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元人間の怪人・フェルゴールの行く末  作者: 湯田一凪
1.5章 怪人フェルゴールと邂逅
14/71

No.3 レブキー

比較的長めです。

お時間ある時に、ぜひ。

 

 ピッ、ウィーン、


「失礼します。」



 ギュイン

 ガガガ……

 ガコーン、


 フェルゴールが訪れた場所は開発室。そこには、六本ある手を器用に駆使しながら、寝台に乗ったなにかを開発していたヒトケタがいた。


「おやおや、フェルゴールデスか?」


 レブキーはゴーグルを上げて、黒スーツの人間態フェルゴールの方を見た。


「え、何でわかったんですか?変想(チェインジ)を使っているのに。」

「カラダから微弱なグラッヂを感じますデス。その凍てつく様なグラッヂは、フェルゴールしかいませんからネ。まだまだデス。」

「そうか、こうか……な?」

「よくなりましたデス。あとはラヴェイラとの訓練次第ですね。」

「あの、」

「?」

「すいませんでした。レブキー 。」

「ン?ああ、気にしなくていいデス。現にアナタはもう()()()いマス。問題ではないデス。」

「ありがとう、ございます」


 ここ、レブキーの開発室の壁一面にはレブキーの創った武器が並んでいた。

 元々ここにはレブキーに武器の使い方を教わりに来たのだが……ここまで様々な武器があると、思わず見入ってしまう程に圧倒されてしまう。


「すごい……」

「おや、アナタにはワタシの作品がわかるみたいですね!」

「一つ一つがカッコいい……どれも全部デザインが凝って……ん?」


 寝台のようなものの上に、人型の何かが乗っていたのが垣間見えた。


「発明の途中でしたか?」

「そんなところデス。」

「No.32……」

「そう……アナタの次のデベルク、デス。」

「……あの、」

「ハイ?」


 顎に手を当てながら、フェルゴールは自分の思ったことを言った。


「コスパ悪くないですか?」

「こすぱ?」

「コストパフォーマンス。要は、地球行っても、結局ガーディアンズとかいう奴らにやられるだけのデベルクなら、ただ損するだけじゃないですか?素材や費用に見合うだけの収穫があればいいですけど……事実、今までヒトケタ以外のデベルクは俺以外やられているんでしょう?」

「フム……では、どうすればいいデス?」


 フェルゴールは顎から手を離し、レブキーを見据えた。


「リサイクル、再利用すればいい。敗北したデベルクや……地球人を。」


「……どういうことデス。」

「貴方がデベルクを何度創っても、ただやられるだけなら素材の無駄。

 だったら、やられる前に回収して戦わせて判明した弱点の修復や、そのデベルク自体の強化をすればいい。レブキーのやりたい実験も兼ねて、ね。

 その方が何度も新しいデベルクを創るよりは、費用や素材を抑えられるのでは?」

「デスが……デベルクの方はともかく、地球人が我々に協力するとは考えにくいデスヨ。」

「ああ、地球人の方は全く問題ない。いくらでも被検体がいると思ってくれて構わない。

「根拠が……あると?」


 ハハと笑うと、フェルゴールは続けた。


「なあ、レブキー 。地球人は、地球上最も愚かで欲深い生き物なんです。俺はそう思います。

 同族への支配欲や復讐心、恨みに怒り、嫉妬や傲慢によって人を辞めたい奴や人を超えた力を欲する奴は喜んでデベルクになるかと……」

「カカカ……カァアアアアッカカカカカカカカッ!!!!!!地球人だったからこその観点デスネ、フェルゴール!」


 フェルゴールはニヤリと口元を緩ませた。


「面白い、実に面白い!!費用はともかく、悪くない……悪くないアイデアデス!ゼスタート様に相談してみるか……しばらくは油断させる為にもジャリアーを地球に行かせて……このアイデアがゼスタート様に了承された時は、フェルゴール手伝え!いいデスネ!」

「ええ、喜んで手伝います。レブキー 。ん?」


 一つの大鎌に目がいった。

 他の武器のデザインに比べて、随分とシンプルな作りをしていた。


「これは?」

「過去に、No.13……シニガミが使っていたタブレットアームズデス。」

「タブレット……アームズ?」

「超強力な携帯武器のことデス。ヒトケタや特異なデベルクが所持できマス。こういうのデス。」


 そう言ってレブキーは懐から銀と黒の半分半分で色分けられた錠剤(タブレット)を取り出した。

 レブキーがタブレットを握って砕くと、瞬きする間もなくディテールまで凝られたブーメランが出てきた。


(すげえ……めちゃくちゃかっこいい……なんというか、男心をくすぐるものがあるな……!)


