Scene28 真実は
夢から覚めたシルヴァは、部屋から出て水を飲みに行った。
リビングに続く扉を開けた瞬間、眩しい光でシルヴァは上手く目を開けれなかった。
「あれ、起きたの?」
何とか目を開けると、そこには先生がいた。椅子に座って、考え事をしていたようだ。
「喉が渇いたから、水を飲みに来たの。先生はまだ寝ないの?」
「うーん、ちょっと、寝れなくて……。最近、いろいろあったからね。シルヴァも、腕をケガしたんでしょ? 大丈夫なの?」
シルヴァはコップに入れた水を飲み干すと、服の裾を捲って腕を先生に見せた。
少し痕は残ったものの、痛みも消えている。
「平気だよ。もうなんともないから」
「そっか、なら良かった。そこならあまり目立たないしね」
優しく先生が微笑むと、シルヴァは先生の向かいに座った。
クリッとした赤く綺麗な目で、先生の顔を覗き込む。
「ねぇ先生、何か悩んでる?」
「え、どうして?」
「んー……、なんとなく?」
子供らしくシルヴァが笑うと、先生は顔を伏せた。
「シルヴァ、僕の言うこと、信じてくれる?」
顔を上げた先生の顔は真剣そのもので、シルヴァは一瞬きょとんとした顔をしたが、すぐにコクリと頷いた。
「……あのね、もしかしたら、僕は……僕は……」
空気が凍りついてしまいそう。張り詰めた空気の中で、お互いは顔を見つめ合っていた。
少しの間を置いて、先生が口を開いた。
「僕は、君のお父さんかもしれないんだ」
シルヴァはぽかんとした顔をしていた。先生はすぐに目をそらして、「ごめん」と呟いた。
「こんなこと言われても、信じれないよね」
「目の色」
「え?」
「目の色、ぼくと先生、同じだもんね」
シルヴァの目と先生の目。真っ赤な血のような赤色。
先生は「そうだね」とだけ言った。
「なら、ほんとに親子なのかもしれないね。なら、お母さんは?」
「……分からない。シャーロットは、どこにいるか分からないんだ」
「ぼくのお母さん、シャーロットって言うの?」
先生はコクリと頷いた。
シルヴァの目を見れない。気まずい。
言うんじゃなかったという後悔が押し寄せた。
言わなくても別に良かったじゃないか。どうして、言ってしまったんだ?
そんな先生の心の中を読んだかのように、シルヴァはにっこりと笑って言った。
「お父さんとお母さんのこと、分かって嬉しい」
先生はシルヴァを見た。
とても可愛い、笑顔。その顔のどこかにはシャーロットらしさもある。
「ぼく、ずっと不安だったから……。もしかしてぼくは、ホントはお母さんもお父さんもいないんじゃないか、って思ってたから……」
シルヴァは思った以上に先生の言葉を落ち着いて受け止めている。それが先生にとっては不思議でしかなかった。
「疑わないの? 僕の言葉」
「うーん、だって先生はウソなんてつかないし。なんか、納得できるというか」
「……純粋なんだね」
先生は少し呆れたような、そんな顔をしてニコッと笑った。
「人に騙されないようにしないとね。シルヴァは簡単に騙されそうだ」
「大丈夫だよ!」
とびっきりの笑顔を作るシルヴァに、先生は安心した。
「ふふ、ならいいけど。とにかく早く寝ないとね。背、伸びないよ?」
「大丈夫! 先生がホントにぼくのお父さんなら、いつか絶対先生みたいに大きくなれるから」
シルヴァは軽い足取りで部屋まで向かった。
「ねぇ、いつかお母さんに会いに行こうね? おやすみ、先生」
「うん、おやすみ」
シルヴァは扉を閉めたあと、その場にへたり込んだ。
(先生が、ぼくのお父さんなの……?)
必死に冷静を装っていたけれど、胸の内はもう経験したことのないくらい仰天していた。
(確かに目は同じ色だけど、そんなの確証はないじゃないか……。たまたま、ってこともあるし……。何か確かめれる方法があればいいんだけど)
その日、シルヴァは眠りにつくことはできなかった。
目を閉じればいつでもあのことを思い出してしまう。
こんなことになるなら、聞くんじゃなかった。
でも、それならお父さんのこともお母さんのことも分からなかったわけだし……。
(それに、どうやって振る舞えばいいの? 『お父さん』なんて呼びつらいし……)




