Scene31 いざ、王城へ!
しばらく経った、真っ暗な夜。
彼らを照らすのは頼りない星明かりだけ。シルヴァの心臓はバクバクしていた。
「つ、ついに……」
新月の日、それは王城へ乗り込む日だ。
先生とリーシャ、そしてシルヴァは家の外から王城の方を見た。わずかに光が見えるので、夜でも分かりやすい。
「さてと、準備はいいかな」
先生が心配そうな二人の顔を見て、優しく頭を撫でた。
「どうしたの、心配そうな顔して。大丈夫、なにも怖くないよ。君たちはここ最近、ずっと魔法の練習を頑張ってたじゃないか」
ニコッと微笑む先生の顔を見ても、シルヴァとリーシャの顔は晴れなかった。
怪我をする覚悟も、死んでしまう覚悟も出来ていたのに、いざ出発となるとすくんでしまう。
「……怖いかい?」
先生の言葉に、二人は頷いた。
「それはね、僕も同じさ。だけど、行くなら今しかないよ。……それとも、やめとくかい?」
二人が首を振ると、先生は静かに笑って二人をほうきに乗せた。
「ほら、行こう」
問答無用にほうきを浮かせ、三人は王城の方角へと向かった。
しばらくし、城下町を横切る途中、ニースヒールの声がした。
ふわりと降り立つと、ニースヒールとメリッサが駆け寄ってきた。
「よっ、頑張れよ」
「これね、メリッサ、作ったの!」
そう言ってメリッサは三人に綺麗なブレスレットを手渡した。
ガラスでできた、輝く星の飾りがついていて、星明かりに呼応するかのように光っている。
「わあ、ありがとう」
シルヴァが手首にブレスレットをつけると、ニースヒールが近づいた。
「あんまり無茶するなよ、お嬢さんも。お前らはまだ子どもなんだから、大人に守ってもらえ。……まぁ、守ってくれるのはその先生しかいないがな」
「うん、大丈夫。ぼくたち強くなったんだよ! 終わったら、手合わせしようね」
「楽しみにしておくよ」
シルヴァとナースヒールが笑いあい、リーシャと先生がお礼を言うと、ほうきで王城の方へ向かった。
「よし、この窓から入ろう。中に誰もいなさそうだし」
先生が火でそっと窓を割ると、三人は静かに中へ入った。
大きな、何もない部屋。
壁に歴代の国王の写真が飾られているだけだ。
「行こう、早く女王に会わないと」
先生が周りをよく確認して、廊下に出た。
王城はとても静かで、巡回兵さえ見当たらない。
まるで三人から身を隠しているようだ。
「女王さま、どこにいるんでしょう……?」
リーシャは先生に聞くが、先生は特に何も答えず、廊下を歩いていた。
「別れた方がいいんじゃない? そっちの方が効率良さそうだよ」
シルヴァが言うと、先生は「うーん」と言った。
「確かに効率は良いだろうけど、もし誰かに見つかった場合は厄介だよ」
「大声を出せば大丈夫じゃないですか?」
「……それだと王城の、他の人にも気づかれるだろ」
「そっか」とリーシャが言うと、また三人は黙り込んだ。
王城はとても広くて、途方に暮れそうだ。
曲がり角を曲がると、人影が見えた。
「誰⁉︎」
先生が慌てて防御魔法で三人を守る体制に入った。
しかし人影は特に動かず、先生たちは恐る恐る近づいた。
「あっ!」
シルヴァが声を上げた。
そこにいたのが、あの水色の女の子だったから。
「君は……」
「知り合い?」
先生が聞くと、シルヴァはこくりと頷いた。
「なんて子なの?」
「……分からない」
シルヴァが首を振ると、女の子はムスっとして答えた。
「私には、名前なんてありません」
「名前……ないの?」
シルヴァが聞き返すと、彼女は恥ずかしそうにして俯いた。
「……君は、女王の味方なの?」
先生が少し警戒しながら、そっと彼女に近づく。彼女は先生の目をジッと見つめた。
「……前は」
「前は?」
「……もう、やめたの。あの人、シルヴァのこと、道具としか思ってないみたいよ。このままじゃあ、あなた、ひどい目に遭っちゃうわよ」
静かだが芯の通った声に、シルヴァは唾を飲み込んだ。
「……ぼくたちはそれを止めに来たんだよ」
シルヴァが言うと、彼女は少し心配そうにした。
「あなたが? いくらあなたでも、厳しそうよ」
シルヴァは自信満々に言った。
「大丈夫! ぼく、一人じゃないんだよ。先生も、リーシャもいる。だから大丈夫。……君も一緒に行く?」
シルヴァが手を差し伸べると、彼女はそっと手に触れた。
「連れて行くの?」
リーシャが心配そうに聞くと、シルヴァは満面の笑みで頷いた。
「君に名前つけてあげる!」
「名前?」
「うん、えーっと……そうだ! 君の名前は、ヴァニラ!」
「ヴァニラ?」
彼女が少し嬉しそうに言うと、何度も「ヴァニラ……」と呟いた。
「なら、早く行こう。ヴァニラ、君は女王の居場所分かるかい?」
先生の質問にヴァニラが頷くと、ヴァニラに続いて三人は歩き始めた。
その間に自己紹介を進め、緊張を忘れようと雑談をしながら歩いた。
その間は不気味なくらい誰とも会わず、何事もなく歩くことができた。
ちよっと私情でいろいろあって、更新ペース遅くなりそうです……。
ホントにごめんなさい!




