を楽しんで頂けたのであれば、作者としてとても嬉しく思います。

次回も、ぜひ。


Twitter→@ichinagi_yuda

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