「ヒトケタは自分で各々のアームズを創り、特異なデベルクは私が創ってマス。ワタシがデベルクの身体を創っているので、どのようなアームズを創ればいいかはワタシが1番わかってマスからネ。」

「これ……多分、見たことある。ヴァルハーレが瞬時に杖を出したのって……」

「ええ、ヴァルハーレのタブレットアームズ『闇賢者の錫杖(ワイズマンスタッフ)』デスネ。」

「じゃあ、この鎌もタブレットアームズなのか?」

「そうデス。」

「なんで、それがここに……?」

「シニガミの……彼の、遺品デス……」

「そう、か……」


 かちゃり、


「ッ!マ、待て!」


 レブキーが叫ぶも時すでに遅し。

 フェルゴールはその大鎌を手に取った。


「軽い……」

「バカな……フェルゴール、アナタ……なんともないのですか!?」

「ああ、別にこれといって……うわっ!これ、ガトリング砲だ……すごい、地球の武器をここまで改良できるのか……」


(ってか、デザインが良すぎる……!)


「……すごいな、レブキー !」

「……!カカ、そこまで褒めても……って違う!話をそらすな!なぜお前が持っても倒れない!?それはシニガミにしか扱えなかった失敗作デスヨ!?」

「わからない……何が問題なんです?」


 そうフェルゴールが聞くと、真剣な顔つきになってレブキーが話し始めた。


「それは、No.13……シニガミの使っていたタブレットアームズ『死神の大鎌(デスサイス)』。

 シニガミが持つと普通の大鎌から姿を変え、相手の生命力やエネルギーを一気に吸収できマスが、持ち主の生命エネルギーやグラッヂまで吸収する問題児。

 私が創り始めた頃に開発した武器なので仕方ないデスネ。

 ……まあ、その分能力や実力もブッ飛んでいますガ……」

「俺が持っても、普通の大鎌と変わらない。どうすればいいんだろう……」

「仕方ないデスネ。まあ、問題ないデス。アナタ専用のタブレットアームズは、もうじき完成しますから……」

「能力の、オーラを……」


 ヒュウウオオオオオオオ……


「これはオーラ……もう出せるようになったのデスか……!」

(もうオーラを出せるとは……ヴァルハーレ。アナタ相当、フェルゴールに入れ込んでいるみたいデスネ……!)


「纏わせる……!」

「なんと、形状が……!」


 大鎌のデザインが変わった。

 鈍色の刃で白い柄だった大鎌は、

 刃が黒く変化し、柄がインディゴに染まった。


「変わった……!」

「ナルホド、そういうコトデスか。」

「え、うわっと……」


 フェルゴールの変想が解け、元のヨロイの姿に戻った。


『くっ……』

(オーラを纏わせるのに集中したせいで、変想が(おろそ)かになったのか……)


「おや、随分と()()()()みたいデスネ。」

『はぁ……く、食われた?』

「オーラデスヨ。アナタの。そして、一つ分かったことがありマス。」

『それって……?』

「アナタの変化させた形態とシニガミの変化させた形態は異なっていたんです。」

『えっ……!?』

「つまりそれは死神の大鎌(デスサイス)ではないということデス。彼の死神の大鎌(デスサイス)は……白くまばゆい刃と、それに反した漆黒の柄デシタ……。」

『そう、か……』

(本当に……アイツは……!シニガミ、アナタは本当に消滅したのデスか……?この大鎌の変化が……ナニかの兆しの気がしてならない……!ゼスタート様に逆らった、唯一のデベルクだったお前は!それとも……!?)


『レブキー……?』

「……!イヤ、なんでもない。なんでもないデス……。」

『そう、か。』

(まさか……イヤ、それはないデショウ。そう、思いたいモノデス。)


「フゥ……これでは、ワタシがアームズを創ったイミがないデスネ。」

『え、でも、完成してないんだろう?俺のタブレットアームズを創ってくれるのは、嬉しいけど……俺のタブレットアームズって何?どんな武器?」

「すぐそばにあるそれデス。」


 レブキーが指さした先にあったのは、先程フェルゴールが見ていたガトリング砲だった。手で持てるサイズだ。


『え、マジ……本当に!?』

「?ええ、本当デス。」

『このガトリングが!?俺の!?』

「そうデス!まだ改良は必要デスが……」


(すごい……興奮する。すごく嬉しい……!)


『レブキー!』


 ガバッとフェルゴールがキラキラした目でレブキーに近づいた。


「なんデス!近い!どうしたんデス!?」

『手伝わせてくれ!俺の武器だろう!?』

「……ハァ、」

『わかった。手伝わせてくれたらレブキーのデベルク開発に欠かせない、インスピレーション満載の面白い所に連れて行きましょう。その上、俺の知ってる地球の武器の情報や知識を提供します。これでどうですか?』

「乗っ、たァァァア!!!」

『よし、じゃあ……まずこの大鎌の使い方教えてください。』

「待て。アナタ、コッチじゃなくて、その大鎌使うつもりデスか?」

『いや、両方使います。』

「ハ?」


 レブキーが思わず、間の抜けた声を出した。


『レブキーが武器の扱い方教えてくれるんでしょう?でも、そのガトリングは完成していない。なら、せっかくだから両方使います。使いたいです。レブキーが創ったすごい武器なのに、誰も使えないからと放置されているのは不憫すぎる。この鎌は、俺が使う。異論ありますか?』


