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Scene30 重い足枷

 広くて冷たい王城。


 かつてシルヴァを二度も襲った水色の髪をした少女は考えていた。


(自由……。あの子は、私も自由になれると言ってたわ。……今まで考えたことなんてなかった)


 あの言葉を言われて以来、彼女の心は彼の言葉で埋め尽くされていた。


 その翌日は、生まれた時から付けられた足枷を、初めて邪魔だと思った。どうしてあんなに彼の言葉を気にしているのだろう。



(自由になれる……? いえ、そんなのただの妄言に決まってる)



 頭の中の、彼の笑顔をかき消した。

 彼に会いたいと思ったことはないことはないけれど、会ってどうするつもり?



 他にも女王の元から逃げ出そうとした人を何人も見てきた。


 彼らは決まってすぐに殺されてしまう。

 私たち、女王の魔法で生まれた奴隷たちは女王が握っているのだから。



(はぁ……。どうして最近はこんな憂うつなのかしら。昔は何も考えずにいれたのに。……私に自由を教えた彼のせいね)


 彼女は小さな部屋から大きな廊下に出た。散歩がてらに城の中を歩いていると、女王と王の声が聞こえてきた。



「やっぱり星の子の力はどうしても欲しいわね」


「ふむ……、そんなに役立つものなのか? 俺としては、シルヴァとかいう小僧よりもあのフィルフィーリィとかいうやつの方が役立ちそうだがな」


「星の子の力、知らないのね。あの子はきっと、すでにあの力を手に入れてるわ」


「星園とかいう?」


「ええ、どんな願いも叶える魔法よ。その魔法を使えば、血を流さずに領地を広げられる」



 彼女は扉の細い隙間から、部屋の中をそっと覗いた。


 女王は口を緩めていて、国王の顔は見えない。



「そんな魔法を持つ彼を、何としてでも彼を手中に入れるべきじゃない? たとえ心を壊しても、ね」



 その言葉を聞いて、彼女の頭は白くなった。


 心を、壊す……?


(心を壊されたら、どうなるのかしら? 彼は、私みたいになるのかしら?)


 食い入るように見入っている内に、つい扉を押し開けてしまった。



 ギイ、と扉の軋む音がして、中にいる二人が扉の方を見た。


「誰、誰かいるの?」



 彼女は慌てて部屋に戻った。

 重い足枷のせいで上手く走れなかったけれど、何とかバレずに済んだようだ。



(どうしよう、彼を、何とか守ることはできないのかしら? ……難しい話よね、私が女王に逆らうなんて。……でも、でも……)



 彼女は小さな窓から空を見た。

 綺麗な太陽が輝いていて、彼女の部屋に光を落としている。



 鳥が自由に羽ばたいているのを見て、彼女は足枷にそっと触れた。

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