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勇者転生の面接に落ちたので、俺は異世界で魔王になりました!  作者: 鮎 太郎
一章 面接落ちて、魔王になりました
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五話 新メンバーと過去

「ほ、本当なのですか?」


「何でわざわざ嘘つかないとならないんだ」


 ここまでの経緯と目的を話した俺たちは、あわよくば穏便に、森を通してもらえないか聞いた。

 最初から今まで、ずうっと本当なのですか? と壊れたロボットのように何度も、何度も繰り返し同じ質問をしてくる。

 そりゃ威厳はないし、ジャージという格好もアレだけど……!

 そう愚痴りながら、俺はケルベロスから痺れの異常を再び引き受け、地に移した。


「わ、分かりました。信じます。……では、このケルベロスに乗せて森の外までお送り致します。けれど一つお願いが」


「お願い?」


 リザは息を大きく吸い、何かを決心したように俺の手を握った。

 あっ、こいつ俺に惚れてんな……。

 みたいな事は勿論ない。

 ので、勘違いしないように、自分を戒める。

 男ならみんなこいつ惚れてんなー、みたいな事ごあるはずだ。

 俺は痛い目に遭わないようにそっと手を離す。

 いや、本気出せば手くらい握り返すぐらいできる。

 何だったら、主人公が出せるオーラとやらで、一撃で落としてみせよう。

 まぁ、その前に俺が落ちるだろうけど。


「私を外に連れてって下さい!」


「ダメよ」


「ええ、危険です」


「さっきまで無関心だったのに、えらく素早いな、お前ら」


 そんな事だろうとは思ったが、意外や意外カレンもエクシスもそれを否定した。

 いや、人は多い方が良くないかなとは思ったが、二人に理由を聞く事にした。


「良いですか、エルフの少女。まずこの世界様を殴って下さい。まず、それからです」


「「は?」」


 俺とリザの声が被る。

 いきなり殴れとか、そんな事出来る奴は、いったいどこの悪人なのか。

 リザは困惑した表情で俺とエクシスの顔を交互に見る。

 ほら見た事か。

 めっちゃドン引きしてるじゃないか。

 リザら引きすぎてスカートの裾を強く握りしめていた。

 ……当たり前だよなあ。


「分かりました!」


「待て、待て、待て! どういう結論出して、そうなったんだよ!」


「な! なかなかやるわね。私は即断したリザを歓迎するわ」


 カレンはリザの頭を撫でながら、そう喜ばし気にはしゃいだ。

 カレンは更に、毒も盛ってやると俺は決めた。

 主がぶん殴られるとかやっぱおかしくないか。


「せーいッ!!」


「ちょ、本気なのか……え、ちょ、ぶばッ!!」


 俺は倒れこみながらすぐさま痛みを地面に移す。

 割と容赦なくて、もう笑うしかない。

 その内、俺のイカれたメンバーを紹介出来るようになるかもしれない。

 掛け声は大変可愛らしく、動作もたどたどしかったのにインパクトの瞬間、拳をそのまま戻さずに殴り抜けてきた。

 こいつ、慣れてやがる……。


「合格ですね」


「ええ、完璧よ」


 エクシスもレイカも腹くだしてしまえ、クソったれ!

 リザは嬉しそうに、飛び跳ねる。

 何でそこまでして外に出たいのだろうか。

 殴られるのは良いとして、そちらが気になる。


「なぁ、何で一緒にここ出たいんだ?」


「一言で表すなら、復讐ですかね」


 えっ、さっきまでの軽いノリは?

 急激に重い話に、頭が追いつかない。


「エルフ族を滅ぼした奴が居ます。名は勇者ライオネル。元々この森のエルフ族は計三十人くらいしか居ませんでしたが、全てライオネルに殺されました。私はその際に、気まぐれで生かされただけです。雷の音と共に、村が破壊されていくのは何とも言えないもので、私は泣き叫びました……。ケルベロスもその時には小さく私は必死に隠しました。……そうして、それでも魔王様の為に、ここでずっと生きていくつもりでしたが、魔王様が外に出る今ならば、せめて今度はお側で役に立ちつつ自分の目的を果たしたいと思いました」


 そうか、勇者でも全てが正しい力の使い方を出来る訳ではないんだ。

 俺は鈍器で頭を殴られたように、ショックを受けた。

 どこかで、異世界なら、完全なる悪意は無いと。

 そんな都合の良い解釈をしようと思っていた。

 けれど、ここはやはり現実で。

 エクシスは一族から追い出され、エクシスは仲間から除外され、リザは村を壊滅させられた。


 魔王になったからなのか、それとも単に沸点に到達しただけなのか、俺は思わず握り拳をキツく結んだ。

 俺は、俺たちは、これからの事をもっとより真剣に考える必要がある。

 目的に対しての、手段や方法。

 何もかもが足りない。

 俺は否応なしで、リザを連れて行く事に決めた。

 ちらりとエクシスとカレンを見ると悲痛の表情を浮かべ、俺と目が合うと同時に頷いた。



「ようこそ、世界様のパーティに」


「歓迎してあげるわ、弓矢使いとしてね!」


「なら、リザ。ケルベロス共々宜しく頼むぞ」


「み、皆様。はい、こちらこそ宜しくお願い致します!」


 こうして俺たちのパーティには新しく、エルフの少女が一緒になった。

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