表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/39

Scene24 「お母さん」

 眩しい太陽の光が、シルヴァの顔に当たって、ようやくシルヴァは目を覚ました。


 太陽はすでに高く昇り、もう昼頃になっていた。家に帰り、眠りについたのがもう明け方くらいだったので、こんなに遅くまで寝ていたのは仕方ないことだ。


「ふわぁ……」


 大きく欠伸をして、着替えをした。いつもつけている星のブローチが、いつもよりキラキラ輝いていた。


 剣を突き刺された腕はまだ少し痛むものの、あまり気にするほどでもなかった。




 一階に降りると、すでにリーシャは起きていて、傷だらけの先生の手当てをしていた。

 先生は包帯をたくさん巻いていて、顔も疲れ切っていた。


「先生、どうしたの?」


 シルヴァがソファに横になっていた先生に近づくと、先生はシルヴァを少し驚いた顔をしてから、さっと目を逸らした。


「……?」


 普段は優しくしてくれるのに。今日は目も合わせてくれない。やっぱり、疲れてるからかな? そう思うと、あまり構いすぎるのもかわいそうなので、シルヴァは棚からパンを取り出して、遅い朝ごはんを取ることにした。



 半分くらい食べたころ、リーシャはシルヴァの向かいの席に座った。


「先生、寝たみたい。先生ね、昨日私たちを助けにお城まで行ったんだって。それで、女王様にやられちゃったみたい」


 リーシャは寝ている先生に聞こえないように静かに言った。それから静かに立ち上がり、コップに牛乳を注いでシルヴァに渡した。


「牛乳、飲まないと。背、伸びないわよ」


 いたずらっぽく笑うリーシャを、シルヴァは恨めしく見た。

 男のシルヴァだが、女の子のリーシャとあまり背が変わらない。今まで気にしたことはなかったが、こう言われると気にせずにはいられなかった。


「まだ成長期じゃないの。いつかぐーんと伸びるんだから! 先生くらいね」


「ふふふ、楽しみね。その頃には大人っぽくなってそうね」


 そう言うとリーシャはシルヴァの口周りについたパンカスを取った。


「あ……」


 恥ずかしそうにするシルヴァを、リーシャはニッコリと微笑んで見た。




 それからは魔法教本を見てしばらく過ごした。

 夕方頃になると、先生が目を覚まして、二人に近づいた。


「ごめんね、昨日は。僕がここを離れたばかりに……。二人には、怖い思いをさせちゃって」


 申し訳なさそうにする先生を、二人は慌てて元気を出させようとした。


「気にしないでよ、先生! あ、あのね、この前シルヴァにもらったお守りがね、守ってくれたの」


 シルヴァはびっくりして、いつもリーシャがブローチをつけていた服の襟を見たが、そこにはブローチはなかった。

 リーシャはポケットから粉々になったお守りを取り出した。


 シルヴァと先生はそれを興味深そうに見た。


「ふぅん……。これには古代魔法がかかってるね」


 先生がつぶやくと、シルヴァは興奮気味で「古代魔法って?」と聞いた。


「……今はもうない、ミシェラル王国の魔法だよ。とても複雑にできている分、効果はピカイチさ」


 リーシャは思い出したように前髪を上げて、額にあるお守りと同じ模様を先生に見せた。


「これも、古代魔法なんですか?」


「……そうみたいだね。君は本当についてたね」


 優しく微笑むものの、シルヴァにはその微笑みを見せない。シルヴァは少し不満だった。

 


「あのね、二人とも。


 ここは結界もなくて、女王にバレてしまってるんだ。ここにずっといるのは良くないことだから。


 シルヴァの『おばあちゃん』……ミシレーヌさんのところに行ってほしいんだ。


 僕も治ればすぐにそっちへ行くから」


「えっ、で、でも」


 先生は心配そうにするリーシャの頭を軽く撫でると、言葉を続けた。


「大丈夫。あそこには君が待ち望んでいた人もいるから。安心して」


 そう言うと先生は二人を外まで押し出した。まるで、早く二人を追い出したいかのように。


「シルヴァ、彼女の家がどこかは覚えてるよね」


「う、うん」


「なら、よろしくね。……ごめんね」


 先生はそう言うと優しくシルヴァの頭を撫で、家の中に戻っていった。



「行こ、リーシャ」



 シルヴァはリーシャの手を引いて、軽く空を飛びながらおばあちゃんの家へと向かった。

 久しぶりに、会える……。





 ミシレーヌの家のドアを叩くと、すぐにミシレーヌは出てきた。


 シルヴァの顔を見て驚いたが、リーシャの顔を見ると、より一層驚いた顔をした。

 今までにないくらい、驚いた顔だ。


「ど、どうしたの?」


 目が点になったおばあちゃんを、シルヴァは心配そうに見た。

 リーシャはじっと見つめられていて、ただびっくりしながら見つめ返すだけだった。


「あ、あなた……」


「え?」


「リー……シャ?」


 リーシャとシルヴァは目を丸くした。……どうしておばあちゃんが、リーシャのことを知っているの?


「え、ええ、たしかに私は、リーシャですけど」


「ああ、会いたかった!」


 おばあちゃんはぎゅっとリーシャに抱きついた。

 リーシャはなんだか懐かしい気になって、そっとミシレーヌの体を腕で包み込む。


「もしかして、お母さん……?」


「ええ……」


 リーシャはにっこり微笑むと、ミシレーヌも微笑み返す。


 シルヴァは目を疑った。


 たしかに、青い眼の色は同じだけれど、髪の色は違う。リーシャはピンクで、ミシレーヌは金色だ。


「ほ、ほんとに、親子なの?」


「ええ」


「髪の色、違うのに?」


 リーシャは嬉しそうにしていた。少し、シルヴァだけが部外者なので、孤立感を感じていた。


「大抵の女の子は、お父さんの髪色を受け継ぐのよ。男の子はお母さんね。だからシルヴァは、お母さんの髪色を継いでいるのよ」


「ふぅん……」


 それから家に入り、事情を説明してから夜ご飯を食べた。

 部屋は二人分も無かったので、リーシャと同室で寝ることになったが、シルヴァは「リーシャとおばあちゃんが寝ればいい」と言った。


「でも……」


 リーシャは困った顔をしてシルヴァを見た。


「せっかくの再開なんだから、二人で話したいこともあるでしょ? ぼくは一人で寝るから。ほら、リーシャだって女の子なんだから、男のぼくと寝るのはちょっと、ね?」


 頑張って笑顔を作ったものの、腹の中は寂しさでいっぱいだった。


 リーシャとおばあちゃんが親子だと言うのは本当そうだ。




(ぼくのお母さんとお父さんは……どこにいるんだろう。会いたいなぁ。ぼくも、お母さんやお父さんにギュってしてもらいたいなぁ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