ツツジ
忙しなく飛び回るのはしょうがない
それが私の仕事なのだ
働き者といってしまえば褒め称えられようが
与えられた仕事をこなしているだけなのである
花から花へ
ひたすら蜜を求める
そう 女王の為に
結果として 自然界に貢献しているなどとは想いもよらない
それは働き蜂として当然の事なのだから
受粉を手伝っているかどうかは気にするよしもなく
両足に蓄えた実績だけが全て
蜜蜂なんて ただのハードな労働者にしか過ぎないのだ
遠巻きに眺めては怯える生き物よ
貴方達とて私達となんら変わり無いのではなかろうか?
とはいえ 私達とてそれは同じことであろう
明らかに上位種であり
私が一片の政治家であれば彼等は多分国家を翻す如く
まさしく反逆者であった
その威力は華々しく 私一人では太刀打ち出来ないであろう
だが 命を散らすまでもなく喚べば集う仲間達に喚起を震わす
幾重に折り重なる塊は熱を昂らせ
一介の敵を蹂躙せしめた
はらはらと散らす同士を他所に
蜜蜂としての指名を果たす
藤の花に群がる熊の蜂は私達を他所にしていたが
此処が戦場であり 死活なのだ
ミツバチは 今日も徘徊する
それはツツジだけではなく
花の蜜を求めて ──
空は蒼さに憂い 灼熱と湿り気だけが賑わっていくにも関わらず
蛍だけが夜を染めていった
巣に辿り着いても 儚く散らす灯火は
誰にも届きやしないのだろう
ただ せせらぎだけが埋め尽くしてゆくのが
もの苦しさを掻き立てていった
五月から六月にかけて
生き物は残酷に時を行き過ごしてゆく
なんとなく踏み締めた足許に散らばる命
そこには 壮大な物語があったのかもしれない




