Scene22 その宝石の意味は?
シルヴァとリーシャは、何とか家にたどり着いた。家は少し破壊されていて、かつては守ってくれていた結界ももうない。
「はぁ、はぁ、はぁ……。先生、いないね……」
魔力の尽きかけたリーシャは息も絶え絶えで、今にも倒れてしまいそうだ。
それでも、熱心にシルヴァの傷の手当てをする。
「どうしたんだろう、もしかしてぼくたちがいないのに気づいて、探しに行ったのかな。……でも、ぼくたちが女王様に襲われた時も、先生いなかったよね」
「あ、そういえばね、先生、夜中にどこかへ出かけていたわ。だから、いなかったのよ! ……何か、用事があったのかしら」
リーシャはシルヴァの腕に包帯を巻き終えると、安心のため息を漏らした。まだシルヴァの腕からは血が出ているものの、包帯の圧迫によってほぼ止まりかけていた。
「ありがとう。……用事で出かけたのかぁ。なら、帰って来たら説明しないとね。とりあえず、今日はもう寝ないと……」
「そうね、でも、大丈夫かしら。先生の結界もないし……」
心配そうにするリーシャの手を、そっとシルヴァは握った。
「大丈夫。国王は倒したし、リーシャは女王様を痺れさせたんでしょう? なら、今日は大丈夫だよ」
にっこりシルヴァが微笑むと、リーシャは微笑み返して、部屋に戻った。
とても、静かな夜だ。三日月がもう沈みかけている。
朝明けが近づく中、二人は夢の中へと落ちていった。
二人が夢の中へ落ちたあと、フィルは家に帰って来た。
城の部屋を破壊したせいで体は傷にまみれ、また魔力も尽きかけている。
心もひどく疲れたフィルは、結界を張ることもなく、何も考えられずに部屋に戻り、ベッドに体を預けた。
その日、フィルは悪夢を見た。
……いや、一般的には悪夢ではないのかもしれない。
懐かしい、思い出の夢だったから。
シャーロットと、仲良く魔法の練習をしている……。
「ねぇ、フィル! やっとできたわ」
「何が?」
「貴方を幸せにする魔法よ!」
そう言うとシャルはフィルの鼻にそっと触れた。
フィルが顔を赤らめるよりも早く、フィルの鼻の周りに蝶が現れる。
それはヒラヒラと舞うと、やがて一点に集まり、そして綺麗な宝石となった。
それは、綺麗なムーンストーンだ。
「……これは?」
「フフフ、私からのプレゼントよ」
優しく、可愛く微笑むシャーロット。フィルはその宝石をじっと見つめた。
綺麗に輝く宝石。
何か、お返しをできればいいな……。
そんなことを考えながら、二人は魔法の練習を開始した。
夢から覚めたフィルは、机の引き出しからその宝石を取り出した。
少し霞んでいるけれど、まだ輝きは失われていない。
「……シャル、僕は、僕は……」
確か、その宝石の意味を知ったのは、シャーロットがフィルの前から去った後。
その意味は、
純粋な愛。
そのことを思い出すと、フィルの顔は赤くなる。
そして、あのことを思い出した。
「シルヴァ……」
(僕は、どうすればいい? シルヴァに、言った方がいい? ……君は、僕とシャルの子どもなんだ、って。……でも、でも)
フィルはそれから一睡もできずに、朝を迎えた。




