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Scene 3 黄緑と白

 夢を見た。

 広くて綺麗な草原で、黄緑の髪をした少年と、白くて小さな男の子が並んで座っていて、シルヴァはそれを少し遠くから見ていた。二人は全くシルヴァに気づいていない。これは、シルヴァの昔の記憶なのだろうか?

 シルヴァは頭の中の記憶を探るが、こんな綺麗な草原も、あの二人も知らない。でも、どこか懐かしく感じる。物心がつく前の記憶だろうか?


 空には綺麗な月が浮かんでいて、瞬く星はあたかも2人を優しく見守っているようにも見えた。たまに吹く風は優しく草花を揺らし、葉を少し遠くへ運んで行く。



「ねえ、ニー。今日は少し寂しそうだね。どうしたの? いつもならたくさん追いかけっこしたり隠れんぼするのに。ニー、もしかして具合悪いの? それとも、ぼくといるのは楽しくない?」


 白い少年は困った顔をして黄緑の少年を見た。


 シルヴァは最初、兄弟かと思ったが、直感で違うと感じた。なんとなく、雰囲気が違う。



──違う。兄弟とかの問題じゃない。あの白くて小さな男の子は、ぼくたちこの世界の人間とも違う。しっかりとした、だけど根拠のない直感だがシルヴァにはどこか確信があった。

でも、どこが? シルヴァがモヤモヤしていると、ニーと呼ばれた黄緑の少年が口を開いた。


「違う……。楽しくないわけがない。でも、でも……」


 少年の目は涙が浮かんでいた。白い子がそっと指で涙を拭いてあげていた。


「ステラといるのはものすごく、楽しいんだ。だけど、だけど……」


「どうしたの、ニー。なにかあったの? 言ってみてよ」


 黄緑の少年は、ステラと呼ばれた白い子をじっと見た。




「もうすぐ、お別れしなきゃいけないんだ」



 白い子は紅い瞳を大きく開いた。


「もうすぐって、いつ?」


 黄緑の少年は顔を伏せると、震えた声で話す。


「さあ……。詳しくは分かんねえけど、多分あと二、三日ってところだ。こんなにも辛いなら……あの日、星のお前を捕まえるんじゃなかった……」


「……。ニーは、ぼくと会わない方が良かった? ……ぼくは、ニーに会えて、すごく嬉しかったよ……? ニーがあの日、ぼくを捕まえてくれなかったら、ぼくはそのまま消えてしまってたもの。ねぇ、ニー……」



 シルヴァの心臓が、キュッと痛くなった。

 二人の顔は、とても悲しそうで、今すぐにでも慰めてあげたいくらい。

 シルヴァが一歩近づこうとすると、いきなり目の前が暗くなる。


(待って……! まだ夢から覚めたくない。あの二人に近づいて、声をかけたいんだ……。夢だからきっと彼らは空想なんだろうけど、でも、でも……!)

 

頑張って手を伸ばすけれど、ただ弧を描くだけで、何にも触れられない。



ああ、意識が消えていく……。



 夢から、覚める──。

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