 (おそらく)笑顔で聞くフェルゴールに、思わずレブキーはため息を吐いてしまった。


「どうせ言っても聞かないデショウ!」

『ああ、悪い。2つ共気に入った。2つ共使いたい……!』

「全く……!ワガママデスネ。わかりましたヨ!その鎌が、あの死神の大鎌(デスサイス)と同じ効果を持っているなら、面倒で仕方ないですが……身をもって教えてあげましょう。タブレットアームズの扱い方を!」

『ああ、頼む……!』

「もちろん、ここではやりませんヨ。」

『それくらいは俺でもわかりますよ!』



 ♢♢♢



「ゼスタート様、お時間を頂きありがとうございますデス。」

『構わん。どうした、レブキー。』


 今ここには、ゼスタート、レブキー、ヴァルハーレ、ゲンブ、そしてラヴェイラがいる。

 レブキーがゼスタートに頼み、中枢エリアに皆を集めた。


「フェルゴールが、シニガミのタブレットアームズ『死神の大鎌(デスサイス)』を装備できました。」

『そうか』

「本当か、レブキー。」


 ヴァルハーレがレブキーに尋ねた。


「ええ、ただ死神の大鎌(デスサイス)ではなくなりました。彼がオーラを通したことによって、死神の大鎌(デスサイス)が形状を変え、彼のアームズに……!」

「なんじゃと!?オーラ、あやつ……もう出せるようになったか!」

「当たり前だ。誰があいつに教えていると思ってる。」


 ゲンブが驚き、ヴァルハーレがさも当然のように言う様を見て、ラヴェイラが口を開いた。


「今の問題はそこじゃないでしょう。問題は死神の大鎌(デスサイス)よ。シニガミはもう消滅したはずでしょう?なぜあのアームズが今更……」

「ワタシは……なにかの前触れの気がしてならない……やはり、アイツにシニガミのパーツを使用したのが悪かったのデショウか……」

「どういうことだ。」


 ヴァルハーレが問うと、この場にいる皆がレブキーを見据えた。


「フェルゴールに偶然適合したのが、シニガミの遺品のパーツだったのデスヨ。今までデベルクを創る機会で使おうとしても、拒絶反応を起こしていたシニガミの遺品が、フェルゴールには拒絶反応なく適合したのデス。逆に他のモノでは、フェルゴールには適合しませんでしたカラ……」


「なんと……」


 レブキーの答え(アンサー)に、思わずゲンブがこぼした。


「フェルゴールはある意味、奇跡のデベルク。シニガミのパーツが使われたのだとしたら、シニガミの武器を奇跡的に使えてもおかしくはないということか……」


『お前達。』

「「「「っ!」」」」


 ゼスタートの声がより厳格に響いた。

 それに反応し、全員が膝をつき、礼した。


『お前達は、根本的に間違っている。』


 ゼスタートの虹色の目が輝く。


『シニガミとフェルゴールを比べてはならぬ。フェルゴールはシニガミと同じデベルクであるが、違う。全てが違う。事実、シニガミとは違い、フェルゴールは私に忠誠を誓った。フェルゴールは地球人から受けた痛みを知り、我々と共有している。シニガミと一緒にしてはならぬ。フェルゴールはフェルゴール。それ以上でも、それ以下でもない大切な存在だ。』

「ゼスタート様……」

『むしろ喜ぶべきではないか、死神の大鎌(デスサイス)というレブキーの狂った武器を操れる奴が現れたのだ。』


 ゼスタートが言葉を続ける。


『あやつのタブレットアームズが、死神の大鎌(デスサイス)と根本的に違かったとしても、データが死神の大鎌(デスサイス)のものしかない。戦闘データもシニガミのもののみ。どう育てるかは、お前達に任せるぞヴァルハーレ、ゲンブ、レブキー。お前達にかかっている。』

「「「ハッ!」」」

『さて、レブキーよ、フェルゴールの言っていたことはなんだ。』

「ハイ、フェルゴールのアイデアなんですが……震えましたヨ!」


 レブキーが生き生きとフェルゴールのアイデアを話した。

 デベルクをやられる前に回収するようにし、その度に補修や強化を施すようにすること。そして、地球人をデベルクに出来ないかという、アイデア。


「な……!」

「地球人を……」

「デベルクに……!?」

「可能デショウか?」


 ヴァルハーレ、ゲンブ、そしてラヴェイラが驚く中、レブキーが問う。


『恐らく、だがな。』


 帰ってきた答えは、予想だにしないものだった。


「本当ですか!?」

『必ずフェルゴールのように100%成功するとは限らぬ。だが、成功例はフェルゴールのみ。あやつのように、人間時代の記憶が残ってしまう可能性も考慮せねばな。

 地球人を使った新たなデベルクは興味深い。』


 ゼスタートは改めてここにいる四人のヒトケタを見据えた。


『近いうちに、ヒトケタを全員集める。話はそのときだ。』

「っ!」

「ゼスタート様。お言葉ですが、()()()()は来ないかと。」

「ワシもそう思いますぞ。」

『いや、来る。絶対に、な。』


最後までお読み頂き、ありがとうございます。

この作品を楽しんで頂けたのであれば、作者としてとても嬉しく思います。

次回も、ぜひ。


Twitter→@ichinagi_yuda

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